双極性障害(双極症)のリハビリ:うつ状態の自宅で行うリハビリ①
双極症Ⅱ型当事者、作業療法士のおとです。
前回は抑うつ状態からの回復や基礎知識についてお話をしました。
https://shinrikyoiku.com/2024/09/14/2024-09-14/
今回はこの続き、うつ状態のリハビリについてです。
誰もがうつ状態は辛く、早く抜け出したいと思います。
一方で、焦ってリハビリの順序を間違えてしまうと、更にうつ状態が深刻となる場合があります。
うつ状態のリハビリは病棟やデイケアで行われることが多いですが、多くの方は自宅療養だと思います。
不安に感じる方、焦って休めない方も多いでしょう。
そこで、今回は自宅で行えるうつ状態のリハビリについてお話ししていきます。
私は大きな抑うつ状態を経験した時、結果として順序立ててリハビリができました。
自分では認識していなかったのですが、「リハビリを提供する者としての知識」が潜在的にあったのだと思います。
結果として、相性の良い薬と出会ってからは順調にリハビリが進み、こうしてコラムを書いています。
今思うと、当事者として段階づけてリハビリするのは大切だと身に染みて感じています。
様々なレベルがあるので、分けながら話していこうと思います。
レベル①自身では何もできない状態のリハビリ
抑うつ状態が最高潮。何もやる気が起きず、食べられず、着替えや歯磨きもおっくうな状態です。
ベッドからは起き上がれず、「自分はもうだめだ・・・」と悲観的になる時期です。
ズバリ、この時期にリハビリを行うのは厳しいです。
脳が休むよう指令を出している状況であるため、何もやる気が起きません。
不眠や頭痛、倦怠感など、今起きている身体症状に対して治療を行う時期です。
いわば、今後の生活のための充電期間だと思ってください。
処方された薬を飲むことだけは忘れずにお願いします。
レベル②精神症状が少し改善し、家の活動ができるようになる
服薬効果が見られ、お腹が空いたり、スマホやテレビを見たり、といった意欲が出る時期です。
前回の記事でお話した通り、抑うつ状態は最初に意欲が回復し、次いで体力が向上します。
よって、意欲が出てきたらリハビリで体力をつける時期です。
しかし、大きな落とし穴には注意です。
①焦りで動き、心を傷つけないこと
意欲が出てくると、身体は少し無理が効くようになります。
「ここで頑張って動いて、早く仕事に戻る。うつから脱却するぞ!」
こう思ったらもう落とし穴にはまっています。
なぜなら、すぐに「意外と何もできない自分」に直面し、自己肯定感が低下するからです。
深いうつ状態に戻ったり、この状況を受け入れられず、自暴自棄に走りやすいです。
②生活リズムを整えることから始める
深い抑うつ状態においては、生活リズムが乱れて当たり前。
少し意欲が出てきたら、生活リズムを段々と整えるようにしましょう。
ただし、「心と考え方の余裕」を持つことが大事です。
まずは、何か1つ行う時間を決めましょう。
午前中に起きる、1日1食は食べる、などなどです。
「絶対8時に起きる!」といった「絶対」は必要ありません。
午前中に起きられるのは素晴らしいことです。目標には幅を持ち、出来たら自分を褒めてください。
自己肯定感を上げ、うつ状態から回復する1歩となります。
③30秒でも座る時間をとる
寝たきりの時間が多かったので、とても体力が落ちています。
まずは、座っている時間をとりましょう。30秒、1分でもいいです。とにかく座る。
最初は寄りかかる状態で構いません。体力がつけば、背もたれなしで。
最終的には背もたれなしで5~10分座れると大分体力がついたと言えるでしょう。
ただ座っているのは大変なので、
- スマホを触りながら
- ストレッチをしながら
- 歯磨きをしながら でもいいでしょう。
もちろん、ボーっと座っているのもありですよ。
④少しでも日光を浴びる
日光を少しでも浴びると、体内時計が調整され、生活リズムが整えやすくなります。
カーテンを少しでも開け、窓際で横になってたり、寄りかかって座るでもOK。
外に出るのは億劫ですので、家のなかから浴びるでも大丈夫です。
少し外に出て、深呼吸をして戻るでもいいでしょう。
まとめ
抑うつ状態からは早く抜け出したいものですが、油断禁物です。
自己肯定感を高めるために、少しのことでも「できた!」と思うことが大切です。
うつ状態に関わらず、日本人は自分を下に思う傾向がありますが、どんどん自分を甘やかしてください。
状態が上向いた頃に新しい自分に出会えるでしょう。
今回は寝たきり~意欲が出始めた頃までのリハビリをお伝えしました。
自宅で行えるものなので、ぜひ無理せず。
次回はこのレベルの続き、最低限の活動ができ始める頃のリハビリをお伝えします。
参考になると嬉しいです。
参考サイト
精神科医が推奨【日光浴びるだけ】生活リズムを整えるための「日光浴」実践すべき4つのポイント | ヨガジャーナルオンライン (yogajournal.jp)
みんなの双極症/南中さくら,2021,合同出版