双極症の動画図書館:第31回 医療以外の支えを使う――お金・生活・就労、一人で探し切らず、まず一つの窓口へ

双極症の動画図書館 第31回
双極症の治療では、診察や薬が大切です。しかし、医療費、生活費、仕事、家事、家族関係、孤立など、診察室だけでは解決しにくい困りごともあります。「どこに相談すればよいか分からない」「制度の名前が多すぎる」と感じるのは自然なことです。
支援を使うことは、甘えではありません。治療を続け、生活を守り、将来の不安を小さくするための方法です。すべてを自分で調べる必要はありません。今いちばん困っていることを一つ選び、相談の入口を一つ作るところから始められます。
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最初に要点
- 心理教育、心理療法、リワークなどを治療と組み合わせられます。
- 当事者会、家族会、NPO、地域活動も支えの選択肢です。
- 医療費、所得、仕事、生活を支える公的制度があります。
- 制度ごとに利用条件が異なり、居住地による違いもあります。
- 主治医、医療機関の受付、精神保健福祉士、自治体窓口のどこか一つへ尋ねれば十分です。

このコラムについて
このコラムは、日本で利用できる主な支援の一般情報です。制度の対象、必要書類、金額、利用期間は、加入している保険、初診日、所得、障害の状態、就労状況、居住地などによって異なります。受給や認定を保証するものではありません。最新情報は各制度の窓口でご確認ください。
1.まず「何に困っているか」を分けてみます
制度名から探し始めると、情報が多くて迷いやすくなります。最初に困りごとを大まかに分けると、相談先を見つけやすくなります。
| 今の困りごと | 支えの例 | 最初の相談先の例 |
|---|---|---|
| 病気や対処を学びたい | 心理教育、心理療法、デイケア | 主治医、医療機関 |
| 孤立している | 当事者会、ピアサポート、NPO、地域活動 | 精神保健福祉士、精神保健福祉センター |
| 家族も疲れている | 家族会、家族向け心理教育、相談支援 | 医療機関、保健所、自治体窓口 |
| 通院費が重い | 自立支援医療(精神通院医療) | 市区町村の障害福祉窓口、医療機関 |
| 働けず収入が減った | 傷病手当金、障害年金など | 加入する健康保険、年金事務所、精神保健福祉士 |
| 働き方や復職が不安 | リワーク、就労移行支援、就業・生活支援 | 医療機関、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター |
| 生活全体を整えたい | 相談支援、障害福祉サービス、地域生活支援 | 市区町村、相談支援事業所 |
一つの困りごとに複数の制度が関わる場合があります。反対に、制度を使わなくても、相談や情報提供だけで解決の糸口が見つかることもあります。
2.心理社会的支援を治療と組み合わせます
心理社会的支援とは、薬だけでなく、病気の理解、考え方、生活リズム、人間関係、復学・復職などを支える方法の総称です。
- 心理教育:双極症の特徴、治療、早期サイン、再発予防、相談方法を学びます。
- 心理療法:気分と考え方・行動の関係を整理し、対処方法を練習します。
- 家族への支援:病気への理解、声かけ、危機対応、家族自身の休息を考えます。
- デイケア:生活リズム、対人関係、活動の段階的な回復を支えます。
- リワーク:復職に向け、生活・体力・作業・再発予防の準備を行います。
同じ支援でも、急性期、回復期、安定期では合う内容が違います。体調が不安定な時に予定を詰め込みすぎず、主治医や支援者と開始時期や負担を相談します。

3.当事者会や家族会は「合う場を選ぶ」ことが大切です
当事者会やピアサポートでは、似た経験を持つ人の具体的な工夫を知り、「自分だけではない」と感じられることがあります。家族会では、家族同士が悩みや対応のアイデアを共有できます。ただし、参加は義務ではありません。
安心して参加できる場か、次の点を確認してみましょう。
- 参加と退会が自由で、発言や顔出しを強制されない
- 話した個人情報を外へ持ち出さないルールがある
- 薬の変更や治療の中止を強く勧めない
- 特定の商品、宗教、政治活動などへの勧誘が中心ではない
- つらくなった時に途中で休める、退出できる
- 医療や公的窓口へ相談することを妨げない
当事者同士の情報は具体的で役立つ一方、一人の経験が全員に当てはまるとは限りません。薬や治療については、得た情報をそのまま実行せず、主治医や薬剤師へ相談してください。

4.医療費を支える制度
自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患の通院治療を継続して必要とする人の、通院医療費の自己負担を軽減する制度です。原則として対象医療費の自己負担は1割となり、所得などに応じて月ごとの負担上限が設けられます。対象は、指定された医療機関、薬局、訪問看護などです。
- 精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても申請できます。
- 入院医療費や、精神疾患と関係のない診療などは対象外です。
- 利用する医療機関や薬局を登録するため、変更時には手続きが必要な場合があります。
- 申請方法や必要書類は、市区町村の障害福祉窓口で確認します。
通院費が負担になっている場合は、まず「自立支援医療は使えますか」と医療機関または自治体へ尋ねてみてください。
5.生活や所得を支える制度
| 制度 | 主な役割 | 確認する窓口 |
|---|---|---|
| 精神障害者保健福祉手帳 | 一定程度の精神障害の状態を認定し、福祉・就労・税・交通などの支援につなげます。等級は1~3級です。利用できるサービスは地域や事業者で異なります。 | 市区町村の担当窓口 |
| 傷病手当金 | 被用者保険の被保険者が、業務外の病気やけがで働けず給与を受けられない場合などに、所得を支えます。連続3日の待期後、4日目以降が対象となり、支給期間は通算1年6か月です。 | 勤務先、加入する健康保険 |
| 障害年金 | 病気やけがによる障害が一定の基準に該当する時に、生活を支える年金です。初診日、障害の程度、保険料納付要件などを確認します。 | 年金事務所、市区町村の年金窓口 |
| 障害福祉サービス | 相談支援、居宅介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援など、生活や社会参加を支えます。 | 市区町村、相談支援事業所 |
手帳と障害年金は別の制度です
精神障害者保健福祉手帳を持っているから障害年金を受け取れる、または障害年金を受け取っているから同じ等級の手帳になる、という関係ではありません。それぞれに目的と判定基準、申請手続きがあります。自立支援医療も別制度です。
申請には診断書や受診歴の確認が必要になることがあります。障害年金では初診日の確認が重要です。分からない場合も、一人で結論を出さず、年金事務所や医療機関の精神保健福祉士へ相談してください。

6.仕事を続ける、休む、戻るための支援
仕事の支援は「すぐ働くこと」だけが目的ではありません。今は休む時期か、復職準備を始める時期か、働き方を調整する時期かを整理することも支援です。
- 医療機関のリワーク:治療と連携し、生活リズム、再発予防、復職準備を進めます。
- ハローワーク:求職相談、障害者向け専門窓口、求人紹介などを行います。
- 地域障害者職業センター:職業評価、職業準備、職場適応援助などを行います。
- 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面を一体的に支援します。
- 就労移行支援:一般就労へ向けた訓練、求職、職場定着を支えます。
- 就労継続支援:一般就労が難しい時に、支援を受けながら働く機会を提供します。
勤務先へ病名や手帳のことをどこまで伝えるかは、仕事内容、必要な配慮、職場の体制によって判断が変わります。支援者と「何を伝えるか」「誰へ伝えるか」「どの配慮を求めるか」を分けて考えます。
7.相談の入口は一つで構いません
最初から正しい窓口へたどり着く必要はありません。相談先が違っていても、適切な窓口を案内してもらえることがあります。
- 困りごとを一つ選ぶ:医療費、生活費、仕事、家族、孤立など。
- 入口を一つ選ぶ:主治医、受付、精神保健福祉士、市区町村、精神保健福祉センターなど。
- 短く尋ねる:「この困りごとに使える支援はありますか」
- 次の窓口を確認する:担当部署、電話番号、予約の要否、必要書類をメモします。
- 全部を一度に進めない:体調に合わせ、優先順位の高い手続きから進めます。

8.そのまま使える「支援につながる相談メモ」
分かるところだけ書けば十分です。口頭で説明しにくい時は、この形で医療機関や窓口へ見せることもできます。
今いちばん困っていること:医療費/生活費/仕事/家族/孤立/住まい/その他
いつ頃から困っているか:______________
生活への影響:______________
すでに相談した人・窓口:______________
現在使っている制度・支援:______________
知りたいこと:利用条件/必要書類/費用/期間/次の窓口
連絡や手続きを手伝ってくれる人:______________
次にすることを一つ:______________
制度探しより受診を優先する時
強い不眠、著しい気分の高まりや落ち込み、混乱、死にたい気持ち、自傷他害のおそれなどがある場合は、制度の手続きより主治医・医療機関への連絡を優先します。差し迫った生命・身体の危険がある時は119番、事件や暴力など警察の緊急対応が必要な時は110番を利用してください。
まとめ
双極症の生活を支えるものは、診察や薬だけではありません。心理教育、心理療法、リワーク、当事者会、家族支援、医療費や所得を支える制度、就労・生活支援などがあります。支援を使うことは、治療と生活を続ける工夫です。支援を受けることは、恥ずかしいことではありません。
制度には利用条件や地域差があり、自分だけで調べ切るのは簡単ではありません。今いちばん困っていることを一つ選び、主治医、医療機関の受付、精神保健福祉士、市区町村、地域の相談機関のどこか一つへ「使える支援はありますか」と尋ねてみてください。

振り返り質問への回答と考えるヒント
動画の最後に考えていただく二つの質問を振り返ります。
Q1.双極症の生活を支えるために、医療以外にはどのような支えがあるでしょうか?
回答:双極症では、診察や薬だけで生活上のすべての困りごとを解決することは難しい場合があります。心理教育、心理療法、当事者会や家族支援、福祉制度、就労支援など、医療以外にも生活を支える選択肢があります。
支援を使うことは「甘え」ではありません。治療を続け、生活を守るための一つの方法です。何を使えるか分からない時は、主治医、精神保健福祉士、医療機関の相談窓口、自治体などに尋ねるところから始められます。
Q2.今の困りごとは、医療費・生活費・仕事・家族・孤立などのうち、どこに近いでしょう?相談できそうな窓口はありますか?
この問いには一つの正解はありません。例えば、次のような視点で考えることができます。
- 制度には利用条件や地域差があるため、受給できるかどうかは個別に確認します。
- 困りごとを「お金」「仕事」「家族」「孤立」などに分けると、相談先を探しやすくなります。
- 一人で全部調べる必要はありません。

参考文献・参考資料
- 日本うつ病学会『診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023』2023年
- 厚生労働省『自立支援医療制度の概要』
- 厚生労働省『自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み』
- 厚生労働省『障害者手帳について』
- 日本年金機構『障害基礎年金はどのようなときに受けられますか』
- 全国健康保険協会『傷病手当金』
- 厚生労働省『障害者就業・生活支援センターについて』
- 厚生労働省『全国の精神保健福祉センター』
制度の名称、利用条件、金額、窓口は変更されることがあります。公開時および申請時に、各機関と居住地の自治体で最新情報をご確認ください。
次は、どこを学びますか?
「双極症の動画図書館」は、最初から順番に見なくても大丈夫です。今の自分に必要なテーマからご覧ください。

双極症の動画図書館シリーズについて
双極症の動画図書館シリーズは、YouTube動画とWeb解説コラムで構成しています。
- YouTube動画はテーマごとに要点を5分程度の短い動画でまとめています。
- Web解説コラムはYouTube動画と対応して、動画の解説、補足説明をしています。







