双極症の動画図書館:26回 診察時間を上手に使うコツ――「三つの相談」と「最後の確認」で診察を相談の時間に

双極症の動画図書館 第26回

診察時間が短いと、「何から話せばよいか分からない」「大切なことを言う前に終わってしまった」と感じることがあります。体調が悪い時ほど、頭の中で情報を整理するのも難しくなります。

診察を上手に使うとは、早口で全部を話すことではありません。一番困っていることから優先順位をつけ、前回からの変化を短く共有し、最後に次の方針を確認することです。小さなメモが、患者さんと主治医の対話を助けます。

双極症の動画図書館シリーズについて

双極症の動画図書館シリーズは、YouTube動画とWeb解説コラムで構成しています。

  • YouTube動画はテーマごとに要点を5分程度の短い動画でまとめています。
  • Web解説コラムはYouTube動画と対応して、動画の解説、補足説明をしています。

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最初に要点

  • 相談したいことは三つ以内にし、一番困っていることを最初に伝えます。
  • 前回から「良くなった・悪くなった・変わらない・新しく起きた」を整理します。
  • 「いつから」「何時間・何回」「生活にどんな影響があったか」を短く伝えます。
  • 主治医の質問や説明を聞く時間も残し、最後に次回までの方針を確認します。
  • 強い不眠、自傷・他害のおそれ、薬の重大な問題など、安全に関わることは最優先です。
優先順位、前回からの変化、数字と事実、最後の確認が基本です。

このコラムについて

このコラムは、診察で相談しやすくするための一般的なヒントです。診断や治療方針、薬の変更・中止を自分だけで決めるためのものではありません。診察時間や連絡方法は医療機関によって異なるため、通院先の案内も確認してください。

診断と治療判断は医療機関で行います。困った時は早めに相談してください。

1.「全部話す」より、診察の目的を一つ決めます

限られた時間に出来事をすべて説明しようとすると、大事な相談が後回しになりがちです。まず「今日の診察を終えた時、何が分かればよいか」を一つ決めます。

診察の最初に使える一言

「今日は三つ相談があります。一番困っているのは____です」

「薬のことと生活のことで一つずつ確認したいです。優先したいのは____です」

話し始める前に全体像を伝えると、主治医も時間を配分しやすくなります。三つすべてを話せない場合は、残った項目を次回にするか、別の相談方法があるかを確認します。

2.相談事項は三つまでに絞ります

スライドでは、次の三つを基本形として示しています。自分に合わない項目は入れ替えて構いません。

  1. 一番困っていること:安全、睡眠、気分、行動など、最優先の変化
  2. 薬の困りごと:効果、副作用、飲み忘れ、続けにくさ、費用など
  3. 生活への影響:仕事、学業、家事、外出、買い物、人間関係など

優先順位に迷った時は、①安全に関わること、②今後の治療判断を変えそうなこと、③生活への影響が大きいこと、の順で考える方法があります。

最優先の相談から始め、時間があれば追加の質問をします。

3.前回からの変化を四つの視点で見ます

診察と診察の間に起きたことを、次の四つに分けると整理しやすくなります。悪化した点だけでなく、良くなった点や変わらない点も治療判断の材料です。

視点考える例
良くなった睡眠が戻った、外出できた、仕事を休まず行けた
悪くなった眠れない、落ち込みが強い、予定や支出が増えた
変わらない副作用が続く、朝に起きられない状態が続く
新しく起きた新しい症状、薬や生活リズムの変更、家庭・職場の出来事

待ち時間にメモを見直し、最優先の項目へ丸を付けておくと、診察の冒頭で伝えやすくなります。

前回からの変化を四つの視点で整理します。

4.数字と事実で、判断の材料を渡します

「つらい」「眠れない」という感覚は大切です。そこへ期間、回数、時間、生活への影響を少し足すと、主治医が状態を判断しやすくなります。正確に測れていなければ、おおよそでも構いません。

短い表現具体的にした例
眠れません3日前から睡眠が3時間ほどで、予定を二つ増やしました
薬を忘れましたこの2週間で朝の薬を3回忘れました
落ち込んでいます1週間前から朝に起きられず、仕事を2日休みました
使いすぎました先週、普段より約2万円多く使いました

数字は本人を評価する点数ではありません。状態の変化を一緒に確認するための目印です。記録が負担になる時は、睡眠時間や一番困った出来事だけでも十分です。

期間・回数・生活への影響を添えると、判断の材料になります。

5.主治医の質問と説明を聞く時間も大切です

診察は一方的な報告ではなく、患者さんと医療者が情報を持ち寄る場です。主治医からの質問には、診断や安全性、治療効果を確認する目的があります。分からない時は無理に答えを作らず、「覚えていません」「自分では判断できません」と伝えて構いません。

治療の選択肢がある時は、共同意思決定(SDM)の考え方が役立ちます。医療者の知識と、本人の生活・希望を持ち寄って方針を考えます。例えば、次のように質問できます。

  • 「考えられる選択肢は何ですか」
  • 「それぞれの利点と不利益は何ですか」
  • 「今のまま様子を見る選択はありますか」
  • 「私の仕事や生活では、何を優先して考えるとよいですか」

6.説明が難しい時は、道具や人の助けを使えます

診察中に言葉が出にくい時は、メモやスマートフォンの記録をそのまま見せても構いません。医療機関の方針を確認したうえで、家族、支援者、通訳、相談員などに同席をお願いする方法もあります。

同席者がいる場合も、本人が伝えたいことと、誰にどの情報を共有するかを可能な範囲で確認します。本人と周囲の見方が違う時は、「家族はこう言うが、自分はこう感じる」と両方を伝えられます。

7.診察の最後に「次にすること」を確認します

説明を聞いただけで終わると、帰宅後に「薬はどうするのか」「いつ連絡すればよいのか」が分からなくなることがあります。最後の1分で、次の項目を確認します。

  • 今回の判断と、その理由
  • 薬や生活で変えること、変えないこと
  • 次回までに観察・記録すること
  • 予約日を待たずに連絡する目安と連絡先
  • 次回の受診日、検査、今回話せなかった項目の扱い

確認の一言

「私の理解では、次回まで____を続け、____が起きたら連絡する、で合っていますか」

合意した方針と、早めに連絡する目安を確認します。

8.そのまま使える「診察前3分メモ」

長文を書く必要はありません。診察前や待ち時間に、空欄へ一言ずつ記入します。

今日の目的:診察が終わる時に____が分かっていたい

相談1(最優先):______________

相談2(薬のこと):______________

相談3(生活への影響):______________

前回から良くなったこと:______________

悪くなった/新しく起きたこと:______________

いつから・何時間・何回:______________

最後に確認:薬/生活/観察項目/連絡の目安/次回予約

思いついた時にスマートフォンへ一言残し、受診前に三つだけ選ぶ方法もあります。メモは提出物ではなく、相談を助ける道具です。

安全に関わる内容は最優先で伝えてください

  • ほとんど眠れない、または短い睡眠でも平気な状態が続く
  • 著しい気分の高まり・落ち込み、判断や行動の大きな変化がある
  • 薬を大量に飲んだ、自己判断で大きく増減・中止した
  • 副作用が疑われ、安全な生活を続けにくい
  • 死にたい気持ち、自傷・他害のおそれがある

次回予約を待たず、主治医や医療機関へ連絡してください。差し迫った危険がある場合は一人で対応せず、地域の救急や119番などを利用してください。

まとめ

診察時間を上手に使うために、相談したいことを三つ以内に絞り、一番困っていることから伝えます。前回からの変化を「良くなった・悪くなった・変わらない・新しく起きた」で整理し、期間、回数、睡眠時間、生活への影響などを短く添えます。

全部を一方的に話す必要はありません。主治医の質問や説明を聞く時間も大切です。診察の最後に、薬や生活で何をするか、何を観察するか、いつ連絡するかを確認すると、短い診察を次の行動につながる相談の時間にできます。

三つの相談、短い記録、最後の確認で診察を組み立てます。

振り返り質問への回答と考えるヒント

動画の最後に示した二つの質問を振り返ります。

次回の診察で優先したいことを三つ以内で考えてみましょう。

Q1.短い診察時間を使いやすくするために、診察前にどんな準備ができるでしょうか?

回答:診察時間が短い時は、相談したい内容に優先順位をつけ、簡単なメモを持っていくと役立ちます。前回の診察から変わったこと、薬で困っていること、生活への影響、今日確認したいことなどを整理しておくと、話が始めやすくなります。

診察の最後に「次回までに何をするか」「薬や生活で何に注意するか」を確認しておくと、次の行動も分かりやすくなります。

Q2.次回の診察で、優先して聞きたいことを3つ以内にするとしたら何でしょう?

この問いには一つの正解はありません。例えば、次のような視点で考えられます。

  • 全部を話そうとせず、「今日はこれだけは聞く」という項目を決める方法があります。
  • メモは長文でなくても、3項目程度で十分です。
  • 診察後に言い忘れに気づきやすい人は、思いついた時にスマートフォン等へ一言残しておく方法もあります。

例えば、「一番困っている睡眠」「薬の眠気」「仕事を休んだこと」の三つを選び、最初に「今日は三つあります」と伝えられます。安全に関わることがある場合は、必ず最優先にします。

参考文献・参考資料

  1. 日本うつ病学会『診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023』2023年
  2. 日本うつ病学会 双極症委員会『双極症とつきあうために Ver.11』2024年
  3. 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト『双極性障害(躁うつ病)
  4. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『患者向医薬品ガイド
  5. NICE. Shared decision making: recommendations. NICE guideline NG197. 2021.
  6. NPO法人ネット心理教育ピアサポート『ゼミ参加者向け資料 B1・F2・F3』

次は、どこを学びますか?

次の第27回では、「双極症の情報を安全に読む」を扱います。インターネットやSNSの情報について、発信者、更新日、根拠を確認し、自分に合う治療情報を主治医との相談材料にする方法を整理します。

「双極症の動画図書館」は、最初から順番に見なくても大丈夫です。今の自分に必要なテーマからご覧ください。

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NPO法人ネット心理教育ピアサポート 副理事長

認定専門公認心理師

社会福祉士

国際双極症学会 評議員

木野内 南(布団ちゃん)

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 理事長

薬剤師

藤田 剛(窓師)

https://www.shinrikyoiku.com/

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この記事を書いた人

NPO法人ネット心理教育ピアサポート 代表
双極性障害、ADHD当事者で薬剤師。
起業と株式上場経験あり。

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