双極症(双極性障害)のリハビリテーション:家族・身近な人が治療に関わるメリット
双極症Ⅱ型当事者、作業療法士のおとです。
双極症を持つ方の家族や身近な存在の人(以下ケアラー)もこのコラムを読まれていると思います。
再発予防や患者予後において、ケアラーによる服薬・心理的支援における介入は重要です。
双極症に限らず、精神疾患を持つ方にとって、家族、職場の上司や同僚、友人などはとても大事な存在となります。
今回はケアラーが治療に関わるメリットについてお話します。
ケアラー自身が治療に関わるメリット
ケアラーが治療にかかわることは、患者本人・ケアラー自身にとって様々なメリットがあります。
患者本人へのメリット
・治療への理解と協力: ケアラーが治療について理解することで、治療への協力を得やすくなります。治療法や薬の効果などをケアラーから説明を受けることで、不安が軽減され、治療へのモチベーションが向上する可能性があります。
・社会復帰の支援: ケアラーのサポートは、患者が社会復帰するための大きな力になります。日常生活のサポートや、社会とのつながりを維持するための支援など、ケアラーならではの役割が期待できます。
・精神的な安定: ケアラーの理解と温かい言葉は、患者の心の支えとなります。孤独感を軽減し、精神的な安定をもたらすことで、症状の改善に繋がる可能性があります。
ケアラーへのメリット
・病気への理解の深まり: 患者と一緒に治療過程を経験することで、病気について深く理解することができます。
病気に対する誤解や偏見が解消され、患者への接し方が変わることが期待できます。
・関係の改善: 病気をきっかけに、コミュニケーションが深まることがあります。お互いを理解し合い、協力し合うことで、関係がより良好になる可能性があります。
・精神的負担の軽減: 一人で抱え込まず、医療者やケアラーと協力することで、精神的負担を軽減することができます。
・自己成長: 患者のケアを通して、自己成長の機会を得ることができます。忍耐力や共感力、問題解決能力などが養われる可能性があります。
具体的な支援方法
①記録・気分の把握の援助
本人特有の気分の変動をつかむことは病状をコントロールする上で外せないことです。
同居しているなら、毎日気分のレベルを-5~+5の気分指数(-が鬱・+が躁)で確認することを日課とし、「今日は+2くらいかな?」「私もどう思う」などと、認識を共有しましょう。
②内服管理の援助
気分安定をはかる上で、薬物治療は多くの方で必須です。
服薬が習慣化するまでは、うっかりの飲み忘れが起こり得ます。
また、「たまに飲まなくても大丈夫だろう」という慢心からルーズになることがあります。
指示的になることは避け、「あなたに安定してほしいから、飲んでくれたら嬉しい」のような表現ですすめましょう。
③通院の援助
定期的な通院も病状安定に欠かせません。
診察に同席できれば一番いいのかなと思います。
ケアラーからの客観的な情報は非常に重要で、治療方針や予後に関わることです。
個人的にも、ケアラーが協力的な方は予後や治療方針が進みやすいという体感があります。
毎回の受診に付き添うことは難しいかもしれません。できるだけ同席できると嬉しいです。
ケアラー自身の人生が一番
身近な人が急に病気になったり、治療していると、どうしてもそちらに焦点がいきがち。
しかし、過度のケア負担による心身不調や社会的孤立、機会損失のリスクに晒されます。
つまり、ケアラー自身も余裕がなくなってしまうのです。
しかし、心身共に健康であってこそ良質な支援ができるものです。
当事者のみならず、ケアラー自身にも個々の人生があります。
本人のためを思えばこそ、ケアラーは自身の健康を気遣い、趣味や元々あった人付き合いを続けること、一日のうちで楽しみだったり、ホッとする時間を持つことが大事です。
まとめ
ケアラーが治療に関わるメリット
- 患者へのメリット:治療への理解と協力、社会復帰の支援、精神的な安定
- ケアラーへのメリット:病気への理解の深まり、関係性の改善、精神的な負担軽減、自己成長
- 具体的な支援:記録・気分の把握、内服管理、通院の援助
ケアラーへの注意点
- 自己のケア: ケアラー自身の健康も大切にし、周囲の支援も活用する。
参考サイト
・双極症、医師が患者さんの家族や身近にいる人に「お願いしたい3つのこと」。 | 兵庫県三田市の心療内科・精神科ならさくらこころのクリニックへ
・guideline_sokyoku2023.pdf
・guideline_20181119.pdf