双極症のリハビリテーション:なぜ再発防止が必要なのか?
双極症Ⅱ型当事者、作業療法士のおとです。
双極症の治療法は薬物療法と心理社会的治療が中心です。
治療を疎かにしてしまうと再発率が高くなり、発症後5年以内に約8割の方が再発するといったデータがあります。
再発を繰り返しやすくなると同時に、社会的後遺症が大きくなるため、再発予防が欠かせません。
目次
なぜ再発防止が必要なのか?
再発を繰り返してしまうと、本人や家族などあらゆる方面に影響が生じてしまいます。
なぜ、再発防止が必要なのかざっくり理由を挙げていきます。
再発による症状の悪化
再発は躁状態またはうつ状態として現れ、これらが繰り返されることで症状がより深刻化するリスクがあります。
- 躁状態:社会的トラブル(仕事の問題、対人関係の悪化)、経済的損失(浪費)、衝動的な行動によるリスク。
- うつ状態:自殺リスクの増加、長期間にわたる無気力や活動の低下。
脳機能への影響
- 再発を繰り返すことで、脳内の神経ネットワークや機能が影響を受ける可能性があります。
- 特に海馬(記憶や感情調整に関与する部位)がダメージを受ける可能性が指摘されています。
- 再発の頻度が増すと、症状が慢性化したり、エピソードの間隔が短くなったりすることがあります。
生活への影響
- 患者の日常生活に深刻な影響を及ぼします。
- 仕事や学業:集中力やパフォーマンスが低下し、職場や学校での評価に悪影響を与える可能性があります。
- 対人関係:症状の影響で家族や友人との関係が悪化することがあります。
- 経済的負担:治療費が増加したり、失業などによる経済的な困難が生じる場合があります。
家族やパートナー、身近な人への影響
- 再発は患者本人だけでなく、家族や周囲の人々にも影響を与えます。
- 介護や支援、金銭的な負担を生じる場合があります。
- 症状によって信頼関係が破綻する場合があります。
治療効果の維持
再発を防ぐことで、治療の効果を最大限に活かすことができます。
- 薬物療法や心理療法の効果を維持するには、症状の安定が不可欠です。
- 一度安定した状態を保つことで、患者自身が生活管理や治療への意欲を持ちやすくなります。
生活の質(QOL)の向上
再発がない状態を維持することで、患者は日常生活をより充実したものにできます。
- 社会活動への参加や趣味の楽しみ、家族との時間を取り戻すことが可能です。
- 自信を持って自身の生活や症状をコントロールできる感覚が得られます。
双極症の心理教育は再発防止に大きく役立つ!
双極症の心理教育は心理社会的支援のひとつです。
双極症の集団心理教育としては世界的にバルセロナプログラムが広く用いられています。
バルセロナプログラムが当事者の寛解期の維持に有効であることを確認した研究報告です。
・薬物療法だけ受けたグループの2年後寛解率:10%
・心理教育+薬物療法を受けたグループの2年後寛解率:40%
まとめ
双極症の治療において、再発防止は必須で大きな目標といえるでしょう。
防止策を考える前に、再発した時のデメリットを考えておくといいかもしれませんね。
次回は再発防止のために何ができるのか、解説してみたいと思います。
参考サイト
・双極性障害の第一人者に聞く 「躁・うつと上手くつきあう方法」とは? | 順天堂 GOOD HEALTH JOURNAL
・guideline_sokyoku2023.pdf
・双極性障害を再発させないために|覚えておくべき正しい知識│健達ねっと