双極症の治療薬④ Q&A編ーー副作用・血液検査・妊娠・薬のやめ方


NPO法人ネット心理教育ピアサポート 理事長
薬剤師
藤田剛(窓師)
服薬を続ける中で生じやすい、よくある50の質問をピックアップしました。
双極症の薬物療法では、「いつまで飲むのか」「副作用は我慢すべきか」 「お酒や市販薬は大丈夫か」「妊娠を考えるときはどうするか」など、 日常生活に直結する疑問が数多く生じます。
本記事では、診察や心理教育の場で多く尋ねられる質問を、 薬の基本、飲み方、効果、副作用、生活、妊娠、緊急時、相談方法に分けて整理しました。
このQ&Aの使い方
- 気になる質問を開いてお読みください。最初から順に読む必要はありません。
- 回答は一般的な原則です。実際の薬袋、添付文書、主治医・薬剤師の指示を優先してください。
- 疑問を診察前に整理し、主治医や薬剤師へ質問するための資料としてお使いください。
- 自己判断による増量、減量、中止、再開は避けてください。
通常の次回受診を待たず、早めに医療機関へ連絡したい症状
発疹と全身症状
発熱、目・口のただれ、顔の腫れを伴う発疹
リチウム中毒が疑われる症状
強い震え、嘔吐、ふらつき、ろれつ困難、混乱
悪性症候群が疑われる症状
高熱、強い筋肉のこわばり、意識の変化、大量の発汗
気分・行動の急激な変化
眠らず活動し続ける、自殺したい気持ち、危険な衝動の増加
コラム「双極症の治療薬」シリーズの構成
- 総論:「双極症の薬ってどんなもの?」
- 気分安定薬編(リチウム・ラモトリギン・バルプロ酸など)
- 抗精神病薬編(ラツーダ・ビプレッソ・ジプレキサなど) 今回
- 副作用・血液検査・妊娠・薬のやめ方Q&A
第1部 薬について最初に知りたいこと
薬の分類名、複数の薬を使う理由、治療期間など、診察で最初に尋ねられることが多い質問です。
Q1.双極症では、なぜ薬物療法が必要なのですか?
薬は、躁・軽躁・抑うつの症状を改善し、再発・再燃を防ぐために用いられます。生活リズム、心理教育、家族・社会的支援も重要ですが、薬物療法と心理社会的支援は、どちらか一方を選ぶものではありません。
症状が強い時期には、睡眠、判断、活動性、自殺リスクなどが大きく変化するため、本人の努力やカウンセリングだけでは十分に調整できないことがあります。薬は「人格を変えるもの」ではなく、病的に大きくなった気分の波を小さくするための治療手段です。
Q2.気分安定薬とは、感情をなくす薬ですか?
いいえ。治療の目的は、自然な喜怒哀楽をなくすことではありません。仕事や人間関係、金銭、睡眠などへ大きな影響を及ぼす躁・軽躁・抑うつを抑え、本人らしい感情と生活を取り戻しやすくすることです。
「感情が平らになりすぎた」「創造性や意欲が落ちた」と感じる場合は、抑うつ症状、眠気、薬の量、ほかの薬との組み合わせなどを主治医と検討します。
Q3.抗精神病薬を処方されたということは、統合失調症なのですか?
薬の分類名だけで診断は決まりません。抗精神病薬は、幻覚・妄想がない双極症でも、躁状態、強い焦燥、不眠、双極性うつなどの治療に正式に用いられます。
「何という分類の薬か」よりも、「自分のどの症状を、どの期間治療する目的で処方されているか」を確認することが大切です。
Q4.抗うつ薬だけでは治療できないのですか?
双極症の抑うつ状態は、うつ病の抑うつ状態と見た目が似ていても、薬の選び方が異なります。抗うつ薬を単独で使用すると、躁・軽躁への変化、混合状態、気分の波の増加が問題になる場合があります。
抗うつ薬が必要な人もいますが、気分安定薬や抗精神病薬との組み合わせ、過去の躁転、病型、現在の症状を考えて慎重に判断されます。自己判断で開始・増量しないでください。
Q5.なぜ睡眠薬や抗不安薬も一緒に処方されるのですか?
不眠や強い不安を短期的に軽減し、生活リズムを整えるために併用されることがあります。ただし、睡眠薬や抗不安薬だけで双極症の気分の波を長期的に安定させることはできません。
薬によっては依存、耐性、転倒、日中の眠気などに注意が必要です。いつまで続ける予定か、毎日飲む薬か、必要時だけの薬かを確認しましょう。
Q6.どうして何種類もの薬が処方されるのですか?
躁・うつ・不眠・不安など、異なる症状を治療するために複数の薬を組み合わせる場合があります。また、急性期の薬から維持期の薬へ切り替える途中で、一時的に薬が重なることもあります。
一方、薬が増え続けると副作用や相互作用も増えます。各薬の目的を確認し、症状が安定した後には「現在も必要か」を定期的に見直すことが重要です。
Q7.薬は一生飲み続けなければならないのでしょうか?
双極症では、再発予防のため中長期的な服薬が必要になることが少なくありません。しかし、「一生、同じ薬を同じ量で飲む」と最初から決まるわけではありません。
これまでの躁・うつの回数と重症度、入院、自殺リスク、薬を減らしたときの経過、副作用、本人の希望を踏まえて判断します。中止を考える場合も、安定期に主治医と時間をかけて計画します。
第2部 飲み方・飲み忘れについて
毎日の服用で迷いやすい質問です。薬ごとの指示が最優先であり、以下は共通する原則です。
Q8.飲み忘れたら、次に2回分をまとめて飲んでもよいですか?
原則として、2回分をまとめて服用しません。過量による眠気、ふらつき、中毒などの危険があるためです。
気づいた時刻と次の服用時刻の間隔によって対応が異なります。処方時に確認した方法、薬袋、患者向医薬品ガイドに従い、分からない場合は薬局または医療機関へ相談してください。
Q9.薬を飲んだ後に吐きました。もう一度飲むべきですか?
服用から嘔吐までの時間、錠剤が見えたか、薬の種類によって異なります。吸収された量が分からないため、自己判断でもう一度同じ量を飲むと過量になる可能性があります。
追加服用はせず、処方した医療機関または薬局へ連絡してください。嘔吐や下痢が続く場合、特にリチウムでは脱水による中毒にも注意が必要です。
Q10.飲む時間を朝から夜へ変えてもよいですか?
眠気、不眠、食事の影響、血中濃度などを考えて服用時刻が決められています。自己判断で大きく変更すると、副作用や効果が変わる場合があります。
仕事や生活に合わない場合は、「朝は眠すぎる」「夜勤がある」など具体的に伝え、変更方法を相談してください。徐放錠や食後服用が必要な薬では特に確認が必要です。
Q11.錠剤を半分に割ったり、砕いたりしてもよいですか?
薬によります。徐放錠、腸溶錠、特殊なコーティング錠は、割ったり砕いたりすると薬の放出や吸収が変わり、危険なことがあります。割線があっても、必ず分割できるとは限りません。
飲み込みにくい場合は、粉薬、液剤、小さい錠剤、口腔内崩壊錠などへ変更できることがあります。薬剤師へ相談してください。
Q12.症状が悪い日にだけ飲む方法ではだめですか?
頓服として処方された薬は、指示された症状があるときだけ使用します。一方、気分安定薬や維持療法の薬は、症状がない日も一定量を継続することで再発予防効果を期待します。
毎日の薬を自己判断で「必要時だけ」に変えると、血中濃度が不安定になり、再発や副作用につながることがあります。
Q13.数日飲めなかった薬を、以前の量で再開してよいですか?
薬によっては危険です。特にラモトリギンは、一定期間中断した後に以前の量から再開すると重い皮膚障害の危険が高まる可能性があり、少量からやり直す必要があります。
中断期間と薬の名前を伝え、再開する前に医師または薬剤師へ確認してください。
Q14.食前・食後の指定は、どの程度守る必要がありますか?
食事によって吸収が大きく変わる薬があります。ルラシドンは食後、クエチアピン徐放錠は食事との間隔を含む服用指示が重要です。
「食後」と書かれている理由が、胃への負担を減らすためか、吸収を安定させるためかは薬によって異なります。生活上守りにくい場合は、自己変更せず相談してください。
Q15.薬を飲んだか分からなくなった場合はどうしますか?
確実でない状態で追加服用すると、二重に飲む可能性があります。原則として追加せず、薬の種類や状況に応じて医療機関・薬局へ相談します。
一包化、曜日入りケース、服薬記録、スマートフォンの通知などを活用できます。家族が管理する場合も、本人の尊厳と自立を損なわない方法を話し合います。
第3部 効果・増量・減量・変更について
「効いているのか分からない」「薬を変えたい」と感じたときに考えたい質問です。
Q16.薬は飲んですぐ効きますか?
薬と治療目的によって異なります。眠気や鎮静は初回から現れることがありますが、気分エピソード全体の改善には日数から数週間を要する場合があります。再発予防の効果は、長い経過の中で判断します。
副作用が先に現れ、効果をまだ感じられない時期もあります。つらい副作用や病状悪化があれば、予定日を待たず相談してください。
Q17.薬が効いているか、どのように判断しますか?
気分だけでなく、睡眠時間、活動量、会話、買い物、仕事、焦燥、自殺念慮、生活機能などを総合して判断します。本人には変化が分かりにくく、家族や周囲が先に気づく場合もあります。
気分・睡眠記録や、開始前と開始後の具体的な生活の違いを診察で共有すると判断しやすくなります。
Q18.副作用だけが出て、効果が感じられません。
副作用の種類と重さ、開始・増量からの期間、期待する効果が現れるまでの時間を分けて考えます。軽い副作用が徐々に和らぐ場合もありますが、重い発疹、中毒症状、強いアカシジアなどは待つべきではありません。
「我慢するか、すぐ中止するか」の二択ではなく、量、時刻、併用薬、代替薬を相談できます。
Q19.症状が安定したので、薬を減らしたいです。
安定した状態は、薬を含む治療が効いている結果かもしれません。一方、副作用や薬の数を定期的に見直すことも重要です。
減量する場合は、安定期間、季節、仕事や家庭の負担、過去の再発パターンを確認し、一度に複数の薬を変えず、早期警告サインを決めて段階的に行います。
Q20.薬を急にやめると、どのようなことが起こりますか?
不眠、不安、吐き気などの中止後症状が出る薬があります。また、躁・うつが再発する危険もあります。薬によっては急な中止による危険が特に大きいことがあります。
副作用がつらい場合でも、緊急性の高い症状を除き、減量方法を医師と相談します。重い副作用が疑われるときは、すぐ医療機関へ連絡して指示を受けてください。
Q21.薬を1種類だけにすることはできますか?
単剤で安定できる人もいますが、躁とうつの両方、急性期と維持期など、複数の目的を1剤で十分に満たせない場合があります。
薬の数を減らすこと自体を最終目標にせず、再発予防と生活上の負担のバランスを考えます。各薬の目的が説明できない場合は、薬剤整理を相談するよい機会です。
第4部 副作用と検査について
副作用は、我慢し続けるのでも、自己判断で中止するのでもなく、早く気づき、重さを見分け、相談することが重要です。
Q22.副作用はどこまで我慢すべきですか?
副作用を無条件に我慢する必要はありません。生活への影響、危険性、治療効果とのバランスを考えます。眠気や軽い胃腸症状など経過をみられるものもあれば、早急な対応が必要なものもあります。
「いつから」「薬を始めた・増やした何日後か」「一日の中でいつ強いか」「生活に何ができなくなったか」を伝えると調整しやすくなります。
Q23.体重が増えました。薬のせいでしょうか?
薬によって食欲、代謝、眠気、活動量が変わり、体重増加につながることがあります。特に一部の抗精神病薬では、体重、血糖、脂質の定期確認が重要です。
本人の意思の弱さだけが原因ではありません。開始前からの変化を確認し、食事・運動支援、服用量、代替薬を検討します。急激な増加は早めに相談してください。
Q24.眠気が強く、仕事や家事ができません。
眠気は薬だけでなく、抑うつ、睡眠不足、睡眠時無呼吸、ほかの薬、飲酒などでも起こります。服用時刻、量、薬の組み合わせを見直せる場合があります。
強い眠気がある間は運転や危険な作業を避けてください。「眠れるからよい副作用」とは限らず、日中生活への影響を具体的に伝えます。
Q25.じっとしていられず、落ち着きません。躁状態でしょうか?
躁・混合状態の可能性に加えて、アカシジアという薬の副作用も考えます。アカシジアでは、体の内側から強く落ち着かず、座っていられず、歩き回りたくなる感覚が現れます。
薬の開始・増量後に出た場合は特に重要です。病状と誤認して増量すると悪化することがあるため、早めに処方医へ伝えます。
Q26.手が震えます。危険な副作用ですか?
リチウム、バルプロ酸、抗精神病薬などで震えが現れることがあります。カフェイン、甲状腺、緊張、ほかの病気も関係します。
細かな震えだけか、急に強くなったか、ふらつき・ろれつの回りにくさ・嘔吐・混乱を伴うかで緊急性が異なります。リチウム服用中に急に強くなった場合は中毒の可能性もあるため早めに相談します。
Q27.発疹が出ました。次の診察まで待ってよいですか?
新しい薬の開始後、特にラモトリギンやカルバマゼピン服用中の発疹は、自己判断で様子を見続けないでください。発熱、目や口のただれ、顔の腫れ、全身のだるさを伴う場合は、重い皮膚障害の可能性があります。
できるだけ早く処方医へ連絡し、夜間・休日で重い症状がある場合は救急医療へ相談します。
Q28.頭が働かない、感情が鈍いと感じます。
薬による眠気や認知面への影響だけでなく、抑うつ症状、睡眠障害、甲状腺機能、病後の回復途中なども考えられます。
「薬を飲む前との違い」「仕事で具体的に困ること」「一日の変化」を伝えます。自己中断ではなく、服用時刻、量、薬の種類、身体検査を含めて検討します。
Q29.月経、乳汁、性機能の変化も薬と関係しますか?
一部の抗精神病薬ではプロラクチンが上昇し、月経異常、乳汁分泌、性欲低下、勃起・射精の問題などが現れることがあります。抑うつや身体疾患も関係します。
言いにくい内容ですが、治療継続とQOLに重要です。症状、ホルモン検査、薬の変更などを相談できます。
Q30.血液検査が正常なら、副作用はないと考えてよいですか?
いいえ。採血で確認できるのは副作用の一部です。眠気、アカシジア、発疹、不随意運動、便秘、性機能などは、本人の訴えや診察が重要です。
反対に、自覚症状がなくても腎機能、肝機能、甲状腺、血糖、脂質などに変化が出る場合があるため、症状がなくても検査が必要です。
Q31.なぜ薬の血中濃度を測るのですか?
血中濃度が低すぎると効果が得られず、高すぎると中毒や副作用が増える薬があります。特にリチウムでは、投与開始・増量時と維持期の定期測定が重要です。
採血時刻、直前の服薬、脱水、下痢、併用薬、カフェイン摂取の変化などで値が変わるため、医療機関の採血指示を守ります。
第5部 飲酒・カフェイン・市販薬・生活について
処方薬以外のものも、効果、副作用、血中濃度、睡眠へ影響します。
Q32.お酒は飲んでもよいですか?
アルコールは、向精神薬の眠気や筋弛緩作用を強め、転倒、事故、判断力低下につながります。また、睡眠の質を悪化させ、躁・うつの誘因になることがあります。
原則として控えることが安全です。飲酒習慣がある場合は隠さず伝えてください。急に大量飲酒をやめることにも危険がある人は、医療者の支援が必要です。
Q33.コーヒーやエナジードリンクは問題ありませんか?
カフェインは不眠、焦燥、動悸を強め、生活リズムを崩すことがあります。特にエナジードリンクは、カフェイン量が多いものや複数の成分を含むものがあります。
リチウム服用中は、習慣的なカフェイン摂取量を急に大きく変えると血中濃度へ影響する可能性があります。量を急変させず、睡眠との関係を確認してください。
Q34.風邪薬や痛み止めを市販で買ってもよいですか?
成分によっては眠気を強めたり、ほかの薬と重複したりします。非ステロイド性抗炎症薬の一部は、リチウム濃度を上げる可能性があります。総合感冒薬には複数の成分が入っています。
購入時にお薬手帳を提示し、双極症の治療薬を服用していることを薬剤師・登録販売者へ伝えてください。
Q35.サプリメントや漢方は薬ではないので安全ですか?
天然・健康食品であっても、薬の血中濃度や気分へ影響するものがあります。セント・ジョーンズ・ワート、ダイエット系サプリ、複数成分のエナジー製品などには注意が必要です。
商品名と成分が分かる写真や容器を医師・薬剤師へ見せてください。処方薬の代わりとして自己判断で使用しないでください。
Q36.グレープフルーツはすべての精神科薬で禁止ですか?
すべてではありませんが、一部の薬では代謝を妨げ、血中濃度を高める可能性があります。カルバマゼピンなど、特に注意が必要な薬があります。
果汁だけでなく加工品も影響する場合があります。自分の薬が対象か、薬剤師へ確認してください。
Q37.タバコをやめると薬の効き方が変わりますか?
喫煙の煙に含まれる成分は、一部の薬の代謝を速めます。オランザピンなどでは、禁煙・再喫煙によって血中濃度や副作用が変化する可能性があります。
禁煙は健康上重要ですが、薬の調整が必要になる場合があるため、禁煙開始を主治医へ伝えます。電子たばこやニコチン製剤との違いも含めて相談してください。
第6部 妊娠・授乳・生殖に関する質問
妊娠を考えるときは、「薬を使う危険」と「中断による再発の危険」の両方を検討します。
Q38.将来妊娠したいのですが、いつ相談すればよいですか?
妊娠が成立する前から相談するのが理想です。過去の病相、薬への反応、妊娠・産後の再発リスクを確認し、必要に応じて薬の変更、葉酸、生活、家族・医療支援体制を計画します。
妊娠を希望していることは、薬を中止する宣言ではありません。安全な治療計画を共同で作るための重要な情報です。
Q39.妊娠が分かりました。すぐ薬をやめるべきですか?
自己判断で急に中止しないでください。双極症では、妊娠中の服薬中断により再発し、本人と胎児の安全に影響する場合があります。
できるだけ早く精神科と産婦人科へ連絡し、薬ごとの胎児へのリスク、現在の病状、中断・継続のリスクを検討します。2026年にリチウムの妊婦禁忌は見直されましたが、無条件に安全になったという意味ではありません。
Q40.バルプロ酸を服用しています。妊娠への影響はありますか?
バルプロ酸は胎児の先天異常や神経発達への影響が知られており、妊娠する可能性のある方では特に慎重な検討が必要です。
ただし、急に中止すると病状が悪化する可能性があります。妊娠を希望する前に、代替薬、避妊、病状安定の計画を主治医と相談してください。
Q41.薬を飲みながら授乳できますか?
薬の種類、服用量、乳汁への移行、乳児の月齢・健康状態によって異なります。授乳と薬物療法を両立できる場合もあります。
「授乳するか、治療するか」の二択ではありません。精神科、産婦人科、小児科と相談し、乳児の眠気、哺乳、体重増加などを観察します。
Q42.薬で妊娠しにくくなったり、性機能が落ちたりしますか?
一部の抗精神病薬によるプロラクチン上昇、体重変化、性機能の副作用などが、生殖や性生活へ影響する場合があります。病状やほかの身体疾患も関係します。
月経異常、乳汁分泌、性欲や勃起の変化がある場合は、薬の変更や検査を相談してください。
第7部 体調不良・旅行・災害時の対応
普段と異なる状況では、薬の安全性と継続方法を事前に考えておきます。
Q43.発熱、下痢、嘔吐で食事や水分が取れません。
脱水は薬の副作用や血中濃度へ影響します。特にリチウム服用中は中毒の危険が高まるため、早めに処方医へ連絡してください。
自分だけで服用継続・中止を判断せず、症状、飲水量、尿量、服用薬を伝えて指示を受けます。強いふらつき、ろれつ困難、混乱があれば緊急受診を検討します。
Q44.旅行や海外出張では、薬をどう準備しますか?
日数に余裕を持って受診し、時差を含む服用時刻を相談します。薬は元の包装、お薬手帳、一般名を含む薬剤一覧とともに携帯します。預け荷物だけに入れず、必要量を手荷物にも分けます。
国によって持ち込み規制がある薬もあるため、大使館・領事館等の最新情報を確認します。旅行直前の大幅な薬の変更は避けるのが一般的です。
Q45.災害に備えて何を準備すればよいですか?
お薬手帳または薬剤一覧、連絡先、アレルギー、血中濃度測定が必要な薬、緊急時の注意点をまとめます。可能な範囲で薬に余裕がある状態を保ちますが、自己判断で大量にため込まないでください。
電子お薬手帳は便利ですが、停電や通信障害に備えて紙や画面保存も用意します。
Q46.重い副作用が起きた場合の公的な救済制度はありますか?
医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院が必要な程度などの重い健康被害が生じた場合、PMDAの医薬品副作用被害救済制度の対象になる可能性があります。
対象条件や必要書類があります。副作用を治療した医師、薬剤師、PMDAの相談窓口へ確認してください。
第8部 主治医・薬剤師への相談方法
治療へ主体的に参加することは、医師の指示に反することではありません。疑問や希望を共有して一緒に選びます。
Q47.診察で副作用をうまく説明できません。
次の4点をメモすると伝えやすくなります。①どの症状か、②いつ始まったか、③一日のいつ強いか、④生活で何に困るか、です。開始・増量・他の薬の変更との前後関係も記録します。
「眠い」だけでなく、「午前中に2時間眠り、車を運転できない」など具体的に伝えると、治療調整につながります。
Q48.主治医に薬を減らしたいと言うと、嫌がられませんか?
薬を減らしたい理由を共有することは、治療への大切な参加です。「副作用がつらい」「妊娠を考えている」「薬の目的が分からない」など、背景を具体的に伝えます。
医師から再発リスクの説明を受け、減量しない選択をする場合もあります。結論だけでなく、利益と不利益を一緒に検討する共同意思決定が重要です。
Q49.薬局は毎回同じところを利用した方がよいですか?
かかりつけ薬局を決めると、複数の医療機関の薬、重複、相互作用、飲み忘れ、副作用をまとめて確認しやすくなります。別の薬局を利用する場合も、お薬手帳や電子処方箋の情報を提示してください。
市販薬やサプリメントも含め、実際に使用しているものをすべて伝えることが重要です。
Q50.次の診察で、最低限何を確認すればよいですか?
次の5点が基本です。①それぞれの薬の目的、②期待する効果が現れる時期、③特に注意する副作用、④必要な検査、⑤飲み忘れ・体調不良時の対応です。
加えて、「自分が大切にしたい生活」と「避けたい副作用」を伝えます。薬の名前を暗記するより、処方目的と相談基準を理解することが重要です。
まとめ――薬について「分からない」と言えることが大切です
診察で確認したい5つのこと
- この薬は、何を目的に処方されていますか?
- 効果は、いつ頃、どのような変化として現れますか?
- 特に注意する副作用と、すぐ相談する症状は何ですか?
- どのような検査を、どのくらいの間隔で受けますか?
- 飲み忘れ、発熱・下痢、妊娠、旅行のときはどうしますか?
治療を理解することは、すべてを自分だけで判断することではありません。 自分では判断できない状況を見分け、医師、薬剤師、家族、支援者へ相談できることも、 双極症の治療を続けるための重要な力です。
参考文献・参考資料
- 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023
- 日本うつ病学会 双極症委員会. 一般の方・当事者向けガイド「双極症とつきあうために」Ver.11
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 患者向医薬品ガイド
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医師から処方された薬を使用する場合の注意
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 炭酸リチウム錠 電子化された添付文書(2026年6月改訂)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 炭酸リチウムの使用上の注意改訂について(医薬品・医療機器等安全性情報 No.430)
- 厚生労働省. 後発医薬品(ジェネリック医薬品)に関する基本的な情報
- 厚生労働省. 電子版お薬手帳
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医薬品副作用被害救済制度
医薬品情報は改訂されます。実際の使用にあたっては、最新の電子化された添付文書、 患者向医薬品ガイド、医師・薬剤師の説明をご確認ください。
医療情報としての注意
本記事は、双極症の治療薬について理解し、医療者へ相談するための一般的な情報です。 個別の薬剤選択、用量、服用方法、減量・中止、妊娠・授乳中の治療については、 主治医および薬剤師へご相談ください。
