双極性障害(双極症)の心理社会的支援ってなに?

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薬物療法だけではない大事な役割「心理社会的支援」

今日はハックがとても大事にしている「心理社会的療法(心理社会的支援)」について書きたいと思います。ただ、耳慣れない方が多いのではないでしょうか。大体この話題の時はXのいいねも少ないのが常。関心は少ないけど、効果は大きい。だから知ろうとしているあなたこそ、この「心理社会的療法」の威力を知って、自らの治療に役立ててくださいね。

双極性障害(双極症)は、気分の極端な変動を特徴とする精神疾患です。この複雑な疾患の治療において、薬物療法は重要な役割を果たしますが、それだけでは十分ではありません。心理社会的療法は、患者が自身の感情や行動を理解し、管理するための不可欠なツールとなります。本記事では、心理社会的療法の重要性、主な形態、そしてその効果について詳しく解説します。

心理社会的療法とは

心理社会的療法は、双極性障害患者が症状と生涯にわたる影響を管理するのに役立つ非薬物的アプローチです。この治療法の主な目的は以下の通りです。

  1. 患者自身が病気に対する深い理解を持つこと
  2. 症状の早期発見と対処方法の習得
  3. ストレス管理と生活リズムの安定化
  4. 対人関係スキルの向上
  5. 再発予防と長期的な生活の質の向上

これらの目標を達成することで、患者はより健康的で充実した生活を送ることができるようになります。

効果的な心理社会的療法の種類

双極性障害の治療に特に効果的な心理社会的療法には、以下のものがあります。

  1. 心理教育
  2. 認知行動療法(CBT)
  3. 家族焦点化療法
  4. 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)

これらの治療法は、薬物療法と併用することで、病気の管理と再発の予防に大きく貢献します。各療法の特徴と効果を詳しく見ていきましょう。

1. 心理教育

心理教育は、患者とその家族に双極性障害に関する正確な情報を提供し、病気への理解を深める重要な過程です。具体的には以下の内容を学びます。

  • 双極性障害の症状と経過
  • 治療法の種類と重要性
  • 再発のサインと早期介入の方法
  • ストレス管理技術
  • 生活リズムの重要性
  • 家族の役割とサポート方法

心理教育を通じて、患者と家族は病気に対する不安や誤解を減らし、より効果的に症状に対処できるようになります。

2. 認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、患者の思考パターンや行動に大きな変化をもたらす効果的な治療法です。CBTを通じて、患者は以下のスキルを身につけます。

  • 否定的な思考パターンの識別と修正
  • 現実的で建設的な思考方法の習得
  • 問題解決スキルの向上
  • 感情調整技術の習得
  • ストレス対処法の改善

CBTは特に抑うつ症状の軽減と再発予防に効果があることが示されています。

3. 家族焦点化療法

家族焦点化療法は、患者の家族全体を治療に巻き込むアプローチ です。主な目的は以下の通りです。

  • 家族内のコミュニケーションの改善
  • 問題解決スキルの向上
  • 家族のストレス軽減
  • 再発の早期発見と対応
  • 家族全体の適応力の強化

この療法は、特に若年患者や家族との関係が密接な患者に効果的です。

ただし、残念ながら日本ではあまりこの療法を受けれる場所がないようです。早期に体制が整うのを望むばかりです。

4. 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)

IPSRTは、双極性障害患者の対人関係と日常生活のリズムに焦点を当てた治療法です。主な要素は以下の通りです。

  • 安定した日常リズムの確立
  • 睡眠-覚醒サイクルの正常化
  • 対人関係スキルの向上
  • ストレス管理技術の習得
  • 社会的役割の明確化と調整

IPSRTは、特に気分の安定化と再発予防に効果があることが示されています。

しかし、このIPSRTも受けれる個所は複数箇所です。ネットで探してみましょう。

日本うつ病学会のガイドライン

2023年に更新された日本うつ病学会のガイドラインでは、心理社会的療法の重要性がより強調されています。このガイドラインによると

  • 薬物療法と心理社会的療法の併用で、症状や予後の改善が期待されます。
  • 治療の導入期には心理教育が強く推奨されます。
  • 急性期には、専門的な精神療法が有効です。
  • 維持期では、心理教育と専門的な精神療法が再発予防に重要な役割を果たします。

このガイドラインは、双極性障害の包括的な治療アプローチの重要性を強調しています。

心理社会的療法の実施タイミングと頻度

心理社会的療法の実施タイミングと頻度は、患者の状態や治療段階によって異なります。

  1. 導入期:週1-2回の頻度で心理教育を中心に実施
  2. 急性期:週1-2回の頻度で専門的な精神療法を実施
  3. 維持期:月1-2回の頻度で継続的なフォローアップを実施

治療の進行に応じて、頻度を調整していくことが重要です。

国際的な研究結果

国際的な研究によると、心理教育、家族焦点療法、対人関係・社会リズム療法、認知行動療法などが双極性障害の補助治療として高い効果を示しています。これらの療法は、以下の点で重要な貢献をしています。

  • 再発率の低下
  • 入院回数の減少
  • 薬物療法へのアドヒアランス(治療の遵守性)の向上
  • 全般的な機能と生活の質の改善
  • 家族関係の改善

特に、薬物療法と心理社会的療法を組み合わせたアプローチが、単独の治療法よりも優れた結果を示しています。

心理社会的療法の課題と今後の展望

心理社会的療法は効果的ですが、いくつかの課題も存在します:

  1. アクセスの問題:専門家の不足や地理的制約により、全ての患者が適切な治療を受けられるわけではありません。
  2. 個別化の必要性:患者それぞれのニーズに合わせた治療プログラムの開発が求められています。
  3. 長期的効果の研究:より長期的なフォローアップ研究が必要です。
  4. デジタル技術の活用:オンライン療法やアプリケーションの開発が進んでいます。

これらの課題に取り組むことで、心理社会的療法の効果とアクセシビリティがさらに向上することが期待されています。

まとめ

心理社会的療法は、双極性障害(双極症)の治療において不可欠な要素です。薬物療法だけでなく、自己理解と生活習慣の改善が重要です。心理教育、認知行動療法、家族焦点化療法、対人関係・社会リズム療法などの多様なアプローチを通じて、患者はより積極的に病気に取り組み、豊かな日常生活を送ることができるようになります。

最新の研究とガイドラインは、これらの療法の有効性を裏付けており、双極性障害の包括的な治療アプローチの一部として心理社会的療法を積極的に取り入れることが推奨されています。患者一人ひとりのニーズに合わせた個別化された治療プログラムを提供することで、より効果的な症状管理と生活の質の向上が期待できます。

なお、NPO法人ネット心理教育ピアサポートは、まさにこの中で最大の効果がうたわれている「心理教育」をオンラインで広めている団体です。ゼミやワークなどを受けることで体系的に理解する事が出来るようになります。

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参考URL

  1. https://secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2023.pdf
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32047369/
  3. https://ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6999214/
  4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17029494/

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この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

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