双極症の動画図書館:薬剤の添付文書の「効能・効果」と「副作用」について

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 理事長

薬剤師

藤田剛(窓師)

薬剤の添付文書における「効能・効果」と「副作用」は、どのように記載されるのか

最初に知っておきたいこと
誰でもインターネットで閲覧できる薬剤の添付文書ですが、本来は医療関係者向けの情報です。 そのため、医学・薬学の専門知識があることを前提に、情報が簡潔に記載されています。 一般の方が読む場合は、記載だけで自己判断せず、疑問点を医師・薬剤師に確認することが大切です。

医療用医薬品の添付文書には、その医薬品に関する様々な情報が記載されていますが、今回は「効能又は効果」「用法及び用量」「副作用」「禁忌」など、 薬を安全かつ適切に使用するための重要な情報について解説します。 添付文書は専門用語で記載されているため、用語の知識を持たないと文意を正しく解釈できない場合があります。往々にして用語の意味は一般的に用いられている場合と異なる場合があります。

このコラムで説明した添付文書についての解説は主要な事項で、詳細については記述していません。

「副作用が心配な時」など体調に関わる疑問は必ず医師、薬剤師に相談してください。

目次

要点

  • 「効能又は効果」は、治験などの資料を審査し、国が承認した使用対象です。
  • 効能・効果に記載されていても、すべての人に同じように効くとは限りません。
  • 「副作用」は、治験、市販後調査、自発報告、海外情報、類薬情報などから集められます。
  • 副作用の頻度は、年齢、病状、投与量、投与期間、併用薬などによって変わります。
  • 「重大な副作用」は、頻度の高さだけでなく、重篤性や早期対応の必要性を重視した分類です。
  • 添付文書は、承認時に完成して終わる文書ではなく、市販後の情報に応じて改訂されます。

1.添付文書とは何か

医療用医薬品の「電子化された添付文書」、一般に「電子添文」と呼ばれる文書は、 医師・薬剤師などの医療関係者が、薬を適正に使用するための公的な基本情報です。

一方、患者・家族向けには、重大な副作用や注意点を比較的わかりやすく説明した 「患者向医薬品ガイド」などが用意されています。この二つは、対象、目的、記載内容が異なります。

添付文書には、主に次のような情報が記載されています。

  • どの病気や状態に使用するか
  • どの量を、どのように使用するか
  • どのような患者には使用できないか
  • 併用に注意する薬
  • 起こり得る副作用
  • 臨床試験の概要
  • 薬物動態や作用機序

なお、添付文書だけですべての情報を詳しく確認できるわけではありません。 必要に応じて、インタビューフォーム、審査報告書、 RMP(医薬品リスク管理計画)などを併せて確認します。

2.「効能又は効果」は、どのように決まるのか

「効能又は効果」は、国が承認した使用範囲

添付文書の「効能又は効果」には、製薬企業が自由に期待される効果を書くのではありません。 製薬企業が提出した品質・有効性・安全性に関する資料をPMDAが審査し、 厚生労働大臣が承認した内容が記載されます。

PMDA:独立行政法人医薬品医療機器総合機構

PMDAには一般の方向けのコンテンツも用意されていますので、合わせてごらんください。

https://www.pmda.go.jp/pnavi-01.html

対象となる範囲は、次のように細かく定められることがあります。

  • 対象となる疾患
  • 病型や重症度
  • 成人か小児か
  • 単独療法か併用療法か
  • 他の治療で効果不十分な場合か
  • 特定の検査結果を満たす患者か
  • 急性期治療か、再発予防・維持療法か

そのため、似た症状があるからといって、必ずしも添付文書上の効能・効果に含まれるとは限りません。

主な根拠となる情報

情報主な役割
非臨床試験動物や細胞などを用いて、作用、安全性、毒性などを検討します。
第Ⅰ相試験主に薬物動態、忍容性、安全性を検討します。
第Ⅱ相試験有効性の可能性や、適切な用量を探索します。
第Ⅲ相試験一定の患者集団で、有効性と安全性を検証します。
海外臨床試験・国際共同試験海外を含む患者データを評価します。
既存の医学・薬学情報ガイドライン、学術文献、類薬情報などを補足的に評価します。
ベネフィット・リスク評価期待される利益が、想定されるリスクに見合うかを総合的に判断します。

「効能がある」の意味を誤解しない

「効能又は効果」に記載されていることは、次の意味ではありません。

  • 使用すれば必ず治る
  • 全員に同じ程度効く
  • 他の薬より優れている
  • その薬だけで治療が完結する
  • 記載されていない病気には、医学的効果が一切ない

「効能又は効果」とは、一定の条件下で有効性と安全性が検討され、 利益とリスクを踏まえて、その疾患・状態への使用が承認された、という意味です。

研究や臨床経験から有用性が示唆されていても、承認申請と審査を経ていなければ、 添付文書の効能・効果には記載されません。 これは、一般に「適応外使用」と呼ばれる問題と関係します。

3.「副作用」は、どのように記載されるのか

まず「有害事象」と「副作用」を区別する

用語意味
有害事象薬を使用した後に起きた、好ましくない症状、検査値異常、病気などです。 薬との因果関係は問いません。
副作用有害事象のうち、薬との因果関係を否定できないものです。

たとえば、薬を服用している期間に風邪をひいた場合、 臨床試験上は「有害事象」として記録されることがあります。 しかし、その薬が風邪の原因とは限りません。

一方、自発報告では情報が限られることが多いため、 「薬が原因であることが完全に証明された症例」だけが集められているわけではありません。 安全性上の兆候を見逃さないため、因果関係がはっきりしない症例も含めて広く収集されます。

副作用情報の主な情報源

① 承認前の臨床試験

臨床試験では、参加者に生じた症状、病気、検査値異常などを幅広く収集します。 その後、次のような点を考慮して、薬との関連性を評価します。

  • 投与後に発生しているか
  • 中止すると改善したか
  • 再投与によって再発したか
  • 薬理作用から説明できるか
  • 用量が増えると起こりやすいか
  • 原疾患や併用薬で説明できないか
  • 類薬で同様の副作用が知られているか

② 製造販売後調査・製造販売後臨床試験

承認前の治験には、次のような限界があります。

  • 参加人数が限られている
  • 高齢者、妊婦、重い合併症がある人などが除外される場合がある
  • 併用薬が制限されている
  • 投与期間が実際の診療より短いことがある

市販後には、より多様な患者に使用されます。 そのため、治験では分からなかった副作用や、特定の患者群での注意点が明らかになることがあります。

③ 医療機関・患者・製薬企業などからの自発報告

医師、薬剤師、医療機関、製薬企業、患者などから、 「副作用が疑われる症例」がPMDAへ報告されます。 これらは、安全性シグナル、つまり新たなリスクの兆候を見つけるために重要です。

ただし、自発報告には通常、明確な分母がありません。 何人が薬を使用したのか、報告されなかった症例がどれだけあるのかが分からないため、 報告件数だけから発生率を計算することはできません。

④ 海外情報・学術文献・疫学研究

海外でのみ報告されている副作用でも、日本で同様の注意が必要と判断されれば、 添付文書に反映されることがあります。

⑤ 同じ系統の薬、類薬の情報

その薬自体で症例が十分に集まっていなくても、 同じ作用機序や同じ薬効群の薬で重大な副作用が知られている場合には、 同様の注意が必要と判断され、記載されることがあります。

4.「重大な副作用」と「その他の副作用」

重大な副作用

「重大な副作用」は、単に発生頻度が高い副作用を意味するものではありません。 発生した場合の重篤性、転帰、早期発見・早期対応の必要性などを考慮して、 特に注意が必要なものが記載されます。

たとえば、次のような副作用が含まれます。

  • 非常にまれでも生命に関わるもの
  • 入院が必要となるもの
  • 後遺症につながる可能性があるもの
  • 早期中止や検査によって重症化を防げるもの

その他の副作用

「その他の副作用」には、眠気、口渇、便秘、吐き気、発疹、検査値異常など、 その薬を使用する際に注意すべき症状が、発現部位や頻度別にまとめられています。

「その他」という名称は、「重要ではない」という意味ではありません。 症状の程度や患者の生活状況によっては、治療継続や日常生活に大きく影響することがあります。

5.副作用の「頻度」を読む際の注意

「頻度不明」は、「極めてまれ」という意味ではない

自発報告や市販後情報から見つかった副作用は、 薬を使用した人全体の人数が明確でないため、発生率を計算できないことがあります。 その場合は「頻度不明」と記載されます。

したがって、「頻度不明」は、多い、少ない、極めてまれ、のいずれも意味しません。 単に、現在の情報では頻度を適切に算出できない、という意味です。

薬同士で数字を単純に比較しない

A薬の眠気が10%、B薬が5%と記載されていても、 直ちに「A薬はB薬の2倍眠くなる」とは言えません。

臨床試験ごとに、次の条件が異なる可能性があるためです。

  • 対象疾患
  • 年齢や重症度
  • 投与量
  • 投与期間
  • 併用薬
  • 副作用の収集方法
  • 医師による因果関係評価
  • 集計した臨床試験の範囲

薬同士を比較するには、可能であれば同じ条件で直接比較した臨床試験などを確認する必要があります。

6.「効能・効果」と「副作用」は左右対称の情報ではない

項目主に示していること
効能又は効果国が承認した使用対象
臨床成績承認の根拠となった試験の概要
副作用使用時に注意・観察すべきリスク
警告・禁忌特に重大な危険を避けるための使用制限
RMP重要な既知のリスク、疑われるリスク、情報不足などと、市販後の安全対策

添付文書の副作用欄が長い薬ほど、必ずしも危険な薬というわけではありません。 発売から長期間が経過し、多くの患者に使用された薬では、 安全性情報が蓄積され、記載が詳しくなることがあります。

逆に、新しい薬は記載が少なくても、まだ市販後の使用経験が限られている可能性があります。

7.添付文書を読むときのチェックポイント

効能・効果について

  • 自分の診断名や病型が含まれているか
  • 急性期治療か、維持療法か
  • 単独療法か、併用療法か
  • 年齢、重症度、検査結果などの条件があるか
  • 「効能又は効果に関連する注意」がないか
  • 実際の処方目的を医師・薬剤師に確認したか

副作用について

  • よく起こる副作用か、まれでも重大な副作用か
  • 初期症状は何か
  • どの時期に起こりやすいか
  • 採血などの定期検査が必要か
  • 腎機能、肝機能、年齢、併用薬でリスクが変わるか
  • 症状が出た場合、すぐ受診するのか、次回相談でよいのか
  • 眠気などが、自動車運転や仕事に影響しないか

8.医師・薬剤師に確認するときの質問例

添付文書を読んで不安を感じた場合は、自己判断で中止・減量せず、 次のように具体的に相談すると、必要な情報を得やすくなります。

  • 「この薬は、私の場合は何を目的に処方されていますか」
  • 「効果は、いつ頃から、何を目安に判断しますか」
  • 「私が特に注意すべき副作用はどれですか」
  • 「この症状が出たら、すぐ連絡した方がよいですか」
  • 「採血や心電図などの検査は必要ですか」
  • 「眠気が出た場合、服用時間の調整はできますか」

9.一般の方に役立つ関連資料

  • 患者向医薬品ガイド
    患者・家族向けに、重大な副作用や注意点を比較的わかりやすく説明した資料です。
  • 薬剤情報提供文書
    薬局でもらう説明書です。実際に処方された用量や服用方法に合わせて作成されます。
  • インタビューフォーム
    添付文書の記載内容の背景や設定根拠を詳しく確認するための、医療関係者向け資料です。
  • 審査報告書
    PMDAが有効性・安全性をどのように評価したかを確認できます。
  • RMP(医薬品リスク管理計画)
    重要な既知のリスク、疑われるリスク、情報が不足している点と、 市販後に行う調査・安全対策をまとめた資料です。

まとめ

「効能又は効果」は、薬が必ず効くことを保証する欄ではなく、 国が承認した使用範囲を示す欄です。

「副作用」は、実際に必ず起こる症状の一覧ではなく、 薬を安全に使用するために注意・観察すべきリスクをまとめた欄です。

添付文書は、薬を怖がるための文書でも、安全を保証する文書でもありません。 薬の利益とリスクを理解し、患者ごとの状態に応じて医師・薬剤師と相談するための、 専門的な情報基盤と考えるのが適切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断、治療、服薬の中止・変更については、 主治医または薬剤師に相談してください。

参考資料

  1. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「患者向医薬品ガイド」
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/guide-for-patients/0001.html
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品の承認審査」
    https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/0001.html
  3. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「副作用が疑われる症例報告に関する情報」
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/suspected-adr/0005.html
  4. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品リスク管理計画(RMP)」
    https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html
  5. 厚生労働省「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2704&dataType=1
  6. 厚生労働省「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領の留意事項について」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5973&dataType=1

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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