双極症(双極性障害)の治療に使われる薬剤トップ10

まどっち

薬剤師で双極症当事者の窓師(まどっち)です。

いきなり恐縮なのですが、筆者自身はあまり薬剤をランク付けすることに意味があるとは思っていないのですが、割とよく質問されますので集計してみました。

以下に、過去5年間(2020年〜2025年)に日本で双極性障害(双極症)の治療において頻繁に使用されている薬剤のトップ10を、使用傾向やガイドラインの推奨度を基にまとめました。

※ なお、このランキングはあくまでも統計的に集計したものです。当事者の治療に際しては個々の方の体質や疾患の状況、過去の推移に基づき最も効果のある薬剤が使用されますので、疑問点は主治医にご相談ください。


目次

日本における双極性障害治療薬 トップ10(2020〜2025年)

順位薬剤名(一般名)主な分類主な用途・特徴
1リーマス
(炭酸リチウム)
気分安定薬長期的な再発予防に有効。自殺リスク低減効果もあり、依然として第一選択薬とされる。​
2セロクエル
ビプレッソ
(クエチアピン)
抗精神病薬うつ・躁の両エピソードに有効。単剤でも使用され、睡眠改善効果も期待される。​
3ラミクタール
(ラモトリギン)
気分安定薬特にうつ病相に有効。躁転リスクに注意、維持療法にも用いられる。​
4ジプレキサ
(オランザピン)
抗精神病薬躁状態に対する効果が高く、急性期治療に使用される。体重増加などの副作用に注意。​
5デパケン
(バルプロ酸)
気分安定薬躁状態や混合状態に有効。妊娠中の使用には注意が必要。​
6エビリファイ
(アリピプラゾール)
非定型抗精神病薬安定化作用があり、躁・うつ両方に使用される。副作用が比較的少ない。​
7ラツーダ
(ルラシドン)
非定型抗精神病薬双極性うつ病に対する新しい選択肢として注目されている。​
8テグレトール
(カルバマゼピン)
気分安定薬特に躁状態や混合状態に使用されるが、薬物相互作用に注意が必要。​
9リスパダール
(リスペリドン)
抗精神病薬急性の躁状態に効果的。注射剤(LAI)もあり、服薬アドヒアランス向上に寄与。​
10抗うつ薬
(SSRIなど)
抗うつ薬双極性うつ病に対する使用は慎重に行われる。気分安定薬との併用が推奨される。​

🔍 解説と背景

基本的に双極症の治療で用いられる薬剤は、気分安定薬と抗精神病薬です。

リーマスは1949年、最初に発見された双極症(双極性障害・躁うつ病)の治療薬ですが、依然として双極性障害の第一選択薬とされています。また、臨床データから自殺リスクの低減効果が報告されており、認知症への効果の可能性も報告されている古くて新しい薬剤です。一方、副作用回避のため定期的な血中濃度測定が必要とされています。

セロクエルビプレッソラミクタールは、​うつ病相に対する効果が高く、維持療法にも適しています。
ラツーダは、​双極症や双極性うつ病に対する新しい治療選択肢として注目されています。​​
sumitomo-pharma.jp

抗うつ薬の使用は、​躁転リスクを考慮し、気分安定薬との併用が推奨されます。

🔍 窓師の感想

1位リーマス、2位セロクエルビプレッ、3位ラミクタールは鉄壁ですね。
おそらく、リーマスは登場してこのかた70年以上トップの座を譲っていないのではないでしょうか?

恐るべしリーマス!

双極症はⅠ型であれⅡ型であれ、うつ病相と寛解期を合計した期間は圧倒的に長いので、ここで用いられる薬が上位にランクインするのは妥当なことかもしれません。

4位ジプレキサ、6位エビリファイですが、ジプレキサが意外と高ランク、エビリファイが意外と低ランクというのはちょっとびっくり。

7位ラツーダ。新星ラツーダには今後に期待したいところ。

8位テグレトール。周囲ではほとんど使っている人を見たことが無いんですが、そうなのか…。

9位リスパダール。思ったよりも低ランクな印象ですね。内用液の味を改善すればもっと売れるかもです。(うそ)

そして10位抗うつ薬。
なんて言ったらいいんだろう…。
これ、いろいろな抗うつ薬をぜんぶまとめたらランクインしちゃったということなのかな。

ということで、集計に否定的だった窓師もそれなりに発見がありました。

参考文献

  1. 日本うつ病学会. (2023). 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
    https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2023.pdf
  2. 日本うつ病学会. (2020). 日本うつ病学会治療ガイドライン 双極性障害 2020. ​
    https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2020.pdf
  3. 塩田勝利. (2019). 双極Ⅱ型障害の薬物療法ガイドラインについて. 精神神経学雑誌, 121(8), 627–634.
    https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1210080627.pdf

以上

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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