双極症の動画図書館:24回 薬で困った時の相談――我慢するか、自分でやめるかの二択ではありません

双極症の動画図書館 第24回
薬を飲んでいて、眠気、体重の増加、手のふるえ、便秘などが気になることがあります。「治療のためだから我慢しなければ」と思う一方で、「もう自分でやめたい」と感じることもあるかもしれません。
薬の困りごとは、治療を調整するための大切な情報です。今回は、困りごとをどう整理し、主治医や薬剤師へどう伝えればよいかを、具体的に解説します。
双極症の動画図書館シリーズについて
双極症の動画図書館シリーズは、YouTube動画とWeb解説コラムで構成しています。
- YouTube動画はテーマごとに要点を5分程度の短い動画でまとめています。
- Web解説コラムはYouTube動画と対応して、動画の解説、補足説明をしています。


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最初に要点
- 薬の困りごとは、我慢し続けず、主治医や薬剤師へ相談して構いません。
- 「いつから・何が・生活にどう影響したか」を伝えると、状況を共有しやすくなります。
- 副作用と思った症状が、病気、睡眠不足、身体疾患、他の薬などと関係する場合もあります。
- 薬によって必要な検査は異なります。体重や症状の記録も安全確認に役立ちます。
- 自己判断で中止・減量せず、重い症状が疑われる時は早めに医療機関へ連絡します。

このコラムについて
このコラムは、薬について相談するための一般的な情報です。副作用の種類、必要な検査、飲み方、変更・中止の方法は、薬と一人ひとりの状態によって異なります。個別の判断は主治医・薬剤師へ確認してください。

1.薬の困りごとは、治療を調整するための情報です
副作用や服薬の負担を伝えることは、治療への不満を述べることではありません。薬の効果と負担のバランスを見直すために必要な情報です。
医療者に相談した結果、服用時刻や用量を見直す、別の薬を検討する、経過を観察する、検査を行う、薬以外の原因を調べるなど、複数の対応が考えられます。ただし、どの方法が適切かは薬と状態によって異なり、必ず薬を変更できるとは限りません。
伝えてよいこと
「治療に必要なのは分かりますが、今の困りごとも一緒に考えてほしいです」と伝えて構いません。薬を続けたい気持ちと、負担を減らしたい気持ちは両立します。
2.「いつから・何が・どう困るか」を具体的にします
「眠い」「太った気がする」だけでも相談できます。さらに、時期や生活への影響を加えると、医療者が状況を整理しやすくなります。
| 確認すること | 伝え方の例 |
|---|---|
| いつから | 「先週、薬が変わって2日後からです」 |
| 何が起きたか | 「午前中の眠気が強くなりました」 |
| 程度・回数 | 「週5日のうち3日、仕事中に眠ってしまいそうになります」 |
| 生活への影響 | 「朝起きられず、遅刻が増えました」 |
| 一緒に変わったこと | 「市販の風邪薬を飲み始めました」「飲酒量が増えました」 |
| 希望 | 「治療は続けたいので、負担を減らす方法を相談したいです」 |
正確な日付や薬の名前を思い出せなくても大丈夫です。「だいたいこの頃から」と分かる範囲で伝えます。お薬手帳、処方変更日、スマートフォンのメモなども役立ちます。

3.「副作用だ」と一人で決めつける必要はありません
薬を始めた後に起きた症状でも、薬だけが原因とは限りません。例えば、強い眠気には薬の作用のほか、うつ状態、睡眠不足、睡眠時無呼吸、飲酒、市販薬などが関係することがあります。体重の変化には、食事、活動量、気分の状態、身体疾患なども関係します。
反対に、「病気のせいだろう」と考えていた症状が、薬の影響である可能性もあります。原因を決めることより、起きた事実と経過を伝えることが大切です。
4.記録と検査で、安全性を確認します
薬を安全に使うため、症状や体重を記録したり、必要に応じて血液検査などを行ったりします。すべての薬で同じ検査をするわけではありません。
| 確認方法 | 確認できることの例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分で記録 | 眠気、ふるえ、便通、食欲、体重、睡眠 | 毎日完璧に書く必要はありません。変化が分かる程度で十分です。 |
| 診察・薬局で確認 | 血圧、脈拍、動き、服薬状況、生活への影響 | 気になる症状を先に伝えると確認しやすくなります。 |
| 血液検査など | 肝臓・腎臓、血糖・脂質、血球、甲状腺、電解質、血中濃度など | 必要な項目と頻度は薬や身体状態によって異なります。 |
血中濃度とは、血液中に薬がどの程度あるかを測る値です。一部の薬では、有効性と安全性を考える材料になります。結果は数字だけで判断せず、症状、服用時刻、採血時刻などと合わせて主治医が評価します。

5.主治医と薬剤師には、それぞれ相談できることがあります
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 主治医 | 診断や症状を含めた治療全体、薬の選択・用量・変更、必要な検査、他の原因の評価 |
| 薬剤師 | 飲み方、飲み忘れ時の対応、相互作用、剤形、一包化、市販薬・サプリメントとの組み合わせ |
| 医療機関・地域の救急 | 急な重い症状、意識の変化、大量服薬など、通常の診察を待てない状況 |
薬局で相談した内容を、必要に応じて主治医へ情報提供してもらえることもあります。「次の診察まで待ってよいか分からない」という相談も、薬局や医療機関へ連絡するきっかけになります。

6.市販薬・サプリメント・飲酒も伝えます
処方薬以外のものが、眠気を強めたり、薬の効き方や副作用に影響したりする場合があります。風邪薬、鎮痛薬、漢方薬、サプリメント、健康食品も、「薬ではないから関係ない」とは限りません。
- 市販薬を買う時は、お薬手帳や薬の一覧を薬剤師・登録販売者へ見せます。
- 複数の医療機関・薬局を利用している場合は、それぞれの処方を共有します。
- 飲酒量やカフェイン摂取も、言える範囲で伝えます。
- 服用しているものを自分で整理しきれない時は、現物や写真を持参する方法もあります。
7.急いで相談した方がよい症状があります
重い副作用はまれですが、早期発見が重要です。どの症状に注意するかは薬ごとに異なるため、処方時の説明や患者向医薬品ガイドも確認します。
早めの連絡・受診を考える例
- 急に広がる発疹、皮膚の水ぶくれ、口・目など粘膜の異常
- 強い眠気、意識がぼんやりする、反応がおかしい、転倒しそうになる
- 高熱、強い筋肉のこわばり、汗、意識の変化などが重なる
- 呼吸が苦しい、顔や喉が腫れる、失神するなどの急な症状
- 薬を大量に飲んだ、または飲んでしまいそう
- 死にたい気持ち、自傷・他害のおそれがある
これはすべての副作用を示した一覧ではありません。差し迫った危険がある場合は一人で対応せず、地域の救急や119番を利用してください。判断に迷う場合も、薬局・医療機関へ早めに連絡してください。

8.そのまま使える「薬の困りごとメモ」
診察や薬局で、全部を口頭で説明する必要はありません。次の項目を一つか二つ書くだけでも役立ちます。
薬の名前・飲む時刻:______________
いつから:______________
何が起きたか:______________
程度・回数:______________
生活への影響:______________
市販薬・サプリ・飲酒など:______________
自分の希望:原因を確認したい/負担を減らしたい/飲み方を相談したい/別の選択肢を知りたい
今日確認したいこと:______________
数値を記録する時は、体重なら測る時間や条件をなるべくそろえると、変化を見やすくなります。ただし、記録が負担になる場合は無理をせず、気になった時だけでも構いません。
9.相談した後に確認しておくこと
- 薬は今までどおり飲むのか、変更があるのか
- 自宅で記録する症状や数値は何か
- 検査が必要か、次はいつ行うか
- どの症状が出たら、次の診察を待たずに連絡するか
- 夜間・休日に困った時の連絡先
- 次回、何を見直す予定か
説明を一度で覚えられなくても構いません。紙に書いてもらう、お薬手帳に記録してもらう、家族や支援者に同席してもらうなど、自分に合う方法を使えます。
まとめ
薬の困りごとは、治療を調整するための大切な情報です。「いつから・何が・生活にどう影響したか」を伝えると、主治医や薬剤師と状況を共有しやすくなります。
我慢するか、自己判断で中止するかの二択にする必要はありません。記録や検査を使いながら、薬の効果、負担、安全性を一緒に見直していきます。重い症状が疑われる時は、次回の診察を待たず、早めに医療機関へ連絡してください。

振り返り質問への回答と考えるヒント
動画の最後に示した二つの質問を振り返ります。

Q1.薬で眠気や体重増加などに困った時、「我慢する」か「自分でやめる」以外に、どんな選択肢があるでしょうか?
回答:薬で困った時は、我慢し続けるか、自己判断で中止するかの二択ではありません。副作用や生活への影響を具体的に主治医や薬剤師へ伝え、必要に応じて使い方や治療方針を相談できます。
薬によって確認する項目は異なりますが、眠気、体重、ふるえ、検査値などを見ながら安全に使っていくことがあります。急な強い症状や重い副作用が疑われる場合は、早めに医療機関へ相談してください。
Q2.薬について相談するとしたら、「いつから・何が・生活にどう影響したか」をどのように伝えられそうでしょう?
この問いには一つの正解はありません。例えば、次のような視点で考えられます。
- 「眠い」だけでなく、「午前中に仕事ができない」など生活への影響まで伝えます。
- 薬を始めた日や変更した日と、症状が始まった時期を分かる範囲で整理します。
- 市販薬、サプリメント、飲酒なども、飲み合わせを確認する材料になります。
- 困りごとが小さく見えても、相談して構いません。
例えば、「2週間前に薬が変わってから、午前中の眠気が強く、週に3回遅刻しそうになります。治療は続けたいので、負担を減らす方法を相談したいです」と伝えられます。全部が分からなくても、分かる部分だけで十分です。
参考文献・参考資料
- 日本うつ病学会『診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023』2023年
- 日本うつ病学会 双極症委員会『双極症とつきあうために Ver.11』2024年
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『医薬品や医療機器等の情報を調べる』
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『患者向医薬品ガイド』
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『重篤副作用疾患別対応マニュアル(患者・一般の方向け)』
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『全国のくすり相談窓口』
- NPO法人ネット心理教育ピアサポート『ゼミ参加者向け資料 F2』
次は、どこを学びますか?
次の第25回では、「主治医に何を伝えればいい?」を扱います。気分の変化だけでなく、睡眠、行動、生活への影響など、診察で役立つ情報を整理します。
「双極症の動画図書館」は、最初から順番に見なくても大丈夫です。今の自分に必要なテーマからご覧ください。




NPO法人ネット心理教育ピアサポート 副理事長
認定専門公認心理師
社会福祉士
国際双極症学会 評議員
木野内 南(布団ちゃん)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 理事長
薬剤師
藤田 剛(窓師)
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