第6回 双極症の気分の4つの状態を知ろう

双極症の動画図書館|第6回 解説コラム

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 木野内南(布団ちゃん)

今回のテーマは、「気分の4つの状態を知ろう」です。

双極症というと、「躁とうつを繰り返す病気」というイメージがあるかもしれません。もちろん、躁・軽躁とうつは、双極症を理解するうえで大切な視点です。

ただ、実際の気分の波は、単純に「上がる」「下がる」だけでは説明しきれないことがあります。気分は落ちているのに、焦りやイライラが強いこともあります。症状が穏やかな時期にも、小さな揺れや生活上の注意点が残ることがあります。

このコラムでは、第6回動画のスライドに沿って、双極症で見られる「躁・軽躁状態」「うつ状態」「混合状態」「寛解状態」の4つを整理します。自分で診断を決めるためではなく、今の状態を言葉にし、主治医や支援者に相談しやすくするためのヒントとして読んでください。

このコラムは、一般的な情報提供を目的とした心理教育です。診断や治療方針を決めるものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断で薬を変えず、主治医や医療機関にご相談ください。

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いきなり結論——双極症の気分の状態は、躁とうつだけではない

双極症では、躁・軽躁状態、うつ状態、混合状態、そして寛解状態を区別して考えます。

ここで大切なのは、寛解状態も双極症の気分の状態の一つとして考えることです。症状が穏やかな時期は、「もう何も考えなくてよい時期」ではありません。自分の波を理解し、次の変化に備えるための大切な時期でもあります。

また、双極症の波は、この4つが必ず順番に来るわけではありません。気分だけでなく、睡眠、活動量、判断、生活への影響なども一緒に見ていくことが大切です。

双極症には4つの状態があります

双極症には4つの状態があります

双極症の状態は、次の4つに分けて整理すると理解しやすくなります。

  • 躁・軽躁状態:心のエネルギーが上がりすぎる状態。
  • うつ状態:心のエネルギーが下がり、動きにくくなる状態。
  • 混合状態:落ち込みと焦り・イライラ・衝動性が重なる状態。
  • 寛解状態:主な症状が穏やかな状態。

この4つは、「今の自分はこれだ」と一人で決めつけるためではありません。分かりづらい時ほど、生活の変化を具体的に主治医へ伝えることが役立ちます。

躁・軽躁は“良い調子”に見えることがあります

躁・軽躁は“良い調子”に見えることがあります

躁状態や軽躁状態は、本人にも周囲にも「元気」「調子がいい」「前向きになった」と見えることがあります。特に軽躁では、最初は問題として気づかれにくいことがあります。

たとえば、睡眠時間が短くても平気に感じる。予定をどんどん入れる。話が止まらない。買い物、契約、SNS投稿など、普段より行動が大きくなる。こうした変化が見られることがあります。

本人は「元気なだけ」「調子がいいだけ」と感じることもあります。そのため、周囲の人が先に変化に気づくこともあります。ここで大切なのは、責めることではなく、「いつもと違う変化」として一緒に確認することです。

うつと混合状態は、つらさの形が違います

うつと混合状態は、つらさの形が違います

うつ状態では、動けなさ、楽しめなさ、疲れやすさ、自分を責める気持ちなどが出ることがあります。これは怠けや甘えではありません。病気の症状として、生活に影響が出ている可能性があります。

一方で、混合状態は少し分かりにくい状態です。気分は落ちているのに、焦り、イライラ、衝動性が強くなるなど、躁の症状とうつの症状が混ざり合うことがあります。

「落ち込んでいるのに、じっとしていられない」「つらいのに、行動が止まりにくい」「眠れていないのに、焦りが強い」などの変化があるときは、気分だけで判断せず、睡眠や行動の変化もあわせて主治医に伝えてください。

寛解状態は“症状が全くない状態”ではありません

寛解状態は“症状が全くない状態”ではありません

寛解状態とは、主な症状が穏やかな状態のことです。「双極症が治った」「もう注意しなくてよい」という意味ではありません。

寛解状態でも、小さな気分や体調の揺れは起こります。少し疲れやすい日、少し眠りにくい日、少し気分が沈む日があっても、それだけで再発と決めつける必要はありません。

ただし、いつもの自分との違いが続くときは注意が必要です。薬を飲みながら安定している場合もあります。薬を続けるかどうかは、自分一人で判断せず、必ず主治医と相談してください。

主治医に伝えるときは、気分だけでなく生活の変化も

今の状態が分かりづらいときは、次のような点を短くメモしておくと、受診時に相談しやすくなります。

  • 睡眠:何時に寝て、何時に起きたか。眠らなくても平気な感じがあるか。
  • 活動量:予定、外出、仕事、家事、SNS投稿が普段より増えたか、減ったか。
  • 判断:買い物、契約、対人関係で急ぎすぎていないか。
  • 気分:落ち込み、焦り、イライラ、高揚感がどのくらいあるか。
  • 生活への影響:仕事、家事、連絡、食事、入浴、通院にどんな影響が出ているか。

完璧に記録しなくて大丈夫です。思い出せる範囲で、「いつもと違うこと」を具体的に伝えることが大切です。

まとめ

まとめ:4つの状態は、自分ではわかりづらいこともある

今回の要点

  1. 双極症の気分の状態は、躁とうつだけではない
    躁・軽躁状態、うつ状態、混合状態、寛解状態の4つに分けて考えると、波を整理しやすくなります。
  2. 4つの状態は、必ず順番に来るものではない
    人によっても、時期によっても、現れ方は変わります。
  3. 寛解状態も、双極症の気分の状態の一つ
    症状が穏やかな時期も、生活リズムや相談先を整える大切な時間です。
  4. 4つの状態は、相談のための言葉
    自己判断で決めつけず、睡眠・活動量・判断・生活への影響を主治医に具体的に伝えましょう。

次回は、「いつもと違う元気に気づく」というテーマで、軽躁や躁の早期サインをもう少し具体的に見ていきます。

参考文献・参考資料

本シリーズは、双極症に関する心理教育を目的とした一般向け情報として作成しています。詳しく知りたい方は、以下の資料も参考になります。

  1. 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
  2. 日本うつ病学会 双極症委員会. 双極症とつきあうために Ver.11. 2024.
  3. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision. 2022.
  4. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 病気について(F1).
  5. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 双極症全般について(B1).
  6. Colom F, Vieta E. 双極性障害の心理教育マニュアル. 秋山剛, 尾崎紀夫 監訳. 医学書院; 2012.

もっと学びたい方へ:双極症の動画図書館シリーズの紹介

双極症については、1本の動画だけですべてを理解するのは難しい部分があります。

  • この「双極症の動画図書館」では、当事者向けの心理教育を短い動画で少しずつ学べる形にしています。関連コラムや今後の動画も、ぜひあわせてご覧ください。
  • 双極症の動画図書館目録

最後に

双極症の気分の波は、「躁とうつ」だけでは説明しきれないことがあります。だからこそ、躁・軽躁、うつ、混合、寛解という言葉を知っておくことは、自分の状態を整理する助けになります。

ただし、4つの状態は、自分を責めたり、自己判断で診断したりするための言葉ではありません。主治医や支援者と一緒に、今の状態を理解するための言葉です。

気分だけでなく、睡眠、活動量、判断、生活への影響を少しずつ言葉にしていきましょう。それが、双極症とつきあううえでの大切な手がかりになります。

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この記事を書いた人

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