双極症(双極性障害)のリハビリテーション:双極症は「脳の病気」躁・うつ状態における脳の働きについて解説
抑うつ状態が改善してくると、「外に出たいかも」と意欲が沸いてくるでしょう。
それは社会参加とも言います。詳しくは以下の記事をご覧ください。
双極症(双極性障害)のリハビリ:自身で行える社会参加へ向けた軽めのリハビリ – ネット心理教育ピアサポート
自身で行う、外でのリハビリを段階づけてご紹介していきますが、
双極症は「脳の病気」ということをご存じでしょうか。
「双極症における脳と感情・身体症状のつながり」を知っておくことは、自身の病識を高めることにもつながります。
できるだけ簡単に説明していきます。
双極症と脳の関係性
外でのリハビリを行うにあたって、脳機能を説明しようと思います。
脳は大まかに5つの部位に分けられます。
- 前頭葉:人間の運動、言語、感情をつかさどる器官
- 頭頂葉:体性感覚(視覚,聴覚,味覚,嗅覚, 触覚)や視覚・聴覚など
- 側頭葉:視覚や聴覚などの認知機能や記憶の中枢。
- 後頭葉:視覚認知の中枢。
- 小脳:運動のコントロール。皮膚や筋肉からの情報を受け取り、歩く・走る・立つ・座るなどの運動がスムーズに行われるように指令を出している。
双極症と前頭葉は密接に関連している
この20年間の研究で、双極性障害が脳の病気であることを示す多くの証拠が得られました。
たとえば、脳の中でも感情のコントロールに関わる部分(前部帯状回と呼ばれています)が小さくなっていると報告されています。ただしこれは、リチウムを服用している人では、正常化します。
つまり、前頭葉機能に異常を生じること(機能低下)で、躁・うつ症状がみられます。
ですから、躁状態やうつ症状を引き起こすのは脳が関連しており、自身のせいではありません。
前頭葉機能低下を疑う症状
意識・見当識障害、易疲労性
・頭がぼんやりして考えることがうまくできない。時間や場所の感覚があいまいになる。
・些細なことでも疲れやすい。
注意障害
・集中力を持続させながら、1つの物事を長く続けることができない。
・身の回りのいろいろな刺激に振り回されずに1つの刺激を選択して行動することができない。
・一度に2つ以上の事柄に注意を向けて、行動を行うことができない。
記憶障害
・新しい、昔のことが覚えられない。
・物をよくなくす。
・どこにしまったかを忘れる。
・同じことばかり話し、間違いを繰り返す。
遂行機能障害
遂行機能とは目標を決め、計画を立て、手順を考え、それを実施し、最後にその結果を確認する事です。
・要点の定まらない話をしてしまう。
・計画が立てられない。
・優先順位を決められない。
感情と社会的行動の障害
・何かをしようとする気力が起きない。
・物事に関心を持てない。
・抑うつ、イライラなどの気分のムラが激しくなった。
・非常識な行動をとってしまう。
・欲求を我慢できない。
・自分の問題を認識できない。
双極性障害の認知機能障害の特徴は?
書籍「みんなの双極症」でおなじみ、南中さくら先生によると、
双極性障害の患者さんを、認知機能障害の強い方から3グループに分けると以下のような割合になります。
・12〜40%の患者さん・・・いくつかの認知機能にわたる全体的な認知機能障害がある
・29〜40%の患者さん・・・注意と精神運動速度がとくに障害されている
(※精神運動速度の障害:明らかな運動障害が無いのに、課題で反応に時間がかかる)
・32〜48%の患者さん・・・正常と比べて比較的認知機能が維持されている
まとめ
双極症は「心の病気」ではなく、「脳の病気」です。
医師や理解者とチームを組んで治療することで、長く症状が安定して暮らすことができるでしょう。
そのためには、「病識を持つこと」「症状は自身のせいではないこと」「なぜ症状が出るのか」
を知ることが大切です。
次回は今回の記事を踏まえ、自身で行える外でのリハビリをお伝えします。
お楽しみに。
参考サイト
・CID…….N
・脳科学から見た双極性障害 | すまいるナビゲーター | 大塚製薬
・双極性障害による認知機能障害とは?幼少期からの記憶が乏しい原因なの? | 兵庫県三田市の心療内科・精神科ならさくらこころのクリニックへ
・前頭葉の機能低下を疑う症状 | ブレインケアクリニック
・臨床精神薬理 vol.22,No.1 Jan. 2019