双極症のリハビリテーション:外出(社会参加)へ向けた脳リハビリテーション
双極性Ⅱ型当事者、作業療法士のおとです。
前回は双極症(双極性障害)のリハビリテーション:双極症は「脳の病気」躁・うつ状態における脳の働きについて解説 – ネット心理教育ピアサポート
というお話でした。
双極症での症状改善や再発・再燃予防のためには、適切な薬物療法だけでなく、病状悪化のリスクを高める行動を減らし、再発予防的な健康的行動を増やすことが重要です。
双極症の方は認知機能低下が起こりやすく、実生活に影響を及ぼす可能性が高いです。
主にうつ状態からの回復時、外出へ向けた脳のリハビリテーションについてお伝えします。
うつ状態の大まかなリハビリテーションの流れ
うつ病と書いてありますが、双極症のうつ状態と大きな違いはありません。
急性期(寝たきり~意欲が出てくる頃)のリハビリテーション
急性期は脳や身体が休息を欲している時期です。
興味や関心,集中力の低下がみられるので、十分な休息が必要です。
意欲が出てきたら、簡単な身体運動(ストレッチなど)を取り入れましょう。
・運動はうつ症状に効果があるとする報告
・短期間(数週間)のウォーキングやヨガがうつ症状を改善させるという報告
・運動はうつ症状に対する効果のみならず,日常生活動作を向上させる効果や,認知機能改善への効果が検討されている。
まずは5~10分程度、寝た状態から立った状態までできるようにしてみましょう。
また、馴染みの作業(複雑な家事や趣味)ではなく、初めて行うものが望ましいです。
馴染みの作業は,病前のように思い通りに作業が進まないことによる焦りや混乱が生じやすいです。
初めて行う完結型の作業(塗り絵やスマホでの漫画など)がいいでしょう。
回復期前期(生活リズムが整う頃)のリハビリテーション
睡眠の質が良くなって生活リズムが整い,「何かしたい」と意欲が出てくる時期です。
病前との比較や今までを取り戻そうと、焦りが生じる時期でもあります。
焦りは禁物であり、むしろ「〜してみたい」という感覚を大切にしましょう。患者の活動量の調整を図る.
「外に出てみたい,散歩でもしてみようか」という自然な回復を感じ、行った後の心地よさと疲労感を確かめましょう。
この時期は短時間、作業に集中する時間を取り入れましょう。
作業に集中する経験がポジティブな気分を促進させ,同時に不快な思考を軽減させる効果があります。
作業をしていると、気付けば時間が経っていて、心地よさを感じた経験がイメージしやすいでしょうか。
飲み物を飲みながら何かする・・・。贅沢にゆっくり時間を過ごしてください。
「1人で静かな環境」が作業をする上でおすすめ、最初は短時間、最終的には1~2時間が目標です。
自分をたくさん褒めてあげてくださいね。
作業を通して、活動量や疲労感をチェックする
ここで以前もご紹介した、睡眠覚醒リズム表がおすすめです。
詳しい記入方法は、【ワーク】当事者にできること 11月10日(日)開催 – ネット心理教育ピアサポート
でお伝えしています。基本的に毎月開催です。
ワークではネット心理教育オリジナルの睡眠覚醒リズム表を紹介しています。
参加してくださった方には、上記の睡眠覚醒リズム表をダウンロードしていただけます。
既存のものよりも、個人的にはネット心理教育版が客観視しやすくておすすめです。
活動と休息のバランスを考慮した 1 日または 1 週間の過ごし方と,自身の行動特徴を考慮した自己管理の方法を確認していくことが大切です。
どれぐらい動くと疲れるか、眠れないのはどうしてか?などを客観視することが大切です。
今後の寛解状態を長いものにするためにも非常に大切なことです。
まとめ
上記を簡単にまとめてみます。
・急性期(休息と軽い運動)
十分に休み、意欲が出てきたら短時間の軽い運動(ストレッチやウォーキング)を始める。
焦らず、初めての簡単な作業(塗り絵や漫画)に挑戦。
・回復期前期(生活リズムと集中作業)
睡眠が安定し「何かしたい」気持ちが出たら、無理せず活動量を増やす。
短時間の集中作業でポジティブな気分を感じるようにする。
・自己管理
活動と休息のバランスをとり、疲れや眠れない原因を振り返りながら、安定した生活リズムを身につける。
次回は回復期後期からの脳リハビリテーションをお伝えします。