双極症の動画図書館:第32回 再発予防プランを作ろう――「きざし・対応・相談先」を一枚に

双極症を知る・全35回シリーズ 第32回
再発予防プランは、再発を完全に防ぐための約束ではありません。小さな変化に早く気づき、休む・相談する・受診するための「困った時の手順書」です。調子が比較的落ち着いている時に、あなたに特化した困ったときの手順書を無理のない形で作っておきましょう。
ちなみに、この再発予防プランはバルセロナプログラムでは「消火器カード」と呼ばれているとても重要な概念です。
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医療についてのご注意
このコラムは一般的な情報です。薬の変更や中止は自己判断で行わず、主治医に相談してください。強い不眠、著しい興奮、生活が保てないほどの落ち込み、自分や他人を傷つけるおそれがある時は、プランだけで対応せず、医療機関や緊急の相談先につながってください。
1.元気な時につくる「困った時の手順書」
気分の波が大きくなっている時は、普段より判断が急になったり、何から手をつければよいか考えにくくなったりすることがあります。そこで、比較的落ち着いている時に、早期サインと対応をあらかじめ言葉にしておきます。
大切なのは、完璧な計画をつくることではありません。「これなら使えそう」と思える短い手順から始め、実際に使いながら書き直していくことです。

2.自分の早期サインを選ぶ
早期サインは、人によって違います。睡眠、活動量、話し方、考え方、買い物、連絡の回数、食欲などを振り返り、「いつもの自分との違い」を探します。家族や支援者が先に気づく変化も、本人のサインと同じくらい役立つことがあります。
- 高まりのサイン:睡眠が短くても平気、予定や連絡が急に増える、話が止まらない、買い物が増える、いらだちが強くなる
- 落ち込みのサイン:朝起きられない、返信ができない、身の回りのことが難しい、楽しめない、考えがまとまらない
- 共通するサイン:睡眠のリズムが崩れる、食事が乱れる、薬を飲み忘れる、人との距離感が変わる
項目を増やしすぎると使いにくくなります。まずは「自分に起こりやすいもの」を2~3個選びましょう。

3.変化の強さに応じた対応を決める
「少し気になる」「はっきり変化がある」「危機的」の3段階に分けると、行動を選びやすくなります。基準は、その人のこれまでの経過と治療方針に合わせます。
| 段階 | 変化の例 | 対応の例 |
|---|---|---|
| 黄:少し気になる | 睡眠が1~2日乱れる、予定が増え始める | 予定を減らす、睡眠を優先する、記録する |
| 橙:はっきりした変化 | 不眠が続く、活動や落ち込みが強まる | 家族・支援者に伝える、主治医へ早めに相談する |
| 赤:危機的 | 安全が保てない、現実との区別が難しい、切迫した希死念慮 | 一人で抱えず、医療機関・救急・緊急相談先につながる |

4.相談先と連絡順を決める
調子が悪い時に連絡先を探すのは負担になります。主治医・医療機関、家族、支援者、公的な相談窓口などを複数書き、連絡する順番と、夜間・休日の代替先も決めておきます。
本人が連絡しにくい時に、誰が代わりに連絡するか、医療者へ伝えてよい情報は何かも、本人を中心に話し合っておくと安心です。

5.共有し、定期的に更新する
プランは、本人だけのメモにも、家族や支援者と共有する道具にもできます。共有する相手と範囲は本人の希望を尊重します。診察の時に見直す、季節の変わり目に確認する、実際に役立った対応を書き足すなど、更新するタイミングを決めておきましょう。

6.1枚で使える再発予防プラン
下の表を印刷したり、スマートフォンのメモに写したりして使えます。書きにくい欄は空白のままでもかまいません。
| 普段の調子 | 睡眠: 時間/生活リズム: |
|---|---|
| 早めのサイン | 1. 2. 3. |
| まず自分ですること | 予定を減らす/休む/記録する/ほか: |
| 休む・相談する基準 | 例:眠れない日が2日続いたら |
| 相談先と順番 | 1. 電話: 2. 電話: 夜間・休日: |
| 安全を守る対応 | 一人にならない/運転・大きな契約を避ける/緊急連絡先: |
| 次の見直し日 | 年 月 日 |
まとめ
- 再発予防プランは、変化に早く気づいて助けにつながるための手順書です。
- 元気な時に、早期サイン・休む基準・相談先を具体的に決めます。
- プランだけで対応せず、危機的な時は医療機関や緊急の支援につながります。
- 本人の希望を中心に共有し、使いながら更新します。

Q&A――振り返ってみましょう

Q1.再発予防プランを、調子が悪くなってからではなく、元気な時に作っておくのはなぜでしょうか?
気分の波が大きくなっている時は、判断や行動が普段と違っていたり、何をすればよいか考えにくくなったりすることがあります。そのため、比較的落ち着いている時に、自分の早期サインと対処方法を決めておくことが役立ちます。
再発予防プランは、自分を縛る規則ではなく、「困った時の手順書」のようなものです。睡眠が短くなったら予定を減らす、家族に伝える、早めに受診するなど、具体的にしておくと使いやすくなります。
Q2.あなたの「早めのサイン」「休む基準」「相談する相手」を一つずつ挙げるとしたら何でしょう?
この問いには一つの正解はありません。例えば、次のような視点で考えることができます。
- サインは「眠れない」「連絡が増える」「動けなくなる」など、自分に起こりやすいものを選びます。
- 相談先は主治医だけでなく、家族や支援者など複数あると安心です。
- 危機的な状況では、プランだけで対応せず、医療機関などへ早めにつながります。
参考資料・相談先
- 日本うつ病学会「双極症とつきあうために」Ver.11
- 日本うつ病学会「双極症診療ガイドライン2023」
- NICE guideline CG185: Bipolar disorder—assessment and management
- NICE quality standard QS95: Bipolar disorder in adults
- WHO mhGAP Intervention Guide, version 2.0 (2023)
- 厚生労働省「こころの相談窓口」
- 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」
いま自分や他人の安全が保てない差し迫った状況では、ためらわず119番へ。事件・事故など警察の緊急対応が必要な場合は110番へ連絡してください。
作成日:2026年8月20日。内容は一般的な情報であり、診断や個別の治療の代わりになるものではありません。
次は、どこを学びますか?
「双極症の動画図書館」は、最初から順番に見なくても大丈夫です。今の自分に必要なテーマからご覧ください。

双極症の動画図書館シリーズについて
双極症の動画図書館シリーズは、YouTube動画とWeb解説コラムで構成しています。
- YouTube動画はテーマごとに要点を5分程度の短い動画でまとめています。
- Web解説コラムはYouTube動画と対応して、動画の解説、補足説明をしています。




