ガイドラインに基づく双極症で使われる薬剤

双極症の治療は薬物療法、心理社会的支援、その他の治療法です。このうち治療の中心は薬物療法になります。

双極症の治療については日本うつ病学会よりガイドラインが公表されています。
「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023」
こちらをもとに、双極症ではどのような薬剤が使われているのかを整理しました。
なお、双極症の治療を受けられている方で、このガイドラインに外れた処方の人はそのまま現在の治療をすすめてください。何か問題を感じている方は主治医にご相談ください。

目次

Ⅰ.診療ガイドライン2023で双極症に使われる薬剤

双極症の気分の状態は、躁/軽躁状態、抑うつ状態、寛解状態に分けられます。(他に躁/軽躁状態の症状と抑うつ状態の症状が同時に認められる混合状態があります)
※ 精神科領域では、寛解状態とは、主な症状が2か月以上認められない状態を指します。
気分の状態を以下の3つに分け、それぞれの状態に応じて、

1.躁/軽躁状態に対して使用する薬剤
2.抑うつ状態に対して使用する薬剤
3.寛解状態(再発予防)で使用する薬剤

が、使用されます。ちなみに寛解状態でも再発を防ぐことを目的として服薬を続けることが重要です
双極症の治療薬は、薬効による分類では気分安定薬抗精神病薬が主に使われます。

気分安定薬が4種類
抗精神病薬が9種類

全13種類が2025年4月現在承認されています。
ただし、薬剤によって、躁/軽躁状態、抑うつ状態、または再発予防に効果が認められているかが異なります。
どの薬剤がどのような気分の状態に効果があるのかをまとめたのが次の表です。

では、この表から、それぞれの気分の状態に効果のある薬剤を見ていきましょう。

Ⅱ.躁/軽躁状態に使用される薬剤

先ほどの表で、躁/軽躁状態の列で青い囲みがある薬剤が躁/軽躁状態に使用される薬剤です。

具体的には、

気分安定薬としては、リチウム、バルプロ酸
抗精神病薬としては、アリピプラゾール、クエチアピン、アセナピン、リスペリドン、パリぺリドンです。

気分安定薬と抗精神病薬を組み合わせて使用することが推奨されています。

Ⅲ.抑うつ状態に使用される薬剤

先ほどの表で、抑うつ状態の列で青い囲みがある薬剤が抑うつ状態に使用される薬剤です。

具体的には、

気分安定薬としては、リチウム、ラモトリギン
抗精神病薬としては、クエチアピン、ルラシドンです。

気分安定薬と抗精神病薬を合わせて、抑うつ状態に効果があることが確認されている薬剤は現在のところ4種類しかありません。

Ⅳ.寛解状態で再発予防(維持療法)の目的で使用される薬剤

先ほどの表で、維持療法の列で青い囲みがある薬剤が寛解状態に使用される薬剤です。

具体的には、

気分安定薬としては、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン
抗精神病薬としては、アリピプラゾール、クエチアピン
です。

ただし、症状のある状態から寛解状態に移行してしばらくは症状のある状態で使用していた薬剤を継続することが推奨されています。

おわりに

双極症は病態が複雑なため、その治療薬も複雑です。今回のコラムはあくまでもガイドラインの要約であり、薬物療法のほんの一部を紹介したものです。また患者さん一人一人の状態に合わせて治療は行われますので、ご自身の治療に疑問のある方はまず主治医に確認してください

参考サイト

「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023」

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この記事を書いた人

作業療法士(OT)で双極性障害Ⅱ型当事者。妻と猫の3人暮らし。
最近短時間就労を始める。
作業療法士という医療職として、双極症の知識や個人でも行える作業療法の技術をお伝えできればと思っています。少しでもお役に立てると嬉しいです。

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