双極症(双極性障害)のリハビリテーション:うつ状態での運動は効果的?
双極症Ⅱ型当事者、作業療法士のおとです。
皆さんは、「うつの時は運動が大事!」と一度は言われたことがあるのではないでしょうか。
気分が乗りにくいうえ、本当に運動がうつ状態に効くのか、疑問に思う方もいるでしょう。
エビデンスを活用しつつ、本当に運動がうつ状態に効くのか、お伝えしていきます。
また、今回は精神科作業療法におけるうつ病ガイドラインを用いて記事を作成しています。双極症における有効性は研究では微妙なところです。一方で、私の臨床経験だと運動は有効的なことが多いです。参考にしてみてください。
一般的に伝えられる運動がうつ状態にいいと言われる理由
・脳内化学物質の分泌促進
運動はエンドルフィンやセロトニンなどの「幸せホルモン」を増やし、気分を改善する効果があります。
・ストレスの軽減
適度な運動はストレスホルモン(コルチゾール)を減少させ、リラクゼーション効果をもたらします。
・睡眠の質向上
運動は睡眠の質を改善することが知られています。質の良い睡眠は双極性障害の管理に非常に重要です。
・自己肯定感の向上
簡単な運動でも「できた」という達成感が得られることで、自己肯定感が向上し、気分が前向きになることがあります。
ガイドラインにてエビデンスがある運動療法
・運動はうつ症状に中程度の効果がある。
・強度が中等度以上の有酸素運動を一定期間続けることが臨床的なうつ症状の改善に効果がある
・数週間のウォーキングやヨガがうつ症状を改善させるという報告
・気功や太極拳は臨床的なうつ症状を改善させるとともに、主観的な幸福感や自尊心の向上に効果があるとする報告
・うつ症状に対する運動の長期的な効果は小さいとされているが、継続して行うと再発率を低下させるという報告
・低レベルの身体活動を週 1 時間程度行うことで将来のうつ病の発症を 12%軽減させるという報告
・60 歳以上の患者に対しては、運動による抗うつ効果は大きいとされる。
有酸素運動とそうでない運動の組み合わせや、集団ベースでの実施個々の能力に合わせた運動などが推奨。
・運動はうつ症状への効果だけでなく、QOL(生活の質) を向上させる効果や認知機能改善への効果が検討される。
エビデンス解釈への注意点
・研究によって運動の種類や頻度などが異なるため、全ての運動が有効とは限らない。
・運動の有効性を示す報告は多いが、一方では抑うつに対する効果があるとは証明できないとする指摘もある。
臨床や当事者としての体感は効果あり
個人的には「運動はうつ状態に効果がある」と感じています。
1,2回の運動よりも定期的に運動することで、うつ状態が改善しやすいと思います。
気分・意欲の改善、体力・自己肯定感の向上、食欲の増加、顔色の変化・・・
多くのメリットがあるかな、と感じます。
運動を行う際の注意点
・運動の種類と強度
ストレッチや散歩など、無理のない運動から始めましょう。激しい運動は逆に疲れやすくなります。
・タイミング
睡眠に影響を与えないように、運動は寝る3時間前までに終えるのが理想です。
・過剰な期待をしない
運動の実施は、薬物療法や心理療法と組み合わせることが重要です。
・うつ状態の重症度に応じた対応
うつが重い時は、運動を始めること自体が困難な場合があります。無理をしないことが大切です。
ベッド上で、数分のストレッチや軽い深呼吸から始めるのが良いでしょう。
まとめ
運動はうつ状態に効果があると考えていいと思います。自身の無理のない範囲で実施しましょう。負荷や頻度は主治医と相談するのもいいですね。「継続的」に行うことが大切です。
参考サイト
・guideline_20181119.pdf
・日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023│双極性障害の治療課題と今後を考える|住友ファーマ 医療関係者向け
・運動のうつ病に対する治療効果とメカニズムについて|川崎市の高津心音メンタルクリニック 高津区溝の口 心療内科 精神科