新しく制定された「睡眠障害」標榜とは?受診先が分かりやすくなる診療科名のルール

精神科医療・制度を知る

NPO法人ネット心理教育ピアサポート
理事長 薬剤師 藤田剛(窓師)
2026年6月1日から、医療機関の睡眠障害についてのルールが変更されたと聞いたことがある人がいらっしゃるかもしれません。このコラムでは、医療機関における睡眠障害の表記のルール、すなわち「睡眠障害」の標榜についての解説をします。
「睡眠障害」の標榜とは、医療機関が「睡眠障害内科」「精神科(睡眠障害)」などの名称を、正式な診療科名として看板やウェブサイトなどに掲げることです。
その目的は、睡眠に悩む人が「どこを受診すればよいのか」を判断しやすくし、適切な医療機関につながりやすくすることです。
※ 既に精神科などにおいて睡眠障害の治療を受けている方については特に関係ないと考えて大丈夫です。
この記事のポイント
- 2026年6月1日から、「睡眠障害」を既存の診療科名と組み合わせて標榜できるようになりました。
- 「睡眠障害科」という単独の診療科が新設されたわけではありません。
- 標榜できることと、睡眠専門医・専門医療機関であることは別です。
- 双極症では、睡眠の変化を気分や活動量の変化と一緒に見ることが大切です。
2026年6月から何が変わったの?
厚生労働省は医療法施行令を改正し、2026年6月1日から、診療科名と組み合わせて広告できる疾病・病態の名称に「睡眠障害」を追加しました。
従来、この区分には「感染症」「腫瘍」「糖尿病」「アレルギー疾患」が定められていました。今回、そこに「睡眠障害」が加わった形です。
より正確な言い方
「睡眠障害という新しい診療科ができた」というより、「睡眠障害」という言葉を、既存の診療科名と組み合わせて正式に表示できるようになったと考えると分かりやすいでしょう。
どのような診療科名が考えられる?
厚生労働省の検討資料や日本睡眠学会の要望では、次のような表示例が示されています。
| 表示例 | 意味 |
|---|---|
| 睡眠障害内科 | 内科と「睡眠障害」を組み合わせた診療科名 |
| 内科(睡眠障害) | 内科のなかで睡眠障害を診療対象として示す表記 |
| 睡眠障害精神科 | 精神科と「睡眠障害」を組み合わせた診療科名 |
| 精神科(睡眠障害) | 精神科のなかで睡眠障害を診療対象として示す表記 |
実際にどの名称を掲げるかは、医療機関の診療内容や体制によって異なります。また、医学的に不合理な組み合わせは認められません。
なぜ「睡眠障害」の標榜が必要だったの?
睡眠の問題は、さまざまな診療科にまたがります。
たとえば、不眠症は内科や精神科、睡眠時無呼吸は呼吸器内科や耳鼻咽喉科、ナルコレプシーなどの過眠症は脳神経内科や精神科、小児の睡眠問題は小児科などで診療されることがあります。
そのため、患者側から見ると、「自分はどの診療科を受診すればよいのか分からない」という問題がありました。
標榜の主な目的
- 睡眠の悩みを相談できる医療機関を見つけやすくする
- 必要な診断や治療へ早くつながれるようにする
- 患者が自分の症状に合った医療機関を選びやすくする
- 睡眠医療に関する知識や技術の普及を後押しする
睡眠障害は「眠れない」だけではありません
睡眠障害は、睡眠と覚醒に関連する多くの病気の総称です。日本睡眠学会は、代表的な睡眠障害を次のように整理しています。
| 主な分類 | 例・主な症状 |
|---|---|
| 不眠症 | 寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目が覚める |
| 睡眠関連呼吸障害 | 閉塞性睡眠時無呼吸など。いびき、無呼吸、日中の眠気 |
| 中枢性過眠症 | ナルコレプシー、特発性過眠症など。強い日中の眠気 |
| 概日リズム睡眠・覚醒障害 | 体内時計と社会生活の時間がずれ、望む時間に眠れない・起きられない |
| 睡眠時随伴症 | 睡眠中の異常行動、夢に合わせて大声を出す・動くなど |
| 睡眠関連運動障害 | むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害など |
同じ「眠れない」という訴えでも、背景にある病気や必要な検査は異なります。睡眠障害を標榜する医療機関が増えることで、相談の入口が分かりやすくなることが期待されます。
「睡眠障害」と書いてあれば、すべて診てもらえる?
ここは注意が必要です。
診療科名に「睡眠障害」と表示できることは、その医療機関がすべての睡眠障害に対応できることや、睡眠専門医が必ず在籍していることを意味するものではありません。
「標榜」と「専門性の認定」は別です。
- 標榜診療科名:医療機関が正式に掲げられる診療科名
- 専門医資格:学会などが医師の専門的な知識・経験を認定する制度
- 専門医療機関:検査設備や人員、診療実績などに基づく施設認定
受診前には、医療機関のウェブサイトなどで、次の点を確認すると安心です。
- 自分が困っている症状を診療対象としているか
- 睡眠時無呼吸、過眠症、不眠症など、どの病気に対応しているか
- 睡眠検査を実施できるか、必要時に専門施設へ紹介してもらえるか
- 担当医の専門領域や資格が示されているか
- 精神科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科などとの連携があるか
双極症の方は「睡眠だけ」で判断しないことも大切
双極症では、睡眠時間の変化が気分の波と関係することがあります。
とくに、睡眠時間が短くなったのに疲れない、活動量や予定が増える、話す量が増える、考えが次々に浮かぶ、いらだちが強くなる、といった変化が重なっている場合は、躁・軽躁状態の兆候である可能性があります。
この場合、「眠れないから睡眠薬を相談する」という視点だけでは十分でないことがあります。睡眠、気分、活動量、判断や行動の変化を一緒に記録し、現在の主治医にも伝えることが大切です。
睡眠の専門医療機関を受診する場合も、双極症の治療を自己判断で中断したり、主治医への相談なしに薬を変更したりしないようにしましょう。
受診を考える目安
次のような状態が続き、日中の生活に影響している場合は、かかりつけ医や睡眠を診療する医療機関への相談を検討してください。
- 眠れない、途中で何度も目が覚める状態が続く
- 十分寝ているはずなのに、日中の強い眠気がある
- 大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された
- 朝起きられず、学校や仕事に支障が出ている
- 睡眠中に大声を出す、激しく動くなどの行動がある
- 睡眠時間の急な変化と、気分・活動量の変化が重なっている
まとめ
「睡眠障害」の標榜は、睡眠に悩む人が相談先を見つけやすくするための、新しい診療科名の表示ルールです。
ただし、「睡眠障害科」という単独の診療科が新設されたわけではなく、標榜が睡眠専門医や全疾患への対応を保証するわけでもありません。
診療科名を受診先選びの入口として活用しながら、医療機関の対応疾患、検査、専門性、連携体制も確認することが大切です。
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参考資料
- 厚生労働省.標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について.2026年5月26日.
- 厚生労働省医政局長.広告可能な診療科名の改正について(医政発0529第10号).2026年5月29日.
- 厚生労働省.第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会 資料.2026年3月6日.
- 日本睡眠学会.睡眠障害とは―睡眠障害の種類―.
- 日本うつ病学会 双極症委員会.双極症とつきあうために.2024年改訂.
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療については、医師などの医療専門職へご相談ください。
制度情報確認:2026年7月6日
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