双極症の動画図書館:第12回寝る時間・起きる時間を整える――睡眠時間だけでなく、時刻の安定も大切です

双極症の動画図書館|第12回 解説コラム

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 公認心理師

木野内南(布団ちゃん)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート

理事長 薬剤師 藤田剛(窓師)

双極症では、睡眠と生活リズムの乱れが、気分の波と関係することがあります。 「何時間眠れたか」だけでなく、「何時に寝て、何時に起きたか」も大切な手がかりになります。

今回は、第12回「寝る時間・起きる時間を整える」の内容をもとに、 完璧な生活を目指すのではなく、気分の波を大きくしないための現実的な整え方を考えます。

目次

診断は医療機関で

この記事は、双極症について学ぶための一般的な心理教育情報です。 診断や治療方針の決定は、主治医や医療機関で行われます。 自己判断で薬を変更・中止しないでください。

症状の悪化、強い不眠、著しい気分の高まりや落ち込み、自傷他害のおそれがある場合は、 心理教育だけで対応しようとせず、早めに主治医・医療機関・地域の相談窓口に相談してください。 今すぐ安全が心配な場合は、救急受診や救急要請を含めて、安全を優先してください。

診断は医療機関で:自己判断で薬を変えないでください

双極症の動画図書館について

NPO法人ネット心理教育ピアサポートでは、双極症の方に信頼できる情報をYoutube動画、Web解説コラムとして総合的に提供する目的で「双極症の動画図書館」の構築を進めています。詳細は以下のコラムをご覧ください。

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この記事でわかること

  • 双極症で「寝る時刻・起きる時刻」が大切になる理由
  • 寝る時間を急にそろえにくい時に、まず起床時刻から整える考え方
  • 休日の寝だめや昼夜逆転と、気分の波の関係
  • 睡眠覚醒リズム表や短いメモを使った記録のしかた

動画はこちら

第12回「寝る時間・起きる時間を整える」をYouTubeで見る

いきなり結論:睡眠時間だけでなく、寝る時刻・起きる時刻の安定が大切です

同じ時間に眠り、同じ時間に起きることは、生活リズムの土台になります。 完璧に守る必要はありませんが、大きなズレを続けない工夫は、気分の安定に役立つことがあります。

特に、寝る時間を急にそろえるのが難しい場合は、まず「起きる時間」を少し安定させるところから始めると取り組みやすくなります。 自分を責めるためではなく、ズレに早めに気づき、必要な時に主治医へ相談するための工夫として考えます。

いきなり結論:睡眠時間だけでなく、寝る時刻・起きる時刻の安定が大切です

生活リズムは、気分の安定に関わります

生活リズムは、気分の安定に関わります

双極症では、睡眠と生活の時間帯が気分の波に影響することがあります。 徹夜や大きな時間のズレは、躁・軽躁のきっかけになることがあります。 そのため、生活リズムを安定させることは、再発予防の土台になります。

日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023や、 一般向け資料の「双極症とつきあうために Ver.11」でも、 双極症では気分の波に早く気づき、再発予防につなげる視点が重視されています。

生活リズムの乱れ起こりやすい困りごと相談・記録のポイント
夜更かし・徹夜睡眠不足が続き、活動量や気分が上がりすぎることがあります。何時に寝たか、睡眠時間、翌日の活動量を短くメモします。
昼夜逆転食事・活動・服薬・人との予定もずれやすくなります。起床時刻と日中の活動開始時刻を確認します。
休日だけ大きく寝る翌週の寝つきや起床が乱れ、リズムが戻りにくくなることがあります。休日の起床時刻のズレを小さくする工夫を考えます。

まず“起きる時間”を決めてみましょう

まず“起きる時間”を決めてみましょう

「今日から寝る時間をそろえよう」と思っても、実際には難しいことがあります。 眠気はその日の疲れ、緊張、不安、薬の影響、予定などによって変わります。 そのため、最初から就寝時刻を完璧にそろえようとすると、かえって負担になる場合があります。

その場合は、毎朝の起床時刻を大きくずらさないことから始めます。 起きる時間が少し整うと、朝の光、活動、食事、眠気のリズムも整いやすくなります。

起きる時間を整える時の小さな工夫

  • まずは「だいたいこの時間に起きる」という目安を決める。
  • 前日に遅くなった日も、起床時刻のズレを大きくしすぎない。
  • 起きたらカーテンを開ける、顔を洗う、水分をとるなど、朝の合図を作る。
  • できなかった日を責めず、翌日以降に戻すことを優先する。

厚生労働省の睡眠対策ページでは、 「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が公開されています。 一般的な睡眠の整え方としても、睡眠環境や生活習慣を見直し、睡眠の不調が続く場合には医療機関へ相談する視点が示されています。

休日の寝だめにも注意します

休日の寝だめにも注意します

疲れている時に休むことは、とても大切です。 ただし、休日だけ寝る時間・起きる時間が大きくずれると、生活リズムが崩れやすくなることがあります。

「平日の睡眠不足を休日に一気に取り戻す」形が続くと、日曜の夜に眠れない、月曜の朝に起きられない、 週の前半に調子が崩れる、という流れにつながることがあります。 休む日でも、起きる時間のズレを小さくする工夫を考えましょう。

よくあるパターン少し変えるなら
休日は昼まで寝て、夜に眠れなくなる。起床時刻を少しだけ早め、昼寝は短めにする。
疲れを取ろうとして、1日中布団の中で過ごす。休む時間を確保しつつ、食事・服薬・短い日光浴などの合図を残す。
休日の夜に予定を詰め込み、翌週に響く。翌日の起床時刻から逆算して、終える時間を決めておく。

記録すると、ズレに気づきやすくなります

記録すると、ズレに気づきやすくなります

寝る時間・起きる時間は、頭の中だけで覚えておくと、意外と正確に把握しにくいものです。 睡眠覚醒リズム表や短いメモを使うと、時間帯の変化が見えやすくなります。

日本うつ病学会の資料ページでは、 睡眠・覚醒リズム表が公開されています。 毎日の就寝・起床、気分、日常行動などを記録できる表です。

まずは、これだけでも十分です

記録する項目書き方の例主治医に伝える時の意味
寝た時間0:30ごろ布団に入った就寝時刻のズレや夜更かしの傾向が見えます。
起きた時間7:30起床/休日は11:00起床平日と休日のズレが見えます。
昼寝15:00から1時間夜の寝つきとの関係を見やすくなります。
日中の活動外出なし/買い物に行った/予定を3つ入れた活動量と睡眠・気分の関係を相談しやすくなります。

続けることを優先し、細かく書きすぎないことも大切です。 記録は、うまくできたかを採点するものではなく、主治医と一緒に状態を考えるための手がかりです。

今日から使える「睡眠メモ」テンプレート

睡眠覚醒リズム表を使う前の一歩として、次のような短いメモでも十分です。

日付寝た時間起きた時間昼寝気分・活動のメモ
例:6/101:306:00なし睡眠が短いのに元気。予定を2つ追加。
例:6/1123:3010:30なし長く寝ても疲れる。外出できなかった。

眠れない日、寝すぎる日、寝る時間が大きくずれる日が続く場合は、生活の見直しだけで抱え込まず、主治医に相談してください。

ご家族・周囲の方へ

睡眠の変化は、本人より周囲が先に気づくことがあります。 ただし、「また夜更かししている」「だらしない」と責める言い方は、本人を追い詰めてしまうことがあります。

伝える時は、評価ではなく、見えている事実を短く共有する形が役立ちます。

避けたい言い方伝えやすい言い方
また生活が乱れているよ。ここ数日、寝る時間が遅くなっているように見えるよ。
休日に寝すぎじゃない?休日の起きる時間が大きくずれて、月曜がつらそうに見えるよ。
気合いで起きればいい。主治医に、睡眠のズレも相談してみるのはどうかな。

まとめ:整えるとは、無理に完璧にすることではありません

まとめ:整えるとは、無理に完璧にすることではありません
  • 寝る時間・起きる時間の安定は、双極症のセルフケアの基本です。
  • 生活リズムの大きなズレは、気分の波に影響することがあります。
  • 寝る時間を急にそろえるのが難しい時は、まず起きる時間から整えます。
  • 休日の寝だめは、起床時刻のズレを小さくする工夫が役立ちます。
  • 睡眠覚醒リズム表や短いメモは、主治医に相談する手がかりになります。

大切なのは、ズレた時に自分を責めることではありません。 「戻し方」を持っておくことです。 不眠や過眠が続く時は、早めに主治医と相談しましょう。

次回は「朝の光と生活リズム」

次回は、第13回「朝の光と生活リズム」です。 起きる時間を整えることと、朝の光が生活リズムにどう関わるのかを見ていきます。

次回:朝の光と生活リズム

次回は第13回「朝の光と生活リズム」です

もっと学びたい方へ

ネット心理教育ピアサポートでは、双極症について当事者・家族向けに学べる動画や資料を公開しています。 気になるところから、無理のない範囲でご覧ください。

もっと学びたい方へ

参考文献・参考資料

  1. 日本うつ病学会. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023.
  2. 日本うつ病学会 双極症委員会. 双極症とつきあうために Ver.11. 2024.
  3. 日本うつ病学会. 睡眠・覚醒リズム表.
  4. 日本うつ病学会. 一般の方向け資料.
  5. 厚生労働省. 睡眠対策.
  6. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
  7. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 当事者ができること(F3).
  8. NPO法人ネット心理教育ピアサポート. ゼミ参加者向けマニュアル 双極症全般について(B1).
  9. Colom F, Vieta E. 双極性障害の心理教育マニュアル. 秋山剛, 尾崎紀夫 監訳. 医学書院; 2012.

※本記事は心理教育を目的とした一般情報です。診断・治療方針は主治医と相談してください。

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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