第8回 双極症のうつ状態のサインを知るーー“気分”だけでなく、生活の変化で見る

双極症の動画図書館|第8回 解説コラム

うつ状態のサインを知る
――“気分”だけでなく、生活の変化で見る

双極症のうつ状態は、「悲しい」「落ち込む」だけでなく、 楽しめなさ、動けなさ、疲れやすさ、睡眠や食欲の変化として現れることがあります。 第8回では、うつ状態のサインを、気分・生活・体調の変化から見ていきます。

大切なのは、つらさを「怠け」や「甘え」と決めつけないことです。 いつから、何が、どのくらい変わったのかを整理して、主治医に伝える材料にしていきましょう。

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双極症の動画図書館 Web解説コラム うつ症状? それはうつ病? 双極症? それとも… ①(うつの症状はうつ病以外でもいろいろな要因で起こります)

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診断は医療機関で

この記事でお伝えするのは、双極症について学ぶための一般的な心理教育情報です。 診断や治療方針の決定は、主治医や医療機関で行われます。 自己判断で薬を変更・中止しないでください。

苦しさが強いとき、強い不眠が続くとき、気分の高まりや落ち込みが大きいとき、 自分を傷つけたい気持ちや「消えたい」という考えが強いときは、 主治医、医療機関、地域の相談窓口に早めに相談してください。 緊急性が高い場合は、救急や身近な安全確保を優先してください。

相談先を探したいときは、厚生労働省の 「まもろうよ こころ」 も参考になります。

この記事でわかること

  • 双極症のうつ状態を「気分」だけで見ない理由
  • 楽しめなさ、動けなさ、疲れやすさというサイン
  • 睡眠・食欲・体重など、体調に出るサイン
  • 自分を責める気持ちが強いときの相談の目安
  • 主治医に伝えるためのメモの作り方

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いきなり結論:うつ状態は“気分”だけでなく、生活の変化で見ます

うつ状態というと、「気分が落ち込む」「悲しい」というイメージが先に浮かぶかもしれません。 しかし実際には、落ち込みだけでなく、楽しめなさ、動けなさ、疲れやすさとして出ることがあります。

また、睡眠、食欲、考える力、連絡、家事や仕事への影響も大切なサインです。 つらいときほど、自分を責めてしまいがちです。 けれども、こうした変化を「怠け」や「甘え」と決めつけず、 そのまま主治医に伝えることが大切です。

気分のサイン:うつ状態は、悲しみだけではありません

うつ状態は、「悲しい状態」と考えられがちです。 もちろん、気分が落ち込む、何をしても楽しく感じられない、という形で現れることがあります。

一方で、「悲しい」というより、心のエネルギーが下がったように感じる人もいます。 何もしたくない。関心がわかない。好きだったことも楽しめない。 このような形で現れることもあります。

そのため、「悲しくないから、うつではない」と決めつけないことが、 うつ状態のサインを見逃さないポイントです。

よくあるイメージ実際に起こりうるサイン
悲しい、涙が出る気分が沈む、つらさが続く
落ち込んでいる心のエネルギーが下がった感じがする
何か嫌なことがあった理由がはっきりしなくても、楽しめなさや関心の低下が続く

生活のサイン:動けなさ・疲れやすさは重要なサインです

うつ状態のサインは、生活の中にも現れます。 朝起きられない。着替えや入浴が重い。家事や仕事に手がつかない。 こうした変化は、本人にとってとてもつらいものです。

さらに、考えるのに時間がかかる、連絡を返せない、小さなことも決められない、ということもあります。 周囲からは「サボっている」「やる気がない」と見えてしまうこともありますが、 これは意思の弱さではなく、うつ状態のサインかもしれません。

生活の場面見えやすいサイン主治医に伝える言い方の例
朝・身支度起きられない、着替えや入浴が重い「朝起きるまでに時間がかかり、入浴も週○回に減りました」
家事・仕事手がつかない、途中で止まる「家事や仕事に取りかかれず、生活に支障が出ています」
連絡・判断返信できない、決められない「返信や小さな判断にも時間がかかります」

体調のサイン:睡眠・食欲・体重の変化も見ていきます

うつ状態は、こころだけでなく身体にも現れることがあります。 睡眠では、眠れなくなる人もいれば、寝すぎてしまう人もいます。 食欲や体重も、減る場合だけでなく、増える場合があります。

重要なのは、「正しいパターン」を探すことではなく、 自分にとって、いつもと何が違うかを見ることです。 睡眠時間、食欲、体重、活動量などを短くメモしておくと、診察で相談しやすくなります。

体調の項目変化の例メモの例
睡眠眠れない/寝すぎる「寝つきに2時間かかる」「12時間寝ても疲れる」
食欲食べられない/食べすぎる「朝食を抜く日が増えた」「夜に食べすぎる」
体重減る/増える「2週間で○kg変化した」
活動量横になる時間が増える、外出が減る「外出が週○回から○回に減った」

自分を責める気持ちが強い時は要注意です

うつ状態では、自分を責める気持ちが強くなることがあります。 「自分はだめだ」「迷惑をかけている」「消えてしまいたい」。 このような考えが強くなるときは、ひとりで抱えないでください。

つらさが強いときは、早めに主治医や相談先につながることが大切です。 自分を傷つけたい考えが出る、危険を感じる、今すぐ安全が心配というときは、 緊急の相談や受診が必要です。 本人だけでなく、周囲もこのサインを見逃さないようにしてください。

相談先を探す場合は、厚生労働省の 「まもろうよ こころ」 も参照できます。

主治医に伝えるためのメモ

うつ状態のサインに気づいたら、完璧な記録を作る必要はありません。 まずは、いつから、何が変わったか、どのくらい困っているかを短く残します。

項目書き方の例
いつから「6月上旬から」「2週間前から」
気分「落ち込みが続く」「楽しい感じがしない」
生活「朝起きられない」「返信できない」「家事が止まっている」
体調「眠れない」「寝すぎる」「食欲が落ちた」「体重が変わった」
安全面「消えたい気持ちがある」「自分を傷つける考えがある」

ご家族・周囲の方へ

うつ状態のサインは、本人が自分で説明しにくいことがあります。 特に「動けない」「返信できない」「決められない」といった変化は、周囲から誤解されやすい部分です。

声をかけるときは、責める言い方よりも、事実を共有して相談につなげる言い方が役立ちます。

避けたい言い方伝えやすい言い方
やる気を出せばできるでしょ最近、起きることや身支度がかなり重そうに見えるよ。
またサボっているの?返信や家事が止まっていて、かなりつらそうに見えるよ。受診で相談できそう?
そんなこと考えないで「消えたい」と感じるほどつらいんだね。ひとりにせず、一緒に相談先につながろう。

まとめ:うつ状態は、責める対象ではなく相談するサイン

  • うつ状態のサインは、気分、生活、体調の変化に現れます。
  • 落ち込みだけでなく、楽しめなさ、動けなさ、疲れやすさも重要なサインです。
  • 睡眠、食欲、体重、活動量の変化も、診察で相談する材料になります。
  • 自分を責める気持ちが強いときは、ひとりで判断せず、早めに相談しましょう。
  • 「怠け」や「甘え」と決めつけず、いつから、何が、どのくらい変わったかを主治医に伝えましょう。

次回は、「混合状態って何?」についてお話しします。

もっと学びたい方へ

ネット心理教育ピアサポートでは、双極症について当事者・家族向けに学べる動画や資料を公開しています。 気になるところから、無理のない範囲でご覧ください。

参考文献・参考資料

  1. 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
  2. 日本うつ病学会 双極症委員会. 双極症とつきあうために Ver.11. 2024.
  3. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision: DSM-5-TR. 2022.
  4. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 病気について(F1).
  5. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 当事者ができること(F3).
  6. Colom F, Vieta E. 双極性障害の心理教育マニュアル. 秋山剛, 尾崎紀夫 監訳. 医学書院; 2012.
  7. 日本うつ病学会 ガイドライン検討委員会:ガイドライン掲載ページ
  8. 厚生労働省. まもろうよ こころ.

※本記事は心理教育を目的とした一般情報です。診断・治療方針は主治医と相談してください。

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この記事を書いた人

NPO法人。ネット心理教育では、双極性障害の知識や治療法の情報をYouTube動画とZoomのグループワークで広めています。心理教育とは、病気や治療に関する知識を身につけ『生きる力』にするための心理療法の一つです。

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