「恐るべき睡眠薬」って本当?!

はじめに
こんにちは。NPO法人ネット心理教育ピアサポートで薬剤師をしています、まどっち(窓師)です。
先日、DIAMOND onlineに「脳に“ゴミ”を溜めて認知症を招く「恐るべき睡眠薬」とは?医療・製薬業界が激震」というセンセーショナルなタイトルの記事が掲載されました。
記事によると「恐るべき睡眠薬」とは、ゾルピデム(商品名:マイスリー)のようです。
本件、Xでも一部話題になっており、何件か問い合わせがありましたので、解説します。
元論文は、世界で最も権威のある科学雑誌のひとつ Cell 2月6日版に掲載されました。
「ノルエピネフリンを介した穏やかな欠陥運動が睡眠中のグリンパティッククリアランスを促進する」

研究の経緯
脳は睡眠時に脳の老廃物グリンパティック除去など回復プロセスが活性化されます。脳の老廃物は認知症の原因になる事が今までの研究で示唆されています。
しかし、脳の老廃物の除去を促進する仕組みは明らかになっていませんでした。
今回、著者らはネズミの実験で脳内のノルエピネフリンによって駆動される血管運動が脳に脳脊髄液を送り込むポンプとして機能することを実証しました。
さらに、著者らは睡眠補助薬ゾルピデムはノルエピネフリンの振動とグリンパティックの流れを抑制することを明らかにしました。
考察
本研究は、ネズミを用いた研究であり、人に適用できるかは今後の課題です。
本研究では、ゾルピデムを投与されたネズミにおいて脳の老廃物グリンパティックの流れが抑制されることが示されました。その結果脳内の老廃物の量が実際に変化するかどうかはまだ確認されていません。
さらにゾルピデムを投与した場合、実際に認知症のリスクが上昇するのか、などを検討することが必要になるでしょう。
またゾルピデムのみを悪者扱いするのではなく、他の睡眠導入剤においても同様の傾向が認められるかどうかの検証も必要になると考えられます。
結論
現段階では軽々に結論を出すのではなく研究結果の蓄積を待つべきでしょう。
参考文献
・Cell: Norepinephrine-mediated slow vasomotion drives glymphatic clearance during sleep
https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(24)01343-6
・脳に“ゴミ”を溜めて認知症を招く「恐るべき睡眠薬」とは?医療・製薬業界が激震 | ビジネスを強くする教養 | ダイヤモンド・オンライン