これは窓師の独り言です。
WHOは健康について次のように定義しています。
健康とは、単に病気でないということではなく、精神的にも社会的にも完全に良好な状態であることを言う。
確か中学の保健体育の授業で習ったように記憶していますが、この言葉を再考するに至った過程を、少し長いですがお話します。
9年前
「Patients’ adherence to smartphone apps in the management of bipolar disorder: a systematic 双極症を患い、自宅療養する傍らTwitterをして想像以上の当事者の方々と出会うことが出来ました。そして、今まで医療機関側の人間としてしか疾患を見ていなかった私はあることに気が付きました。それは、専門家と当事者の間にある病気や薬に関する知識のギャップがとても大きいということ、そして、当事者は情報を渇望していること。
私はTwitterで当事者の方々と交流する中で、薬剤師である自分にできることとして「病気や薬について正しい知識を提供すること」があるのではないかと思い立ちツイキャスでの情報発信を始めました。
一方、私自身の長い療養生活、医療現場での当事者の方の転帰を追ううちに
、次第に精神疾患の治療は薬を飲むだけでは不十分なのではないかという疑問を抱くようになりました。
例えば、一般的には薬をきちんと飲んで十分に休息すれば治ると言われているうつ病でも、数年経つと再発してしまう方が多いのです。
7年前
さて、精神疾患の治療においては薬剤療法とともに心理療法も用いられています。しかし、私自身が患者として受けていた治療のどこが心理療法なのか今ひとつピンと来ませんでした。心理療法(カウンセリング)ってお悩み相談なのかな…という漠然としたイメージに留まっていたのです。今から振り返ると実に浅い偏見だったと思います。
そこに気づかせてくれたのはTwitterで出会ったとある心理職の方(現在は公認心理師)でした。「精神疾患について薬と心の両面から語ったら面白いのではないか?」という彼女からの提案で、ネット上で対談をしたのです。結果は衝撃的なものでした。私は彼女の言葉のほとんどを理解できなかったのです。
この対談を契機に私は臨床心理学について猛然と学び始めました。いくつかの教科書、専門書を購入し、放送大学の心理学コースを視聴する…
そうして、やがて私は第二の衝撃を受けることになります。
8年前
放送大学心理学コースの認知行動療法の講座の後半に「ACT」というタイトルがありました。(ACTとは何かは、また別の機会に)そこで、あるうつ病患者の方がインタビューを受けて、こう言ったのです。
うつの症状が治ることはないです。
でも、うつに耐えられるようになったというか、またもし自分がうつになったとしても大丈夫じゃないかと思うんです。
「症状がなくならない」って治っていないってことじゃないの?
では、どういう状態が「治るということ」なのか?私はこの答えを今も探し続けています。
健康の定義
最初に書いたWHOの健康の定義に戻ります。
精神疾患は、脳という肉体に対しては薬を用いて、心はその在り方を変えることによって改善できるはず。これがいままでお読みいただいた流れです。
さて、WHOはもう一つ健康の条件に上げています。それは、社会という観点です。
症状は薬で良くなった。心もつらい状態ではなくなった。さて、あと何が?
おそらく、…それは社会生活への復帰なのでしょう。どうやって社会とのつながりを取り戻したり、新たな形で繋がるのか?これを果たした時が失われた健康を取り戻した時であり、新たな一歩を踏み出す時だと思うのです。
この話を熱く語る私に対して、先の公認心理師はさらりと言いました。
それって、生物心理社会モデルじゃない?
おい、それを先に言ってくれ(笑)
ちなみにここで登場する公認心理師とは、布団ちゃん なのでした。
スマートフォンアプリを用いた双極性障害の管理は、まだ発展途上の分野です。現時点では多くの課題が存在するものの、テクノロジーの進歩と心理社会的支援の融合により、将来的には患者のQOL(生活の質)向上に大きく貢献する可能性を秘めています。