心に響く調べ:双極性障害(双極症)と音楽療法の可能性

目次

音楽の力で心のバランスを

多くの人々が音楽に癒されています。特に、双極性障害(双極症)の我々にとって、気分の波は大きな課題となることがあります。日々の症状管理に奮闘される中で、面白いものを見つけました。「音楽療法」です。今回は、心理療法の一種として、音楽が持つ力を活用した心理社会的支援の可能性について、最新の研究結果を交えてご紹介します。

音楽療法とは?

音楽療法は、音楽を通じて心身の健康を促進する心理社会的療法の一つです。認知行動療法などと同様、心理社会的支援の手段として注目されています。特に、双極性障害(双極症)の症状管理において、興味深い研究結果が報告されています。

音楽療法は単に音楽を聴くだけではありません。歌唱、楽器演奏、作曲など、音楽に関わる様々な活動を通じて、感情表現や自己認識の向上、ストレス軽減などを目指します。これらの活動は、双極性障害の方々の気分安定や社会的交流の促進にも寄与する可能性があります。

研究から見る音楽療法の効果

  1. 1987年の先駆的研究
    • 研究名:「音楽の鎮静と抑制機能」
    • 内容:この研究は、双極性障害の躁状態やうつ状態の緩和に音楽が役立つ可能性を示唆しました。特に興味深いのは「同質の原理」という概念です。これは、患者の現在の気分に合わせた音楽を選ぶことで、感情を安定させるという考え方です。例えば、躁状態の患者にはアップテンポの音楽を、うつ状態の患者には穏やかな音楽を提供するというアプローチです。
    • 注意点:この研究は古いため、現代の科学的基準では再評価が必要です。しかし、音楽療法の基本的な考え方を示した先駆的な研究ではあります。
  2. 2023年のSYNCHRONY研究
    • 対象:長期うつ病の成人患者
    • 内容:この最新の研究では、作詞作曲を伴う集団音楽療法の効果を検証しました。特筆すべきは、専門の音楽療法士による42回のセッションを通じて、参加者のうつ病スコアが顕著に改善したことです。
    • 結果:うつ病スコアの改善だけでなく、参加者の生活の質、日常機能、全体的な幸福感の向上が観察されました。この結果は、音楽を通じた創造的活動が、うつ症状の軽減に寄与する可能性を示唆しています。
    • 課題:研究では参加者の継続率の低さが課題として挙げられており、音楽療法の実施方法についてさらなる検討が必要とされています。
  3. 2021年のドイツの研究
    • テーマ:双極性障害の早期発見と予防における音楽療法の可能性
    • 内容:この研究は、音楽療法が双極性障害のリスクがある人々の気分や自尊心を改善する可能性を示唆しています。特に注目すべきは、音楽療法を双極性障害の早期発見と予防のツールとして位置づけている点です。
    • 意義:この研究は、音楽療法が単なる症状管理だけでなく、予防医学的アプローチとしても有効である可能性を示唆しており、今後の双極性障害治療の新たな展開を予感させます。

音楽療法の実践

音楽療法は、専門家の指導のもとで行われることが多いです。イギリスやドイツでは「音楽療法士」という専門職が存在し、医療チームの一員として治療に当たっています。音楽療法のセッションでは、患者さんの好みや状態に合わせて、様々な音楽活動が提案されます。

また、歌詞を書いたり、メロディを作ったりする創作活動も重要な要素です。これらの活動は、自己表現のツールとなり、内面の感情を言語化する手助けとなります。

日常生活での音楽の活用

専門的な音楽療法を受けられない場合でも、日常生活の中で音楽を活用することは可能です。例えば、気分に合わせたプレイリストを作成し、定期的に聴くことで、感情の調整を図ることができます。また、家族や友人と一緒に歌を歌ったり、簡単な楽器を演奏したりすることも、ストレス解消や気分転換に効果的です。

重要なのは、音楽を楽しむこと自体が目的であり、上手下手を気にしすぎないことです。音楽を通じて自分の感情と向き合い、表現する機会を持つことが、心のバランスを保つ上で大切です。

まとめ

音楽療法は、双極性障害(双極症)の症状管理において補助的な役割を果たす可能性があります。しかし、まだ研究段階であり、従来の治療法を置き換えるものではありません。医療専門家の指導のもと、既存の治療法と併用することで、より効果的な結果が期待できるでしょう。

日々音楽を楽しみながら、心のバランスを整えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。お気に入りの曲を聴いたり、新しい音楽にチャレンジしたりすることで、自分自身の感情と向き合い、より豊かな日々を過ごすヒントが見つかるかもしれません。

音楽の持つ癒しの力を存分に活用してください。

参考URL

  1. 音楽の鎮静と抑制機能(1987年)
  2. SYNCHRONY研究(2023年)
  3. 双極性障害の早期発見と予防における音楽療法(2021年)

コラムの更新をメールで通知

メールアドレスを登録すれば、コラム更新をメールで受信できます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

目次