双極症とペットの癒し効果:心理社会的支援としての動物介在療法

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メンタルヘルスケアにおけるペットの役割

双極症(双極性障害)を抱える人々にとって、ペットは単なる癒しを超えた特別な存在になり得ます。近年の研究や海外ブロガーの体験談によると、ペットは「情緒的な安定」「社会的つながり」「生活リズムの整備」という心理社会的支援の三つの柱を提供し、双極症の症状管理に貢献する可能性が示されています。

ペットがもたらす7つの心理療法的メリット

1. 規則正しい生活リズムの確立

犬の散歩や定期的な餌やりは、双極症の管理において重要な概日リズムの安定化に貢献します。起床・就寝・外出の時間を一定に保つ”タイムキーパー”として機能し、気分の安定につながります。

2. ストレス軽減と気分安定

動物介在療法(AAT)の研究では、ペットとのふれあいが血圧とコルチゾールレベルを低下させ、短時間で不安を緩和することが示されています。特に犬や猫を撫でる行為は、認知行動療法の補完的アプローチとして双極症の症状管理に役立つ可能性があります。

3. 孤独感の緩和と社会的つながり

ペットは「家族の代替」として情緒的サポートを提供し、他のペット飼い主との交流も促進します。双極症による対人関係の困難を抱える人々にとって、この心理社会的支援は重要な回復要因となります。

4. 自己効力感の向上

米国の横断調査では、ペットの世話をすることで心理的欲求が満たされ、自己肯定感が向上することが報告されています。双極症の治療において、自己効力感の向上は重要な要素です。

5. 症状の早期察知

一部の精神疾患サービス犬(PSD)は、気分変動の兆候を察知し、投薬のリマインドやパニック時の対応をサポートできます。この機能は双極症の再発予防にも応用可能です。

6. 身体活動の促進

犬の散歩による日常的な有酸素運動は、抑うつ症状の軽減に寄与します。運動は双極症の心理療法においても推奨される重要な要素です。

7. 生きる意味と目的の創出

「ペットのために生きる」という役割意識は、双極症(双極性障害)の患者にとって再発予防の行動変容を促す重要な動機付けとなります。

海外ブロガーたちの実体験

双極症と共に生きる海外ブロガーたちは、ペットが実際の生活でどのように支援してくれるのかを発信しています。bpHopeのブロガーは「薬が効きにくい日でも、散歩を待つ犬がいるとベッドから起き上がれる」と語り、International Bipolar Foundation (IBPF) ではエモーショナルサポートアニマル(ESA)の選び方や旅行時の注意点を解説しています。The Bipolar Writerでは、猫との暮らしが「孤独な長い夜」を切り抜ける支えになった体験が共有されています。

研究が示す心理社会的療法としてのエビデンス

複数の科学的研究が、ペットと双極症の関連性を調査しています。質的研究では、ペットが「共感的存在」「社会的仲介」「エンパワメント源」として回復をサポートすることが示されました。また、系統的レビューでは、動物介在療法が気分障害・統合失調症・依存症に対して有効性を示唆しています。Frontiersの横断調査(n=1,957)では、ペットとの心理的絆が強いほど抑うつスコアが低下することが報告されています。

ペットを迎える前のチェックポイント

双極症(双極性障害)の方がペットを迎える際は、以下の点を慎重に検討する必要があります:

  1. 経済的負担:医療費、フード、保険料などの継続的な出費
  2. 時間的責任:散歩、掃除、通院など。躁状態での過度なスケジュール管理に注意
  3. 症状悪化時のバックアップ体制:家族、友人、ペットシッターなどのサポート
  4. 別れのリスク:強い愛着ゆえに、喪失体験が症状悪化のトリガーとなる可能性
  5. アレルギー・住環境:集合住宅の飼育規約の確認

まとめ:心理療法としてのペットの可能性

ペットは双極症の心理社会的支援として大きな可能性を秘めていますが、その責任の重さも忘れてはいけません。動物介在療法や心理社会的療法の一環として、自分の症状、生活スタイル、サポート体制に合わせた慎重な選択が重要です。まずは短期のボランティア活動や一時預かりから始め、ペットとの相性を試すことをお勧めします。双極症(双極性障害)の治療において、ペットは認知行動療法などの既存の治療法を補完する貴重な存在となる可能性があります。

参考文献・引用URL一覧

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2854030/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7185850/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6886852/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24731910/

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この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

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