診療ガイドラインって何? 日本うつ病学会「双極性障害(双極症)2023」を一般の方向けに読み解く(双極症の動画図書館深掘りシリーズ)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 副理事長

認定専門公認心理師

社会福祉士

国際双極症学会 評議員

木野内南(布団ちゃん)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 理事長

薬剤師

藤田剛(窓師)

診療ガイドラインとは?――双極症の診療ガイドライン2023を一般向けに読み解く

医療の記事や病院での説明では、しばしば「診療ガイドラインでは、この治療が推奨されています」という言葉が使われます。

しかし、ガイドラインが誰によって、何を根拠に作られ、実際の診療でどのように使われるのかは、一般の方には分かりにくいかもしれません。

本記事では、まず医療全体における診療ガイドラインの役割を説明し、その後、双極症の診療ガイドラインに何が書かれているのかを、薬物療法だけに限定せず詳しく紹介します。

3分で分かる要点

ガイドラインは法律ではありません
医師へ一律の治療を命じる規則ではなく、患者と医療者が判断するための資料です。
研究の「答え合わせ本」でもありません
研究の確かさ、効果、副作用、負担、本人の希望を総合して推奨を示します。
当事者・家族も作成過程に参加しています
双極症2023では、当事者・家族と多職種が、取り上げる臨床上の疑問の検討や推奨を決める過程に参加しました。
薬の順位表ではありません
双極症2023は、診断、安全、維持療法、心理教育、家族支援、周産期、検査まで扱います。
最終判断は個別に行います
ガイドラインを土台に、病状、身体状態、生活、価値観を踏まえて共同意思決定を行います。

1.さまざまな診療科で整備が進む診療ガイドライン

現在、日本の医療では、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、感染症、アレルギー、腎臓病、妊娠・出産など、さまざまな領域で診療ガイドラインが作成・改訂されています。

医学研究は世界中で発表され、新しい検査、薬、手術、リハビリテーション、心理的支援などが次々に登場します。しかし、研究結果はすべて同じように確かなわけではありません。

  • 研究に参加した人数が少ない
  • 複数の研究で結果が一致していない
  • 効果はあるが、副作用や負担も大きい
  • 特定の年齢や病状の人しか研究に参加していない
  • 海外では実施できても、日本では制度や承認が異なる

そこで、それぞれの領域の学会や専門家が、関連する研究を体系的に集め、その質を評価し、医療現場で重要な問題について推奨や解説をまとめます。

日本では、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営するMinds(マインズ)ガイドラインライブラリが、国内で公開された診療ガイドラインを収集・評価し、医療者だけでなく患者・家族・市民へ情報を提供しています。

ガイドラインは、現代医療の「共通の土台」

診療ガイドラインは、特別な一部の疾患だけに作られるものではありません。医療者ごとの経験だけに頼らず、現在分かっている研究知見を共有し、診療の質を高めるための基盤になっています。

2.精神科領域でもガイドラインの整備と普及が進んでいます

精神科領域でも、双極症、うつ病、統合失調症、周産期の精神疾患などについて、診療ガイドラインや診療ガイドが作られてきました。

近年は、ガイドラインを作るだけでなく、医療者が内容を正しく理解し、日々の診療で活用できるようにする普及・教育活動も進められています。

ただし、精神科の診療には独自の難しさがあります。血液検査や画像検査だけで、「躁状態がどの程度改善したか」「本人らしい生活を取り戻せたか」を判断することはできません。

精神科診療では、次のような情報を総合します。

  • 本人が経験している症状
  • 睡眠、活動性、会話、判断、行動の変化
  • 家庭、学業、仕事、人間関係への影響
  • 自殺、自傷、他害、浪費などの危険性
  • 薬の効果と副作用を本人がどう感じているか
  • 本人が大切にしている生活、役割、価値観
  • 家族や支援者の状況

精神科のガイドラインは、単純な手順書ではありません

同じ診断名でも、症状、経過、生活環境、本人の希望は大きく異なります。精神科の診療ガイドラインは、「この診断なら全員にこの治療を行う」という指示書ではなく、当事者と医療者が治療を一緒に考えるための土台です。

3.そもそも診療ガイドラインとは何でしょうか

Mindsでは、診療ガイドラインを、健康に関する重要な課題について、システマティックレビューによってエビデンス全体を評価し、益と害のバランスを考え、医療利用者と医療提供者の意思決定を支援する推奨を示す文書と定義しています。

一般向けに言い換えると、診療ガイドラインとは、

現在までの研究と医療上の経験を整理し、一般的にはどのような診療が望ましいかを示す案内書

です。

ガイドラインの目的は、医師の代わりに治療を決めることではありません。患者と医療者が、治療の選択肢、期待できる効果、副作用や負担について共通の情報を持ち、話し合えるようにすることです。

4.診療ガイドラインは、何ではないのでしょうか

誤解:医師が必ず従う法律である

実際:法的拘束力を持つ規則ではありません

ガイドラインに沿っただけで自動的に適切な診療になるわけではなく、ガイドラインと異なる治療を行っただけで自動的に誤りになるわけでもありません。

誤解:すべての患者に同じ治療を行うマニュアルである

実際:一般的な選択肢を示す判断材料です

年齢、病型、身体疾患、妊娠、過去の効果と副作用、生活上の希望を加えて個別に判断します。

誤解:一番上に書かれた薬が最も強い

実際:病期と目的によって選択が変わります

躁状態、双極性うつ、維持期では治療目的が異なり、同じ薬の役割も変わります。

誤解:研究が少ない治療には意味がない

実際:重要でも研究しにくい領域があります

妊娠、双極Ⅱ型、混合状態、長期の心理社会的支援などでは、大規模試験が難しい場合があります。

最終的な判断は、患者と主治医が協働して行います

ガイドラインは重要な判断材料ですが、目の前の人の症状と生活をガイドラインだけで完全に表すことはできません。研究知見と個別の事情を結びつけることが、実際の診療です。

5.診療ガイドラインはどのように作られるのでしょうか

重要な課題を決める
臨床疑問を設定する
研究を幅広く調べる
益と害を評価する
推奨を決定・公開する

臨床疑問(CQ)を設定する

ガイドラインでは、診療上重要な疑問をClinical Question(クリニカルクエスチョン、CQ)として設定します。

双極症2023では、たとえば次のようなCQがあります。

  • どのような場合に入院を検討すべきか
  • 躁病エピソードの選択薬・治療法は何か
  • 双極性うつに抗うつ薬を併用してよいか
  • 維持療法はなぜ必要か
  • 心理教育に共通するミニマム・エッセンスは何か
  • 妊娠中の薬物療法のリスクと利益をどう考えるか
  • リチウムの血中濃度をいつ測定すべきか

システマティックレビューを行う

重要なCQについては、あらかじめ決めた方法で関連する研究を幅広く検索し、研究の質と結果をまとめるシステマティックレビューを行います。

都合のよい研究だけを選ぶのではなく、研究の偏り、人数、結果のばらつき、実際の患者への当てはまりなどを評価します。

利益相反を管理する

ガイドラインの公正性を守るため、製薬企業などとの関係を含む利益相反を申告・管理します。双極症2023でも、臨床疑問ごとに投票参加の可否を確認する仕組みが採用されています。

当事者・家族もガイドラインの作成過程に参加しています

双極症2023ガイドラインは、精神科医だけの視点で作られたものではありません。

ガイドラインで取り上げる臨床上の疑問は、精神科医に加え、心理職、薬剤師、看護師、精神保健福祉士、双極症の当事者、家族を交えた議論をもとに選ばれました。

また、研究結果から実際の推奨を決めるパネル会議にも、当事者と多職種のメンバーが参加しました。これは、完成した文書に後から意見を付け加えたというだけではなく、何を重要な課題として取り上げるか、研究結果を診療上の推奨へどのように結びつけるかという作成過程への参加です。

医療者は、症状の改善、再発率、副作用などを重視することがあります。一方、当事者は、眠気によって仕事を続けられるか、体重増加を受け入れられるか、家族との関係を保てるか、自分らしい生活を取り戻せるかといった問題を重視することがあります。

どちらか一方の視点だけでは、本人にとって本当に役立つ診療ガイドラインにはなりません。当事者・家族が作成過程へ参加していることは、双極症2023ガイドラインが、医療者へ治療方法を指示するだけの文書ではなく、当事者と医療者が治療を一緒に考えるための資料として作られていることを示しています。

6.「エビデンスの確実性」と「推奨の強さ」は別のものです

ガイドラインには、「エビデンス」「推奨」「確実性」など、少し難しく見える言葉が出てきます。

まず、次の二つを分けることが重要です。

用語何を表すか注意点
エビデンスの確実性研究から推定された効果を、どの程度確かなものとして受け止められるか低いからといって、「効かない」と証明されたという意味ではありません。
推奨の強さ効果、副作用、負担、本人の価値観などを総合し、その医療行為をどの程度勧めるかエビデンスが確かでも、人によって選択が分かれる場合は弱い推奨になります。

エビデンスの確実性

研究結果について、次のような点を確認します。

  • 研究参加者は十分に多いか
  • 比較方法は適切か
  • 偶然や偏りの影響は小さいか
  • 複数の研究で似た結果が出ているか
  • 実際の患者へ当てはめられるか

一般には「高い」「中程度」「低い」「非常に低い」などで表されます。確実性が低いというのは、効果がないという意味ではなく、現時点では効果の大きさを正確に判断しにくいという意味です。

推奨の強さ

推奨を決めるときは、研究結果だけでなく、次の要素も検討します。

  • 期待できる利益
  • 副作用や危険
  • 通院、採血、服薬などの負担
  • 患者によって希望が異なるか
  • ほかの選択肢があるか
  • 日本の医療現場で実施できるか
  • 費用や医療資源

双極症2023は、システマティックレビューを行ったCQについてGRADE grid法を採用し、次の4区分で推奨を示しています。

  1. 行うことを強く推奨する
  2. 行うことを弱く推奨する、または提案する
  3. 行わないことを弱く推奨する、または提案する
  4. 行わないことを強く推奨する

「弱い推奨」は、「ほとんど効かない」という意味ではありません

多くの人には適していても、病状、副作用、生活、本人の希望によっては、別の選択も十分にあり得るという意味です。

推奨を作れない問題もあります

研究が少ない問題へ無理に結論を出すと、かえって誤解を招きます。双極症2023では、投票を重ねても意見がまとまらなければ「推奨なし」とする手順が定められています。

また、十分な比較研究がない重要な問題については、専門家の経験、日本の医療事情、関連研究をまとめるナラティブレビューが用いられています。この部分では「推奨する」ではなく「提案する」と表現されています。

7.ガイドライン、保険適用、添付文書は同じではありません

ガイドラインに取り上げられている治療が、日本の添付文書でその病気や病期に承認されているとは限りません。

薬そのものは承認されていても、特定の疾患、症状、用量、使い方について承認されていない場合を適応外使用と呼びます。

海外を含む研究で一定の効果が報告され、臨床上重要な選択肢である場合には、ガイドラインで「適応外」と明記したうえで解説されることがあります。

ガイドラインに掲載されている=無条件に推奨、ではありません

双極症2023も、適応外使用を掲載することは、すべての人への使用を推奨する意味ではないと注意しています。最新の添付文書、本人の状態、代替治療を確認し、医師が慎重に判断します。

ガイドラインは、公開時点の「スナップショット」です

医学研究、薬の承認、添付文書、安全性情報は、ガイドライン公開後にも変化します。

双極症2023に掲載された国内承認薬の一覧は、2022年7月時点の添付文書をもとに作られています。その後の変更については、最新の添付文書や行政機関の情報を確認する必要があります。

たとえば炭酸リチウムについては、2026年に日本の添付文書で妊婦に関する「禁忌」が見直されました。これは、ガイドラインに価値がなくなったという意味ではなく、ガイドラインと最新の安全性情報を組み合わせて使う必要があるという例です。

8.双極症の診療ガイドライン2023とは

本記事作成時点で、日本うつ病学会が公式に公開している双極症の診療ガイドラインは、『日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023』です。

日本うつ病学会は2011年に、学会による精神疾患の治療ガイドラインとして先駆的な「双極性障害」のガイドラインを発表しました。その後、改訂を重ね、2023年版ではMindsの作成手順に沿った大改訂が行われました。

従来の躁病エピソード、抑うつエピソード、維持療法に加えて、次の領域が大幅に充実しました。

  • 疾患の特徴、診断、安全、生活習慣、社会資源
  • 心理社会的支援
  • 妊娠・出産・授乳を扱う周産期
  • 薬の副作用とモニタリング

対象範囲が治療薬の選択を超えて、双極症の診療全体へ広がったことから、名称も「治療ガイドライン」から「診療ガイドライン」へ変更されました。

双極症2023が目指すもの

ガイドラインには、当事者と医師が共同意思決定を行う際に、現在の状態に合った治療選択肢の長所・短所、費用、実施可能性などを説明する資料になることが期待されています。

9.双極症2023――全7章のサマリー

第1章

疾患の特徴

双極症とはどのような病気か、診断基準、症状と経過の多様性、他の精神疾患との区別などを扱います。

薬を選ぶ前に、次のような診療の土台を整理しています。

  • 望ましい治療方針の決め方
  • 入院を検討する状況
  • 自殺リスクへの対応
  • 生活習慣
  • 児童・若年、就労年齢、高齢期への配慮
  • 併存する身体疾患
  • 利用できる社会資源

双極症では、その日の症状だけでなく、過去の躁・軽躁、睡眠、活動性、家族から見た変化など、長い経過を見ることが重要です。

第2章

躁病エピソード

躁状態では、薬の選択より前に、本人と周囲の安全を確保する必要があります。

  • 睡眠欲求の低下と過活動
  • 浪費、高額な契約、危険運転
  • いら立ち、攻撃性、対人トラブル
  • 精神運動焦燥・興奮
  • 治療の必要性を認識しにくい状態

外来で安全を保てない場合は入院を検討します。そのうえで、気分安定薬、第2世代抗精神病薬、単剤療法と併用療法、さまざまな特徴を伴う躁状態への対応を扱います。

第3章

抑うつエピソード

双極症のうつ状態は、一般的なうつ病と見た目が似ていますが、薬の選び方は同じとは限りません。

  • 躁・軽躁への変化
  • 混合性の特徴
  • 自殺リスク
  • 抗うつ薬の利益と危険
  • 不安、精神病症状の併存
  • 双極Ⅱ型の抑うつ

標準的な薬物療法、単剤と併用、抗うつ薬の位置づけ、非薬物療法、治療反応へ影響する要因を検討しています。

第4章

維持療法

維持療法は、躁やうつが改善した後に、再発・再燃を防ぎ、安定した生活を続けるための治療です。

ガイドラインが引用するメタ解析では、薬物治療を継続した群の1年後の再発・再燃率は42.2%、治療を中止した群では65.7%でした。

これは「薬を飲めば絶対に再発しない」という意味ではありません。薬物療法を続けても再発し得るため、心理教育、生活リズム、早期警告サインへの対応を組み合わせる必要があります。

  • 維持療法を行う理由
  • 維持期に選ぶ薬
  • 急性期に使用した薬をいつまで続けるか
  • 単剤と併用療法
  • 維持期における抗うつ薬
  • 治療抵抗性への対応
第5章

心理社会的支援

2023年版では、心理社会的支援が独立した章になりました。これは、双極症の治療が薬物療法だけでは完結しないことを示しています。

  • 各病期に適した心理社会的介入
  • 日常生活で実践できる心理教育のミニマム・エッセンス
  • 心理教育と専門的精神療法の使い分け
  • 専門的支援を受けにくい環境での支援
  • 家族などケアラーへのサポート

心理教育では、病気の知識だけでなく、睡眠と生活リズム、本人固有の早期警告サイン、再発時の対応、服薬、ストレス、相談先などを学びます。

家族は治療へ協力する人であると同時に、負担や孤立に対する支援を必要とする人でもあります。

第6章

周産期

妊娠・出産・授乳では、薬による胎児・乳児への影響だけでなく、薬を中断した場合の再発リスクも考える必要があります。

  • 妊娠を考える本人・家族と共有すべき情報
  • 妊娠中の気分安定薬の利益とリスク
  • 産後・授乳期の利益とリスク
  • 産後の再発への備え

「妊娠するなら薬をすべてやめる」「治療が必要だから妊娠を諦める」という単純な二者択一ではなく、妊娠前から精神科・産婦人科と治療計画を立てます。

第7章

副作用とモニタリング

薬を処方することと、安全に使えているかを確認することは一体です。

  • リチウムの血中濃度測定
  • ラモトリギンの開始・増量方法
  • 体重、血糖、脂質
  • 腎機能、肝機能、甲状腺機能
  • 心電図
  • 複数の向精神薬を併用する場合
  • アルコール、カフェイン、サプリメント、食品

自覚症状がなくても検査が必要な副作用と、発疹、眠気、アカシジアなど本人の訴えが重要な副作用があります。

10.ガイドラインから見える、双極症診療の全体像

双極症2023を薬剤名の一覧としてではなく、全体を通して読むと、次のメッセージが見えてきます。

双極症の治療は、躁やうつを薬で抑えるだけではなく、安全を守り、再発を予防し、病気を理解し、生活と社会参加を取り戻すための長期的な共同作業である。
治療の柱ガイドラインが示す視点
正しく状態を把握する躁、軽躁、うつ、混合性、寛解と、長期経過を確認します。
病期に合った治療を行う急性期と維持期では、治療の目的と薬の役割が異なります。
安全を優先する自殺、他害、浪費、契約、搾取、運転などの危険を評価します。
再発予防を中心に置く症状改善後も、薬、心理教育、早期警告サインへの対応を続けます。
当事者が治療へ参加する本人の希望、生活、避けたい副作用を共有し、共同意思決定を行います。
家族・支援者を孤立させない本人の同意と自律性を尊重しつつ、家族にも情報と支援を提供します。
身体の健康を守る体重、血糖、脂質、腎臓、肝臓、甲状腺、心臓などを確認します。

11.当事者や家族は、ガイドラインをどう使えばよいでしょうか

ガイドラインは、自分で薬を選んだり、主治医の治療を点数化したりするためのものではありません。

診察で疑問を整理し、治療方針を理解するために使うと役立ちます。

  • 私はいま、躁・うつ・維持期のどの状態でしょうか
  • この治療は、現在の症状を改善するためですか、再発予防のためですか
  • ほかにどのような選択肢がありますか
  • この治療で期待できる利益と副作用は何ですか
  • ガイドラインでは、どの程度の推奨になっていますか
  • その推奨は、どの程度確かな研究に基づいていますか
  • 日本で承認されている使い方ですか
  • どのような検査が必要ですか
  • どのくらいの期間続ける予定ですか
  • 心理教育や家族支援を受けられますか
  • 仕事、妊娠、運転など、私の生活上の希望を治療へ反映できますか
  • 調子が悪くなったとき、どの段階で連絡すればよいですか

ガイドラインと現在の治療が違って見えるとき

「ガイドラインと違うので間違いではありませんか」と結論づける前に、次のように尋ねると、治療方針を理解しやすくなります。

ガイドラインではこのように書かれていましたが、私の場合に現在の治療を選んだ理由を教えてください。

まとめ――ガイドラインは、治療を一緒に考えるための「地図」

  • 診療ガイドラインは、科学的根拠を整理して標準的な考え方を示す文書です。
  • 法律や一律の診療マニュアルではありません。
  • エビデンスの確実性と、推奨の強さは別のものです。
  • 推奨は、効果だけでなく、副作用、負担、本人の価値観を含めて決められます。
  • 双極症2023は、薬物療法だけでなく、診断、安全、維持療法、心理教育、家族支援、周産期、検査を扱います。
  • 最終的な治療は、ガイドラインと個別の事情をもとに、当事者と医療者が一緒に選びます。

双極症の治療目標は、単に躁やうつの症状をなくすことだけではありません。再発による生活上の損失をできるだけ減らし、病気と治療を理解し、必要なときに支援へつながりながら、その人らしい生活とQOLを取り戻していくことです。

診療ガイドラインは、目的地も進む道も一方的に決める「命令書」ではありません。当事者、家族、医療者が現在地と選択肢を確認し、納得できる道を一緒に探すための「地図」と考えると分かりやすいでしょう。

参考文献・参考資料

  1. 日本うつ病学会.日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023
  2. 日本うつ病学会.ガイドライン検討委員会
  3. 公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds.診療ガイドラインの定義
  4. 公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds.診療ガイドラインQ&A(基礎編)
  5. 公益社団法人日本精神神経学会.精神疾患の診療ガイドライン講習会について
  6. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).炭酸リチウムの「使用上の注意」の改訂について

本記事は、一般の方が診療ガイドラインの役割と内容を理解するための解説です。ガイドライン、添付文書、安全性情報は改訂されるため、実際の診療では最新情報をご確認ください。

医療情報としての注意

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断、治療、薬の選択、用量、減量・中止については、主治医および薬剤師へご相談ください。

ガイドラインを読んで現在の治療に疑問を持った場合も、自己判断で薬を中止せず、疑問点を診察時に主治医へお伝えください。

NPO法人ネット心理教育ピアサポート
「全ての当事者に心理教育を」

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。