双極性障害(双極症)のリハビリ:抑うつ状態からの回復、基礎知識①

双極症Ⅱ型当事者で、作業療法士のおとです。
前回はうつ状態の症状についてお話をしました。詳しくは以下をご覧ください。
双極性障害(双極症)のリハビリ:私のうつ状態の症状 – ネット心理教育ピアサポート (shinrikyoiku.com)

抑うつ状態といっても千差万別。人によって症状や感じ方は異なるものです。
でも、「とても辛い」という認識は、皆が変わらないのではないでしょうか。
できるだけ早く抑うつ状態から抜け出したい!と誰もが思うでしょう。

今回は、実際に双極症やうつ病などの精神疾患のリハビリを提供する私が
抑うつ状態からの回復方法についてご紹介していきます。
何回かに分けて記事にしていきますが、今日は基礎知識です。

目次

なぜ、抑うつ状態でのリハビリが必要?

抑うつ状態とは気分が落ち込み、何もしたくない、といった状態です。
この状態では体力低下が起き、長く続くと「廃用症候群」といった状態になります。
「サルコペニア」「フレイル」といってもいいのですが、難しいので省略します。

廃用症候群の主な症状は画像の通り。心身に良いことはありません。
特に体力面では、1週間経過で15%、2週間経過で20%、1カ月経過で50%筋力低下が起こるという報告があります。
これは色々な論文で違うわけですが・・・。
体力や筋力が落ちるのは簡単ですが、上げようと思うと相当な努力や時間がかかります。
また、精神面でも大きな影響を及ぼし、なかなか抑うつ状態から抜け出すのが遅くなってしまいます。
できるだけ早い離床とリハビリが、抑うつ状態からの回復スピードを決めるといっても過言ではありません。

リハビリをしない・遅れるとどうなる?

画像のような足の骨折を例に考えてみましょう。
ギプスで固定されていると、固定された足は細くなり、筋力は低下します。
骨がくっついた後、リハビリをせずに走るとどうなるか想像できますか?
恐らく、ケガをする可能性が高そうですし、筋力や体力をつけるには多くの時間がかかります。

ケガをしないためには、ギプスをしている段階からリハビリをします。
早期からリハビリを行うことで、体力や筋力の低下をできるだけ抑えます。
ギプスが取れた後もしっかりリハビリをし、短期間で病前に近い状態に戻ることになります。

これが抑うつ状態となると、意識できない方が多くいらっしゃいます。
いきなり100%の力で動くと必ずパンクし、深い抑うつ状態に陥りやすくなります。
なぜ、骨折では動かないのに、抑うつ状態ではいきなり動くのでしょうか?
このあたりは自身の状態を客観視したり、周りの人に頼る必要がありそうです。

抑うつ状態からの回復過程

画像には「うつ病」と記載されていますが、概ね双極症のうつ状態の回復モデルと変わりはありません。
グラフでは体力や集中力が先に落ちてきますが、双極症の方(私もそうですが)は先に「気分」が落ちやすいです。
とはいっても、体力や倦怠感と気分が同時に落ちることもしばしばなので、個々によって違うとも思います。

回復過程としては、まず第一に「興味関心」から回復していき、体力や集中力がついていきます。
「お腹が空いた」「トイレに行きたい」「喉が渇いた」といった意欲が、実際の行動に現れるといった形です。
段々と客観視できるようになってくると、「外に出たい」などの意欲に伴い、行動がついてきます。
ここで大事なのが、「直線的に良くなることはほとんどない!!」です。
1歩進んで0.8歩下がる、場合によっては2歩下がることもあります。
上下の波がありつつも、回復方向には向かいます。ここで心が折れないことが大事だと思っています。

意欲や体力の向上に伴い、今度はストレス対処技能や心理教育、病識について学びます。
この時期にこれらを習得することで、今後の予後や生き方が変わってくるでしょう。
ネット心理教育に参加してみるのも手だと思います。

まとめ

今回は抑うつ状態からの回復、基礎知識についてでした。
大まかな全体像が分かっていただけると、行動や考え方も変わるのではないかと思います。
抑うつ状態の回復についてはたくさんの過程を踏む必要があります。
長くなるので、何回かに分けてお伝えしていこうと思います。

参考文献

みんなの双極症/南中さくら,2021,合同出版
・田島治:うつ病の薬物療法の精神病理学的意義.2015
安静臥床が及ぼす全身への影響と離床や運動負荷の効果について (jst.go.jp)

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この記事を書いた人

作業療法士(OT)で双極性障害Ⅱ型当事者。妻と猫の3人暮らし。
最近短時間就労を始める。
作業療法士という医療職として、双極症の知識や個人でも行える作業療法の技術をお伝えできればと思っています。少しでもお役に立てると嬉しいです。

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