双極症(双極性障害)の薬剤の半減期と効果が持続する時間って違うの⁉

はい! 誤解しやすいところですが、違うんです!
半減期は薬の効き目が持続する時間ではありません。

今回のコラムでは、「双極症(双極性障害)」の薬の効き目が続く時間について、考えてみましょう。
よく半減期はXX時間だからXX時間効くと考えがちなんですが、実はこれは違います。
イメージがつかみにくいかもしれないので、先に具体例を見てみましょう。
薬の例としてハルシオン(トリアゾラム)を取り上げました。

少し難しい用語があるかもしれませんが、これは後で説明しますので安心してください。

このグラフはハルシオン 0.25mg を飲んだ時の血液中の薬の濃度の推移を表したものです。
クリーム色の部分に注目! これがハルシオンが効いている時間帯です。

ハルシオン半減期は約2.5時間薬の効果が持続する時間は約4.7時間になります。
つまり、薬の半減期と効果が持続する時間は違います

というわけで薬の効き目が続く時間について、わかりやすく解説します。

ちなみに、ここだけの話ですが、専門家の方でも知らない方がいらっしゃったりするんですよね。

目次

1.半減期って何? 効果が持続する時間って何?

まず、用語を理解しましょう。以下にわかりやすく整理しました。

半減期と効果が持続する時間の違い

項目内容
半減期(T₁/₂)血中濃度が最大値から半分に減少するまでの時間
薬の体内滞在時間の目安。
効果が持続する時間薬の臨床的な効き目が現れている時間のこと。
症状の改善が体感できる時間。

① 半減期(T₁/₂)

  • 薬物の血中濃度が50%になるまでの時間。
  • 体から薬が排出される速度の指標。
  • 薬の代謝・排泄速度を示すが、効果そのものとは直結しない。
  • 例:

    アリピプラゾール(エビリファイ:抗精神病薬)の半減期:約75時間(長い!)

    ロラゼパム(ワイパックス:抗不安薬)の半減期:約10~20時間

② 効果が持続する時間

  • 「効いてる」と患者が感じる時間。
  • 薬の作用点での活性時間や受容体への結合時間、薬理作用の持続が関係する。
  • 半減期より短いことも長いこともある

ということで、効果が持続する時間は半減期よりも短いこともあれば、長いこともあるつまり違うんですね。

ちょっと難しかったでしょうか?

では、具体例をみてください。理由も解説しました。
薬効持続時間が半減期よりも長い例と短い例です。

具体例

薬剤名半減期効果の持続時間解説
アスピリン
(アセチルサリチル酸)
解熱鎮痛剤
約15~20分6~12時間血中からはすぐに消えるが、血小板の働きを長く止めるため、効果は何時間も続く
アリピプラゾール
(エビリファイ)
抗精神病薬
約75時間24~72時間体内に長く残る薬で、
効果も1〜3日ほど続く。
脳の受け皿(受容体)
へのくっつきやすさと、
血液中の量が関係している

臨床上のポイントはここ!

  • 効果が切れたように感じても血中には薬が残っている(副作用や相互作用に注意)
  • 作用時間が長くても毎日服用が必要な薬もある(効果の「持続」が目的ではなく、安定した濃度の維持が重要)

2.双極症(双極性障害)とうつ病の治療に使われる薬剤

以下は、日本人における双極症(双極性障害)とうつ病の治療に使われる薬剤の半減期と効果持続時間を比較した表です。

抗精神病薬・抗うつ薬の半減期と効果持続時間(日本人の値)

薬剤名(商品名)分類半減期効果持続時間
アリピプラゾール
(エビリファイ)
抗精神病薬75時間約48時間
オランザピン
(ジプレキサ)
抗精神病薬30時間約12時間
クエチアピン
(セロクエル)
抗精神病薬6時間約6時間
リスペリドン
(リスパダール)
抗精神病薬3時間約6時間
ルラシドン
(ラツーダ)
抗精神病薬18時間約12時間
クロザピン
(クロザリル)
抗精神病薬12時間約6時間
ミルタザピン
(リフレックス)
抗うつ薬20時間約12時間
パロキセチン
(パキシル)
抗うつ薬21時間約12時間
セルトラリン
(ジェイゾロフト)
抗うつ薬26時間約12時間
デュロキセチン
(サインバルタ)
抗うつ薬12時間約12時間
ベンラファキシン
(イフェクサーXR)
抗うつ薬11時間約12時間
イミプラミン
(トフラニール)
抗うつ薬11時間約12時間
フルボキサミン
(デプロメール)
抗うつ薬15時間約12時間
ラモトリギン
(ラミクタール)
気分安定薬33時間約36時間

補足情報

  • 半減期が長いからといって効果が長く続くとは限りません
  • 効果持続時間は薬理作用・受容体親和性・血中濃度維持などにも左右されます。
  • XR(徐放剤:ゆっくり時間をかけて放出されるタイプの薬)では効果持続時間が延長されることがあります。

出典・参考文献

  1. KEGG Drug Database – medicus(京都大学)
  2. 日本うつ病学会 双極性障害治療ガイドライン(2017)
  3. Stahl SM. “Stahl’s Essential Psychopharmacology”(Cambridge University Press)
  4. Correll CU, et al. (2009).
    Second-generation antipsychotic medications and risk for metabolic and cardiovascular adverse effects in children and adolescents.
    JAMA, 302(16), 1765–1773.
  5. Pillinger T, et al. (2020).
    Comparative effects of 18 antipsychotics on metabolic function in schizophrenia, bipolar disorder, and major depressive disorder.
    Lancet Psychiatry, 7(1), 64–77.
  6. Preskorn SH. (2010).
  7. Clinically relevant pharmacology of antidepressants.

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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