双極性障害(双極症)の治療:心理療法と治療法の重要性と言葉の壁を乗り越えて

目次

難解な専門用語が心理社会的支援の普及を妨げる?その実態と解決への道筋

双極性障害(双極症)の治療において、薬物療法と並んで重要な役割を果たす心理療法や様々な治療法。しかし、その専門用語の難しさが、一般の人々にとって大きな障壁となっているのが現状です。この言葉の壁が、効果的な治療法へのアクセスを妨げ、患者さんやその家族の理解を困難にしている可能性があります。

心理社会的療法と治療法の専門用語の壁

認知行動療法(CBT)、対人関係社会リズム療法(IPSRT)、家族焦点化療法(FFT)など、双極性障害(双極症)の治療で用いられる心理社会的療法の名称は、専門家にとっては意味が明確でも、一般の方々にとっては覚えにくく、その内容を想像するのも難しいものです。これらの言葉の難解さが、心理療法や他の治療法に対する誤解や抵抗感を生み出している可能性も否定できません。

英語からの直訳が生む問題:療法、セラピー、トリートメント

実は、これらの専門用語の多くは英語からの直訳であることをご存知でしょうか?

認知行動療法 : Cognitive Behavioral Therapy (CBT)
対人関係社会リズム療法 : Interpersonal and Social Rhythm Therapy (IPSRT)
心理社会的療法 : Psychosocial Therapy
家族焦点化療法 : Family-Focused Therapy (FFT)
治療 : Treatment

日本語では「療法」や「治療」という言葉が使われていますが、英語では「Therapy(セラピー)」や「Treatment(トリートメント)」という言葉が一般的です。しかし、日本人にとってこれらの言葉にはニュアンスの違いがあり、これが心理療法や治療法に対する印象や受け入れやすさに影響を与えている可能性があります。

「療法」「セラピー」「治療(トリートメント)」のイメージの違い

以下のようにそれぞれの言葉にはイメージが付きまといます。

療法 : 医療専門家による専門的な治療。やや堅苦しく、敷居が高い印象。
セラピー : よりリラックスした、親しみやすいイメージ。心身のケアや自己成長といった前向きな印象。
治療(トリートメント) : 医学的介入を含む幅広い治療行為。より包括的で、医療的なニュアンスが強い。

これらの言葉のイメージの違いが、心理療法や他の治療法の普及に影響を与えている可能性は十分に考えられます。

アメリカにおける心理療法と治療の浸透度

例えば、アメリカでは「Therapy」や「Treatment」という言葉が広く受け入れられており、多くの人が肯定的な経験をしています。Barna Groupの調査結果は、アメリカにおける心理療法の浸透度を明確に示しています。

  • アメリカの成人の約42%が何らかのセラピーを受けた経験がある
  • 36%がセラピーを受けることに対してオープン
  • ミレニアル世代とジェネレーションXの約20%が現在セラピーを受けている
  • セラピーを受けた人の47%が「非常にポジティブ」な経験だったと評価

これらの数字は、心理療法や様々な治療法が日常生活の中でより自然に受け入れられている様子を示しています。

治療(Treatment)と療法(Therapy)の違い

アメリカでは、「Treatment」と「Therapy」の違いが時に混同されることがありますが、一般的には以下のように区別されます。

Treatment : より広範囲な医療的介入を指す。薬物療法、手術、その他の医学的処置を含む。
Therapy : より特定の、しばしば非薬物的なアプローチを指す。心理療法、理学療法などが含まれる。

日本では、「治療」という言葉がより包括的に使用され、「療法」は特定のアプローチを指すことが多いですが、この区別は必ずしも明確ではありません。

解決への道筋:言葉の橋渡し

双極性障害(双極症)の治療における心理社会的支援や様々な治療法の重要性を伝えるためには、より親しみやすい言葉を使うなど、コミュニケーションの方法を見直す必要があるでしょう。例えば

認知行動療法 : 考え方と行動のバランス改善法
対人関係社会リズム療法 : 人間関係と生活リズム調整法
薬物療法 : 症状改善のための医学的サポート
心理教育 : 病気を理解し上手く付き合うための学習

などでしょうか。

専門的な治療法の効果や意義を損なうことなく、一般の人々にも理解しやすい表現を用いることで、心理療法や他の治療法がより身近なものとなり、多くの人々の心の健康に貢献できる可能性があります。

結論:心理社会的支援と包括的治療の普及に向けて

心理社会的支援や様々な治療法の重要性を広く伝え、より多くの人々が適切な治療を受けられるようにするためには、専門家と一般の人々との間の言葉の橋渡しが不可欠です。それは単に言葉を置き換えるだけでなく、心理療法や包括的な治療アプローチの本質的な価値と効果を、より多くの人々に理解してもらうための努力でもあるのです。

この取り組みを通じて、メンタルヘルスケアへのアクセスが改善され、結果として双極性障害(双極症)を含む多くの精神疾患の早期発見・早期治療につながることが期待されます。また、「療法」「セラピー」「治療」といった言葉の持つニュアンスの違いを理解し、適切に使い分けることで、患者さんやその家族がより正確に治療を受けられるのではないでしょうか。

[参考URL]

  1. https://www.merriam-webster.com/dictionary/therapy
  2. https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/therapy
  3. https://en.wikipedia.org/wiki/Therapy
  4. https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%99%82%E6%B3%95/
  5. https://www.barna.com/research/americans-feel-good-counseling/
  6. https://www.apa.org/topics/psychotherapy/understanding
  7. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/mental-illness/in-depth/psychotherapy/art-20047228

コラムの更新をメールで通知

メールアドレスを登録すれば、コラム更新をメールで受信できます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

双極性障害Ⅱ型の当事者「ハック "Hack"」と言います。私自身の安定のためにも、「ハック」を収集しています。この病気は一生続きます。だから皆の知恵を集めて知りたい。知ることが必ずしも治療を意味しないかもしれません。でも、より良い安定への道を照らすかも。みんなで学び、共感し、サポートし合いたいです!

目次