双極症と認知行動療法:認知行動療法の向き不向き

目次

はじめに:認知行動療法の基本と双極症との関係

認知行動療法(CBT)は、ネガティブな思考パターンを認識し変化させることで、ストレスや不安を軽減し、生活の質を向上させる心理療法です。特に双極症をはじめとする心的健康問題に対して有効とされていますが、すべての人に同じ効果があるわけではありません。

認知行動療法を含む精神療法・心理療法には様々な意見が付いて回ります。「効く」「効かない」という相反する声や、「効かないと思うので試したことがない」「環境がないので試したことがない」などの意見をよく聞きます。一方で、認知行動療法のおかげで考え方が変わり、治療効果がどんどん増したという声も多く聞かれます。

医師によっても考え方は異なるようです。ここでは、認知行動療法とは何か、そして効果が期待できる人とそうでない人の特徴について掘り下げていきます。

認知行動療法とは、その効果

認知行動療法(CBT)は、思考、感情、行動の相互関係に焦点を当て、ネガティブな思考パターンを特定し、挑戦することで、ストレスや不安、うつ病などの心理的問題を軽減することを目指す心理療法です。

CBTの主な効果には、不適切な思考の特定と修正、ストレス対処能力の向上、自己効力感の強化、リラクゼーション技術の習得などがあります。

双極症における認知行動療法とは

双極症治療におけるCBTは、患者が自身の気分変動をより良く理解し、不適切な思考や行動パターンに対処するスキルを身につけることで、症状の管理を支援し、再発を予防することを目的としています。CBTは、双極症の軽症から中等度のうつエピソード、軽症の躁症状、安定期が主症状の時に特に効果的です。

認知行動療法が向いていない人

どのような人が認知行動療法に向いていないのでしょうか。

症状が強い人

双極症の症状が非常に強い場合は、認知行動療法の効果が得られにくい可能性があります。特に、躁状態やうつ状態が重症の場合、思考が歪んだり、集中力が低下したりするため、治療に有効な方法で課題に取り組むことが困難になります。

治療への意欲が低い人

認知行動療法は、患者自身が積極的に取り組むことで効果を発揮する治療法です。そのため、治療への意欲が低い人や、変化を恐れる人は、効果を感じにくい可能性があります。

認知機能に問題がある人

認知機能障害や記憶力の問題がある人は、認知行動療法で学ぶ内容を理解したり、課題を遂行したりすることが困難になる場合があります。

複雑なトラウマを抱えている人

過去のトラウマ体験が双極症の症状に影響を与えている場合、認知行動療法だけでは十分な効果が得られない可能性があります。トラウマに特化した治療法と組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。

薬物療法がうまくいっていない人

双極症の治療には、認知行動療法と薬物療法を組み合わせることが一般的です。薬物療法がうまくいっていない場合、認知行動療法の効果も限定的になる可能性があります。

社会的なサポートが少ない人

双極症の治療には、家族や友人などの社会的なサポートが重要です。周囲の理解や協力がない場合、治療を継続することが難しくなることがあります。

治療者の経験不足

認知行動療法は、双極症の専門知識を持つ経験豊富な治療者によって行われることが重要です。経験不足の治療者による治療は、効果が得られなかったり、症状を悪化させたりする可能性があります。

これらのように患者自身の認知行動療法への向き合い方や症状の状況、環境、そして治療者のレベルが大きく影響してくることが分かりました。

認知行動療法が向いている人

逆にどのような人の場合認知行動療法が効果を発揮するのでしょうか。先ほどの裏返しとなりますが、大事なポイントです。

症状が軽度から中等度の人

双極症の症状が軽度から中等度であれば、認知行動療法によって症状を改善し、生活の質を向上させることが期待できます。

治療への意欲が高い人

認知行動療法は、患者自身が積極的に取り組むことで効果を発揮する治療法です。そのため、治療への意欲が高く、変化を受け入れることができる人は、効果を感じやすいと言えます。

認知機能に問題がない人

認知行動療法は、思考や行動パターンを変える治療法です。そのため、認知機能に問題がなく、学ぶ意欲がある人は、治療の内容を理解し、課題を遂行することができます。

薬物療法と併用している人

認知行動療法と薬物療法を組み合わせることで、双極症の症状をより効果的に改善することができます。薬物療法によって症状が安定することで、認知行動療法の効果も高まります。

社会的なサポートがある人

家族や友人などの社会的なサポートがある人は、治療を継続しやすく、症状の改善にもつながります。

まとめ:個別化された治療アプローチの重要性

CBTは、病識を高め、気分の変動を認識し、不適応な思考パターンを修正することで、症状の再発防止や対処スキルの獲得を目指します。そのため、軽症から中症の気分エピソードがある人や、安定期にあって認知的側面に焦点を当てられる人に適しています。

一方、重症の時は、薬物療法が中心となる必要があります。また、認知機能の低下が著しい場合も、CBTを実践するのが難しくなります。

このように、CBTは双極症の症状や重症度、認知機能、動機づけなどに応じて、適切に組み合わせて実施する必要があり、一人ひとりに合わせた包括的なアプローチが重要とされています。

認知行動療法を含む心理療法は患者側のやる気の問題が大きく、精神鍛錬の意味を持つため、より良くなりたいという気持ちがある人が積極的に受けていく類のものだと考えられるでしょう。

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この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

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