第3回躁状態とは?“感情”より“生活の変化”で見る
双極症の動画図書館|第3回 解説コラム
NPO法人ネット心理教育ピアサポート 木野内南(布団ちゃん)
今回のテーマは、躁状態とは何かです。 双極症では、うつ状態だけでなく、躁状態や軽躁状態が重要になります。 躁状態は単に「明るい」「元気」「前向き」という意味ではありません。「元気なこと」と「躁状態」は同じではありません。 躁状態を考えるときは、気分の高さだけでなく、睡眠・行動・判断・対人関係・現実感の変化を見ることが大切です。ふだんの自分と比べて、気分・睡眠・行動・判断が大きく変わり、生活や人間関係に影響が出ているかどうかが大切な視点です。 このコラムでは、第3回動画のスライドに沿って、躁状態の見方をやさしく整理します。
このコラムは、一般的な情報提供を目的とした心理教育です。 診断や治療方針を決めるものではありません。 気になる症状がある場合は、自己判断で薬を変えず、主治医や医療機関にご相談ください。
動画はこちら
いきなり結論

躁状態を考えるとき、ポイントは喜怒哀楽そのものではなく、強さ・続き方・生活への影響です。 うれしい、楽しい、怒る、悲しいという感情は誰にでもあります。 それだけで躁状態とは言えません。
しかし、気分の高まりやイライラが強く続き、自分でブレーキをかけにくくなり、生活・仕事・人間関係に影響が出る場合は注意が必要です。
本人が自覚しにくく、「まだ大丈夫」と感じてしまうこともあります。
この動画とコラムは、自分を理解するためのヒントです。 「これは躁状態だ」と自分だけで決めるためのものではありません。 また、薬を自己判断で中止したり、量を変えたりすることは避けてください。
大切なのは、気になる変化を具体的にメモし、主治医に伝えることです。 「眠らなくても平気だった」「予定を入れすぎた」「周囲からいつもと違うと言われた」など、生活の変化を伝えると診療の助けになります。
普通の喜怒哀楽との違い

うれしいことがあって明るくなる。腹が立って怒る。 こうした感情は自然なものです。 躁状態を疑うときは、いつもより強いか、続いているか、周囲が困っているかを見ることが役立ちます。
| 見るポイント | 確認したいこと |
|---|---|
| 強さ | いつもの自分より、気分の高まりやイライラがかなり強いか |
| 持続 | 一時的ではなく、数日以上続いているか |
| 影響 | 仕事・家庭・人間関係・金銭面に影響が出ているか |
サインは、睡眠・行動の変化・現実感

躁状態は、気分だけでなく睡眠・行動・現実感に表れやすいことがあります。 たとえば、寝なくても平気、眠る必要を感じにくい、予定や作業、SNS、外出、連絡が増えて止まりにくい、といった変化です。
躁状態が強いときには、現実感がゆらぐこともあります。 妄想や幻聴などの精神病症状が疑われる場合、本人を責めず、早めに主治医や医療機関へ相談することが大切です。
受診メモに入れたいこと
- 睡眠時間が何時間くらいになったか
- 眠らなくても動ける感覚があったか
- 予定・作業・SNS・外出・連絡が増えたか
- 周囲から「いつもと違う」と言われたか
- 現実感のゆらぎや、強い不安・疑い深さがあったか
判断と対人関係への影響

躁状態では、買い物、契約、転職、引っ越しなど、大きな判断を急ぎやすくなることがあります。 また、話しすぎる、強く言いすぎる、急に距離を詰めるなど、対人関係にも影響が出ることがあります。
その場では「良いアイデア」「今すぐやるべきこと」に感じても、後から金銭・仕事・家族関係に大きな影響が出ることがあります。 大きな決断は、いったん保留し、主治医や信頼できる人に相談することが役立ちます。
- 睡眠:寝る時間が短くても動けた
- 活動:予定や連絡が増えた
- 頭の回転:考えやアイデアが止まりにくい
- 行動:買い物や決断が大きくなった
まとめ

今回の要点
- 躁状態は、性格や元気さの問題ではありません。
治療や相談が必要な症状として見ることが大切です。 - 違いは、強さ・持続・制御しにくさ・生活への影響です。
テンションの高さだけで判断しません。 - 本人は気づきにくいことがあります。
眠らなくても平気、大きな決断、危険な行動、人間関係のトラブルがある時は早めに相談してください。
家庭内だけで何とかしようとして苦しくなる前に、主治医や医療機関につながることが大切です。 本人を責めるのではなく、具体的な変化を共有することが、早めの対処につながります。
参考文献・参考資料

本シリーズは、双極症に関する心理教育を目的とした一般向け情報として作成しています。 詳しく知りたい方は、以下の資料も参考になります。
- 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
- 日本うつ病学会. 一般の方・当事者向けガイド「双極症とつきあうために」.
- National Institute of Mental Health. Bipolar Disorder.
- Colom F, Vieta E, et al. A randomized trial on the efficacy of group psychoeducation in the prophylaxis of recurrences in bipolar patients whose disease is in remission. Arch Gen Psychiatry. 2003;60:402-407.
もっと学びたい方へ
双極症については、1本の動画だけですべてを理解するのは難しい部分があります。 この「双極症の動画図書館」では、当事者向けの心理教育を短い動画で少しずつ学べる形にしています。
関連コラムや今後の動画も、気になるところから無理のない範囲でご覧ください。
次回は、「軽躁状態とは?」をテーマに扱います。 軽躁状態は、躁状態ほど目立たないことがあり、「調子がいいだけ」に見えやすいサインです。
第4回では、その見逃されやすさと、早めに気づくためのポイントを整理します。
最後に
躁状態は、本人の性格や元気さの問題ではありません。 気分が高いかどうかだけでなく、睡眠・行動・判断・対人関係・現実感にどのような変化が出ているかを見ることが大切です。
気になる変化がある場合は、自己判断で抱え込まず、主治医に相談してください。 「いつから」「どのくらい」「生活にどんな影響が出たか」をメモしておくと、診察で伝えやすくなります。
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