双極症の動画図書館:第13回朝の光と生活リズム――無理なく「一日の始まり」を整える

双極症の動画図書館|第13回 解説コラム

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 公認心理師

木野内南(布団ちゃん)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート

理事長 薬剤師 藤田剛(窓師)

双極症では、気分の波だけでなく、睡眠、食事、活動のタイミングなど、毎日の生活リズムも大切な手がかりになります。 第13回では、朝の光・食事・活動開始を、生活リズムを整えるための小さな習慣として考えます。

ポイントは、完璧な朝を作ることではありません。 不調の日にも戻りやすい「朝の流れ」を、できる範囲で持っておくことです。

目次

診断は医療機関で

この記事は、双極症について学ぶための一般的な心理教育情報です。 診断や治療方針の決定は、主治医や医療機関で行われます。 自己判断で薬を変更・中止しないでください。

強い不眠、著しい気分の高まりや落ち込み、自傷他害のおそれ、生活に大きな支障が出ている場合は、 心理教育だけで対応しようとせず、早めに主治医、医療機関、地域の相談窓口に相談してください。

双極症の動画図書館について

NPO法人ネット心理教育ピアサポートでは、双極症の方に信頼できる情報をYoutube動画、Web解説コラムとして総合的に提供する目的で「双極症の動画図書館」の構築を進めています。詳細は以下のコラムをご覧ください。

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この記事でわかること

  • 朝の光が生活リズムの合図になる理由
  • 食事や活動開始の時間をそろえる意味
  • 不調の日にも続けやすい「小さな朝の習慣」
  • 生活リズムが乱れたときに自分を責めず相談につなげる考え方

動画はこちら

第13回「朝の光と生活リズム」をYouTubeで見る

いきなり結論:朝の光・食事・活動開始は、生活リズムを整える手がかりになります

朝の過ごし方は、体内時計と一日のリズムに影響します。 起床後に光を浴び、食事や活動を始める時間を整えることは、生活リズムを安定させる助けになります。

ただし、「毎朝きちんとできなければだめ」と考える必要はありません。 大切なのは、無理に頑張ることではなく、毎日続けやすい小さな習慣を選ぶことです。

朝の光・食事・活動開始は、生活リズムを整える手がかりになります。

生活リズムを整える目的は「自分を責めること」ではありません

双極症では、睡眠や生活リズムの乱れが気分の波と関係しやすいことがあります。 そのため、朝の過ごし方を整えることは、セルフケアの一部になります。

ただし、生活リズムの話は、ともすると「ちゃんとしなければ」という自己責任論に聞こえてしまうことがあります。 ここで大切なのは、自分を責めることではなく、変化に早めに気づき、必要なときに相談につなげることです。

体内時計は、一日のリズムを作っています

診断と治療方針は、主治医・医療機関と相談して決めます。

人の体には、睡眠、食事、活動のタイミングを整える仕組みがあります。 これを一般に「体内時計」と呼びます。 体内時計とは、体の中で一日のリズムを作る仕組みのことです。

このリズムが大きく乱れると、眠りや気分も不安定になりやすくなります。 双極症では、気分そのものだけでなく、こうしたリズムを守る視点も大切です。 日本うつ病学会の一般向け資料でも、双極症とつきあううえで生活リズムや睡眠への注意が扱われています。

朝の光は、リズムを戻す合図になります

外に出られない日も、カーテンを開けるだけで始められます。

起きた後に光を浴びることで、「一日が始まった」という合図を体に届けることができます。 厚生労働省の睡眠ガイドでも、起床後に朝日の光を浴びることが睡眠・覚醒リズムを整える助けになると説明されています。

外に出るのが難しい日は、カーテンを開けるだけでも大丈夫です。 ベランダに出る、窓際で少し過ごす、玄関先まで出るなど、自分の状態に合わせて小さく始めます。

なお、ここでいう「朝の光」は、日常生活の中でリズムを整えるための手がかりです。 強い光を使う専門的な治療を自己判断で行うこととは別です。 気分の高まりや不眠がある場合は、主治医に相談してください。

食事と活動開始の時間も手がかりです

朝食や最初の活動の時間も、生活リズムの手がかりになります。

朝食や最初の活動の時間がそろうと、一日のリズムを作りやすくなります。 起きてすぐに完璧に動く必要はありません。 「同じ流れ」を少し作ることが、生活の安定につながります。

たとえば、次のような小さな流れです。

朝の合図目的
カーテンを開ける、窓際に座る、短く外に出る一日の始まりを体に知らせる
食事水を飲む、軽く朝食をとる、同じ時間帯に食べる生活の区切りを作る
活動開始顔を洗う、着替える、予定を確認する日中のリズムにつなげる

リズムづくりは、頑張りすぎないことが大切です

厳しすぎるルールより、続けやすい小さな習慣を選びます。

生活リズムを整えることは大切ですが、厳しすぎるルールは続きにくくなります。 不調の日は、最低限の合図だけ残すことでも十分です。 続けられる形に調整することも、セルフケアの一部です。

その日の状態朝の習慣の例考え方
かなりしんどい日カーテンだけ開ける。水を一口飲む。最低限の合図を残す。
少し動ける日窓際で過ごす。簡単な朝食をとる。できる範囲で流れを作る。
余裕がある日短い散歩、身支度、予定確認をする。整える習慣を少し広げる。

うまくできなかった日があっても、失敗ではありません。 大切なのは、次の日に戻りやすい形を持っておくことです。

睡眠や生活リズムが乱れたときは、記録して相談する

朝の光や食事を整えても、不眠や過眠、昼夜逆転が続くことがあります。 その場合は、生活の工夫だけで抱え込まず、主治医に相談してください。

相談するときは、次のように短く記録しておくと伝えやすくなります。 日本うつ病学会の資料ページには、睡眠覚醒リズム表やライフチャートなど、記録に役立つ資料も掲載されています。

記録すること書き方の例
起きた時間7:30、11:00など
朝の合図カーテンを開けた、朝食を食べた、外に出た
日中の状態眠気が強い、活動できた、焦りが強い
気分の変化落ち込み、イライラ、元気すぎる感じなど

まとめ:朝の小さな習慣が、生活リズムの土台になります

朝の小さな習慣が、生活リズムの土台になります。
  • 朝の光、食事、活動開始は、生活リズムを整える手がかりになります。
  • 大切なのは、完璧な朝の起床ではなく、戻りやすい朝の流れを持つことです。
  • 外に出られない日は、カーテンを開けるだけでも始められます。
  • 不調の日は、最低限の合図だけ残すことでも十分です。
  • 睡眠の乱れが続く場合は、一人で何とかしようとせず、主治医に相談しましょう。

次回:予定を入れすぎない工夫

もっと学びたい方へ

ネット心理教育ピアサポートでは、双極症について当事者・家族向けに学べる動画や資料を公開しています。 気になるところから、無理のない範囲でご覧ください。

参考文献・参考資料

  1. 日本うつ病学会. ガイドライン検討委員会:ガイドライン掲載ページ.
  2. 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
  3. 日本うつ病学会 双極症委員会. 双極症とつきあうために Ver.11. 2024.
  4. 厚生労働省. 睡眠対策.
  5. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
  6. 日本うつ病学会. 一般の方向け資料:睡眠覚醒リズム表、ライフチャート、ソーシャル・リズム・メトリック等.
  7. Melo MCA, et al. Chronotype and circadian rhythm in bipolar disorder: A systematic review. Sleep Medicine Reviews. 2017.
  8. Bottai T, et al. Interpersonal and Social Rhythm Therapy (IPSRT). Encephale. 2010.
  9. Colom F, Vieta E. 双極性障害の心理教育マニュアル. 秋山剛, 尾崎紀夫 監訳. 医学書院; 2012.
  10. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 当事者ができること(F3).

※本記事は心理教育を目的とした一般情報です。診断・治療方針は主治医と相談してください。

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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