うつ状態と炭水化物過剰摂取の関係性
双極性障害(双極症)のうつ状態で、急激な体重増加を経験した方は多いのではないでしょうか。私自身も20kgもの体重増加を経験しました。なぜ「深夜に」「炭水化物とスイーツを中心に」食べ続けてしまったのか、その謎を科学的に解明してみました。
心理社会的要因と生物学的メカニズム
双極性障害のうつ状態にある人々は、気分を改善しようとして炭水化物を過剰に摂取する傾向があります。この過剰摂取は、脳内のセロトニン(幸せホルモン)の放出と密接に関連しています。
- セロトニンを放出する脳神経細胞は、食事摂取量によって制御されています。
- 炭水化物の摂取は、インスリン分泌と血漿トリプトファン比を介してセロトニンの放出を増加させます。
- この生物学的メカニズムにより、うつ症状を持つ人々は気分改善のために炭水化物を求める傾向があります。
季節性感情障害との関連
季節性感情障害のうつ症状を持つ患者も、より多くの炭水化物を摂取し、夜間の食事を好む傾向があることが分かっています。これらの調査結果は、双極性障害の心理社会的支援において、栄養アプローチの重要性を示唆しています。
炭水化物と認知機能の関係
うつ状態での炭水化物過剰摂取が明らかになった一方で、認知機能への影響も気になるところです。
マクロ栄養素と脳の健康
炭水化物の種類によって認知機能への影響が異なると言われます。
- 単純炭水化物(糖類):全体的な認知機能の低下に関連
- 複雑炭水化物(全粒粉など):脳の健康的な老化や記憶力の改善と相関
炭水化物と脂肪の摂取比率
高齢者を対象とした研究では、食事における炭水化物と脂肪の比率が低いほど、認知症リスクの高い高齢者の認知機能が向上する可能性が示唆されています。
過剰摂取のリスク
日本の医療情報サイトによると、炭水化物の過剰摂取は以下のリスクを伴う可能性があるとも言われています。
- 血糖値の急激な上昇
- 老化の加速
- 肥満リスクの増加
- 糖尿病リスクの増加
- 認知症リスクの増加
バランスの取れた栄養摂取の重要性
一方で、炭水化物摂取と認知機能の関連性に対する批判的な見方もあります。British Journal of Nutritionに掲載された論文では、炭水化物摂取が必ずしも認知機能の低下に直接結びつくわけではないことが示唆されています。
双極性障害の治療と栄養管理
これらの研究結果を総合すると、双極性障害の治療において以下の点が重要であることが分かります。
- 炭水化物摂取の適切な管理
- バランスの取れた栄養摂取
- 個々の健康状態やニーズに応じた食事の調整
認知行動療法などの心理療法と併せて、適切な栄養管理を行うことで、双極性障害の症状管理と認知機能の保護に寄与する可能性があります。
まとめ
双極性障害の方々にとって、食事、運動、睡眠のコントロールは特に重要です。様々な心理社会的支援と共に、適切な栄養管理を行うことで、より効果的な症状管理が可能になるかもしれません。
参考URL
- Brain serotonin, carbohydrate-craving, obesity and depression – PubMed
- Nutrition and bipolar disorder: a systematic review – PubMed
- The Role of Diet, Eating Behavior, and Nutrition Intervention in Seasonal Affective Disorder: A Systematic Review
- The impact of dietary macronutrient intake on cognitive function and the brain
- A lower dietary carbohydrate/fat ratio may be effective in improving cognitive performance
- 糖質の過剰摂取で起こること|摂りすぎってどれくらい?症状チェックも | Medicalook
- Influence of carbohydrate on cognitive performance: a critical evaluation from the perspective of glycaemic load