双極症と職場での対人関係:理解と対処法

目次

はじめに

職場における対人関係は、多くの人にとってストレス要因となりますが、双極症(双極性障害)を抱える方々にとっては特に大きな課題となることがあります。退職理由の7割が人間関係に起因するというデータもあり、双極症の方々への影響は非常に大きいといえるでしょう。この記事では、双極症の特性が職場での対人関係にどのような影響を与えるのか、そしてどのように対処していくべきかについて詳しく解説します。

一般的な職場の対人関係ストレス要因

まず、一般的な職場における対人関係のストレス要因について理解しましょう:

意見の相違と価値観の衝突

職場では様々なバックグラウンドを持つ人々が集まるため、意見や価値観の違いが対立を生むことがあります。例えば、プロジェクトの進め方やゴールの設定において意見が分かれることは珍しくありません。

社会的圧力

上司や同僚からの期待や評価が大きなプレッシャーとなることがあります。「今月の目標達成率を上げるように」といった圧力が日常的にかかることも少なくありません。

コミュニケーションの不足

情報共有が適切に行われないことで誤解が生じ、チーム内の摩擦につながるケースがあります。特にリモートワークが増加した現在、コミュニケーション不足はより深刻な問題となっています。

孤立感

職場で孤立してしまうと、チームの一員としての帰属感が失われ、ストレスが増加します。特に新入社員や部署異動後は孤立感を感じやすい傾向があります。

役割のストレス

期待される役割と自己認識のギャップがストレスになることがあります。例えば、リーダーシップを求められているのに、自分はフォロワーとしての役割が得意だと感じる場合などです。

双極症特有の対人関係ストレス要因

双極症(双極性障害)の方々には、症状の特性から生じる固有のストレス要因があります:

感情の波動

双極症の特徴である気分の変動により、職場での人間関係が不安定になりがちです。例えば、躁状態では過度に社交的になり、うつ状態では引きこもりがちになるなど、対人関係のスタイルに一貫性を欠くことがあります。

社会的引きこもり

うつ状態にあるとき、会議への参加や同僚とのランチなどの社会的活動が減少し、職場での孤立感が増すことがあります。「最近、○○さんはチームのイベントに参加しなくなった」と周囲に誤解されることもあります。

誤解と対立

躁状態では過度に自信に満ちた発言や行動が、「傲慢だ」と誤解されることがあります。例えば、通常なら抑制する意見も遠慮なく発言してしまい、対立を生んでしまうケースがあります。反対に、うつ状態では消極的な態度が「やる気がない」と誤解されることもあります。

信頼関係の問題

双極症による感情や行動の変化が、職場での信頼関係構築を難しくすることがあります。例えば、プロジェクトへの取り組み方が気分によって大きく変わると、「一貫性がない」と思われてしまうことがあります。

感情調整の困難

職場でのストレスや衝突に対して、感情的な反応をコントロールすることが難しい場合があります。小さな批判に過剰に反応してしまったり、逆に重要な問題に無関心に見えたりすることがあります。

心理療法を活用した解決アプローチ

これらの課題に対して、心理療法を活用した解決方法を考えてみましょう。特に効果的とされるのが「認知行動療法(CBT)」と「対人関係・社会リズム療法(IPSRT)」です。

認知行動療法(CBT)によるアプローチ

認知行動療法は、思考、感情、行動のパターンを理解し変えることを目的とした心理療法です。

思考の認識と変更

「上司が私を見ただけで、何か不満があるのだろう」といった否定的な思い込みを、「上司は単に考え事をしていただけかもしれない」などのより現実的な解釈に置き換える練習を行います。

行動の修正

会議で発言を控えるなどの回避行動を認識し、少しずつ積極的な参加に変えていきます。例えば、まずは簡単な質問をするところから始め、徐々に意見を述べるようにするなどのステップを踏みます。

感情の管理

職場での批判を受けたときに、感情的にならずに冷静に対応する方法を学びます。例えば、深呼吸や一時的な場所の移動など、感情を落ち着かせるための具体的テクニックを身につけます。

対人関係スキルの向上

「私は~と感じています」といったアイメッセージを使ったコミュニケーション方法や、建設的なフィードバックの伝え方などを学びます。これにより、衝突を減らし、より健全な職場関係を構築できるようになります。

対人関係・社会リズム療法(IPSRT)によるアプローチ

対人関係・社会リズム療法は、双極症の方々のために特別に開発された療法で、生活リズムと人間関係の安定化に焦点を当てています。

日常リズムの安定化

規則正しい睡眠、食事、運動などの生活リズムを整えることで、感情の安定を目指します。例えば、平日も休日も同じ時間に起床・就寝するなど、一貫した日課を維持します。

対人関係の評価

現在の職場での対人関係を客観的に評価し、改善すべき点を特定します。「この同僚とはどのような関係で、どのような課題があるか」など、具体的に分析します。

社会的支援の強化

信頼できる同僚や上司、場合によっては産業医や人事担当者などのサポートネットワークを構築します。困ったときに相談できる人を事前に確保しておくことで、孤立を防ぎます。

コミュニケーションの改善

明確で誤解の少ないコミュニケーション方法を学びます。例えば、うつ状態のときには「今日は体調が優れないので、短めのミーティングにしていただけますか」と事前に伝えるなど、自身の状態を適切に共有する方法を身につけます。

感情の調整

職場での対人関係における感情の起伏をコントロールする方法を学びます。例えば、躁状態で過度に興奮しそうなときには、一度席を外して落ち着くなどの対処法を身につけます。

職場での実践的な対処法

オープンにするか否か:自己開示の判断

双極症(双極性障害)について職場でどこまで開示するかは、個人の状況や職場環境によって異なります。全く開示しない選択もあれば、信頼できる上司や人事担当者にのみ伝える、あるいは必要に応じて同僚にも伝えるなど、様々なアプローチがあります。

例:「私は双極症という気分の波がある状態で、時々体調管理に気を使う必要があります。具体的なサポートとしては、○○していただけると助かります」というように、具体的なニーズと共に伝えることが効果的です。

職場での境界線の設定

自分の限界を認識し、適切な境界線を設けることも重要です。例えば、残業が続くと症状が悪化する場合は、その旨を伝え、可能な範囲で調整してもらうなどの対応が考えられます。

サポートツールの活用

スケジュール管理アプリや気分追跡アプリなどのツールを活用し、自己管理をサポートすることも有効です。タスク管理ツールを使って優先順位を明確にし、気分の波に左右されずに仕事を進められるようにするなどの工夫ができます。

日々の自己ケア

十分な睡眠、バランスの取れた食事、定期的な運動など、基本的な自己ケアは双極症の症状管理に不可欠です。特に職場では、短い休憩を定期的に取る、ストレッチをする、水分をこまめに取るなど、簡単にできる自己ケアを取り入れることが大切です。

まとめ:共存と成長のために

双極症(双極性障害)を持ちながら職場の人間関係を健全に維持することは、決して簡単ではありません。私自身も発病以後、人間関係に苦手意識を持つことがありますが、人は一人では生きていけないことも事実です。

認知行動療法や対人関係・社会リズム療法などの心理療法を活用しながら、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。また、困ったときは専門家に相談することも重要なステップです。

私も人、相手も人。誰もが人間関係で何らかの悩みを抱えているものです。オープンマインドで自分自身と向き合い、少しずつでも改善していくことが、職場での充実した人間関係につながるでしょう。

双極症の特性を理解し、適切な対処法を身につけることで、職場での人間関係をより良いものにしていきましょう。それは困難な道のりかもしれませんが、必ず実りある取り組みとなるはずです。

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この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

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